Overline   作:空野 流星

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作戦会議

「すみません、助かりました。」

 

 

やっとの事でレイの荷物の開封設置を終わらせる事ができた。

寮母さんを含み、4人での作業のおかげで、そこまで大変ではなかった。

 

 

「これが仕事だからな、気にしなくていい。」

 

 

そう言って笑顔を見せる寮母さん。

夕食の支度があると言って、部屋から出て行った。

 

寮母さんは時空龍の中では珍しく人間との関わりを持とうとするタイプだ。

普段は人間の姿になり生活している。

このような例は極稀である。

 

 

「ありがとう、助かった。」

 

「これくらいどうって事ないって! これから一緒に暮らす仲間だしな。」

 

 

――健司はほとんど動いてなかったって突っ込みはしないでおくべきか?

 

 

「でも、結構書物が多いね。」

 

 

本棚に入れた本を一冊手にとってみる。

 

 

境界移動(ラインズワープ)の原理と考察”

 

「葉助も、こういうのは好きなのか?」

 

「結構ね。 でも、これって――」

 

 

パラパラとページをめくっていく。

 

境界移動(ラインズワープ)とは、境界線(レイ・ライン)の向こうにあるとされる別世界に行くことだ。

それなりの準備が必要だが、境界移動(ラインズワープ)を行うのは、魔法が使えるなら誰でも可能だ。

ただし、原則として時空龍達によって境界移動(ラインズワープ)を行うことは禁忌とされている。

 

 

「気になるなら好きに読んでもいい。 どうせ同じ部屋だ。」

 

「うん、そうさせてもらうよ。」

 

 

僕は本を元の棚に戻すと、ポフッっと自分のベッドに腰掛ける。

 

 

「さて、明日の実技試験の作戦会議を始めよう。」

 

「明日の実技試験は、戦闘総合試験なんだ。」

 

「ほほう。」

 

 

レイは興味津々に話に耳を傾けている。

 

 

「試験内容は各々のチームが迷宮を脱出するまでを評価される。

もちろん脱出失敗は単位がもらえなくなるね。」

 

「俺は瀬戸際だから落としたくないんだよなぁ。」

 

 

健司が切実に語る。

むしろ普段の授業態度を改めればそんな事にはならないと思うんだけど。

 

 

「そのチームというのは、どのように決まるんだ?」

 

「基本的には好きなように組んでいいんだ。」

 

 

先生のあの言い方だと多分僕ら3人でチームを組めって事なんだろう。

おそらくだが、レイの実力は上位クラスだろう。

それでバランスが取れると思っていそうだなぁ、あの先生は。

 

 

「そういえばレイのエーテル属性を聞いてなかったね。」

 

「あぁ、私は火と水だ。」

 

 

火と水、バランスタイプか。

 

 

「僕は水と風、健司は火と雷。 バランス的にはちょうどいいかな?」

 

「確かにそうだな。」

 

 

水と風の後方支援タイプ、火と雷の火力特化タイプ。

そこにバランスタイプの火と水である。

 

 

「まぁコンビネーションは試験中に調整する必要はあるけど、なんとかなりそうだね。」

 

「Zzz...」

 

 

ひどい寝息が聞こえてくる。

どうやら話の途中で健司が寝てしまったらしい。

 

 

「私達も早めに休むとするか。」

 

「そうだね、お休みレイ。」

 

 

部屋の明かりを消し、明日の試験に備えて早めに寝る事にした。


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