一方Bチームは、仕掛けに阻まれて迂回を余儀なくされていた。
Aチームは順調に進み、宗月の部屋の前へと辿り着いた。
銀華は扉を蹴破り、中へと入り込んだ。
「やぁ、待っていたよ。」
「……」
まるで来るのが分かっていたとばかりに宗月は余裕の笑みを浮かべた。
銀華はホルスターから
「ほぅ?」
「覚えているか? わざわざこの銃を用意してやったんだ。」
彼女が構えた
レミントン・デリンジャーという銃をベースに作ったものだが、それには意味があった。
かつて宗月が父を撃った
だからこそ、彼女にとってこの
「復讐という事だろう? よく分かっているよ――ククッ。」
「お前のその顔も今日で見納めだ!」
彼女は指に力を入れて引き金を引く。
撃ち出された弾丸は、真っ直ぐ宗月の心臓に向けて飛んでいく。
その弾丸は確実に宗月の命を終わらせるだろう。
そう、銀華も確信していた。
しかし、宗月はニヤリと笑みを浮かべた。
「さぁ姫様、私と一曲踊って頂きましょうか!」
突如、宗月の身体が発光し始める。
銀華はこの現象を知っていた。
「貴様やはり!」
本来はリミッターにより封印された力。
それは時空龍本来の力を振るうための姿……
宗月の身体は、光と共に肥大化していく。
そして現れるのは――
「この姿も久方ぶりです。」
「やはり自らにはリミッターを施していなかったな。」
鋭い牙、大きな爪、大空を羽ばたく翼。
時空龍本来の姿に戻ったのだ。
こうなると、
「死の輪舞を始めましょう、姫様。」
「宗月ぃぃ!」
銀華はロキをホルスターにしまい、別な2丁の
右手にはシルバーボディのリボルバータイプ、
左手にはガンメタルブラックの短機関銃タイプ、
「いいか、さっさとアレの準備をしろ!」
「り、了解です!」
「ちっ、本当に出番が来てしまうとはな。」
二丁の銃を構え敵を見据える。
今は、準備の時間を稼ぐだけだ。
そう思いながら駆け出した。
”ヨルムンガンド”の準備には、早くても10分はかかるであろう。
それまで私が生きていればいいのだが。
銀華はそう思いながら右手のヘルの引き金を引く。
撃ち出された弾丸は魔法障壁を貫通するが、強固な鱗を貫通する事は出来ない。
やはり手持ちの火力ではダメージを与える事は不可能である。
「おや、姫様は変身しないのですか?」
「お前相手にその必要はない。」
「ふん、強がりだな。」
巨大な右腕を振り上げて、こちらに向けて勢いよく振り下ろす。
急いで後方へと跳ぶと、数秒前に立っていた床は粉々に砕け散る。
あの鋭利な爪の前では、魔法障壁ごとこの身を引き裂かれるだろう。
「まぁ、当てられればだが。」
今度は狙いを右目に変えて、ヘルの引き金を引く。
無防備な目ならば攻撃も通るはずだ。
宗月は目をかばうように左手で顔を覆った。
弾丸はやはりその鱗に弾かれる。
しかし銀華は、同時に左手のナルヴィの引き金を引いていた。
「
撃ち出された弾丸が全て掻き消える。
状況を理解出来ない宗月は、がむしゃらに両手で虚空切り裂き続ける。
「そこかぁ!」
微かな魔力を頼りに左手を振り下ろす。
数発の弾丸が切り裂かれた。
「残念、外れだ。 ”ウィンドカッターⅢ!”」
「何っ――ぎゃぁぁぁぁああ!」
咆哮のような悲鳴が上がる。
宗月が切り裂いた弾丸の反対方向から飛来した弾丸は、確かに彼の左目を貫いたのだ。
風の刃が、その目をズタズタに引き裂いた。
先程の場合、わざと魔法を発動させて相手の注意を引き、本命を叩き込んだというわけだ。
「隊長! 準備できました。」
「よくやった!」
部下の報告を聞き、銀華は唇を吊り上げた。
銀華は後方へと大きく飛び、部下が用意したヨルムンガルドの横に着地した。
すぐに狙撃態勢に入り、グリップを握る。
宗月はこちらを見やると大きく口を開いた。
恐らくは炎の息で焼き殺そうというのだろう。
だが、奴の思い通りになる事はない。
何故なら――
「お前はここで、私に倒されるからだ。」
スコープで狙いをつける必要もない。
銀華は迷いなく引き金を引いた。
轟音のような発砲音と共に弾丸が打ち出される。
空を裂き、獲物の元へと飛んでいく。
宗月は回避するそぶりも見せずに攻撃の態勢のままだ。
この姿の自分を
本来であればその通りだが、コイツは特注品だ。
何せ、元々は対装甲車用の銃だ。
破壊力は折り紙付きだ。
しかもおまけで、2属性の
「なにっ!」
宗月の予想を裏切って、弾丸は魔法障壁を破り、強固な鱗を引き裂き、内部へと突き進んだ。
肉を引き裂き、目指すは彼の心臓とエーテル器官。
”コールダークネスⅢ!”
2つの
上位魔法とされる闇の魔法だ。
光と闇の魔法は、2つの
人間で扱える者はほぼいないが、それは時空龍達には関係ない。
4属性の
「ぐがぁ……」
闇の奔流が宗月の身体を内部から腐らせていく。
内臓も骨も血管も、全てその機能を停止していく。
身体を維持出来なくなった宗月は、人の姿に戻り地面に倒れ伏した。
誰の目から見ても、彼が死ぬのは時間の問題だった。
「ロキで止めを刺せなかったのは非常に不本意だ。 だが、父上と同じ苦しみを味わいながらお前は死ぬ。」
「――ククッ。」
血反吐を吐きながら、それでも宗月は笑っていた。
「何がおかしい!」
「姫様は、本当に――無知なお方だ……ゲホッ。」
「どういう意味だ?」
「そもそも、黒島と繋がっていたのは――ゲホゲホ……、誰だったでしょうね?」
黒島と繋がっていたのは、彼を派遣した宗月だ。
そして、その宗月と繋がった時空龍達――
いや、まてよ……
黒島の市長としての身分を用意したのは――
「今頃、貴女のアジトは大丈夫ですかね――ククッ。」
「貴様! 何を知っている!」
「せいぜい足掻きなさい、先に逝って待っていますよ……ふはははは――グハッ!」
宗月は笑いながら、最後に吐血して絶命した。
最後まで気に入らない顔であった。
「お前達、急いでアジトに引き上げるぞ。」
「隊長、それはどういう?」
「3賢者の老害共が私のアジトを潰しに来るんだよ!」
銀華は唇を噛みしめながらそう答えた。