Overline   作:空野 流星

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もう一度2人で

「レイ、お前!?」

 

「話は後だ、今はこいつらを倒すのが先だろう?」

 

 

この感じ――間違いなくかつてのレイだ。

何があったかは知らないが、無事に記憶を取り戻せたらしい。

正直、何事も無くてほっとしている。

 

しかし、再会を喜ぶ暇はなさそうだ。

相手はあの3賢者、どこまで戦えるか未知数だ。

 

 

「予想より早いな、宗月も使えぬ男だ。」

 

「いだいぃぃ! なんなのぉぉ!」

 

 

女の方はあと1撃で仕留められる、問題はもう一人の男の方か。

弾を補充する暇が無かったせいで、残弾はあまり多くない。

上での戦闘が響いてくるな……

 

 

「レイ、女の方は頼んだ。」

 

「任せろ、すぐに終わらせる。」

 

 

俺はフェンリルとヘイムダルの引き金を引く。

 

――幻影弾(ファントムバレット)

 

つい先ほどの戦闘で編み出した技だ。

 

 

”サンダーボルトⅢ!”

 

 

フェンリルの弾丸に込めた魔源(マナ)に意識を集中させ、魔法を発動する。

男は咄嗟に魔法障壁を展開してそれを防ぐ。

俺はそのまま相手の背後に回り、左手のヘイムダルの引き金を引く。

 

 

”トルネードⅢ!”

 

 

強力な竜巻が相手を飲み込む。

ウィンドカッターの上位魔法だ、まともに食らえば無事では済まない。

更に追い打ちをかけるようにフェンリルの弾丸も打ち出す。

 

 

”ブリザードⅢ!”

 

 

手ごたえは――ない。

俺はすぐに視線を上に向ける。

男はトルネードの風を利用して上へと逃れていたのだ。

 

 

「それが魔銃(まがん)か、なかなか面白い!」

 

 

”サンダーウェーブⅢ!”

 

 

雷と水の複合魔法か!

大きく後方へと飛び退き、フェンリルの弾丸を撃ち出す。

 

 

”アイスウォールⅢ!”

 

 

氷の柱を盾代わりに展開する。

魔法障壁で耐えるには、少々強烈すぎる。

 

同時にヘイムダルで補助魔法も付与しておく。

やはり出し惜しみをして勝てる相手でもないか。

 

 

「……やるしかないか。」

 

 

そう、複合魔法に対抗するなら、こちらも同じ土俵に立たなければならない。

消耗の激しさを気にしている場合ではないのだ。

 

フェンリルの残弾2、ヘイムダルは残弾5。

俺は迷わずフェンリルとヘイムダルの引き金を引く。

フェンリルは相手に向けて、ヘイムダルはローブの影から別方向に。

 

相手も魔銃(まがん)の特性を知っているはずだ。

受けるのではなく避けようとするはずだ。

 

予想通り、男はフェンリルの弾丸を避ける。

だがそれは狙い通りだ。

 

 

”ウィンドカッターⅢ!”

 

 

フェンリルの弾丸から魔法を発動させる。

当然、魔法障壁を展開して攻撃を防いできた。

俺はそのタイミングに合わせてもう一度フェンリルの引き金を引く。

 

 

「ふん、どこを狙っている。」

 

 

撃ち出した弾丸は、男から逸れて背後を通過していく。

当たらずとも魔法が発動する特性は知っているため、次の攻撃に備えて魔法障壁を展開するだろう。

だが、それでいい!

 

 

最初に打ち出したヘイムダルの弾丸が跳弾を繰り返し、先ほど逸れたフェンリルの弾丸に接触する。

お前自身の判断を後悔するといい、こいつはただの魔法じゃないぞ。

 

2つの弾丸に込められた魔源(マナ)同士が混ざり、そして爆ぜる。

こいつはただの複合魔法じゃない、そうこれは――

 

 

”ユニオンエクストリーム!”

 

 

複合魔法の極致、光の魔法である。

かつて黒島を倒すために使った魔法でもある。

 

 

「こ、これは!」

 

 

もう遅い。

この光からはもうお前は逃れられない。

待つのは――消滅だけだ。

 

 

「じゃあな。」

 

 

男の身体は光に飲み込まれていく。

一仕事終わったレイも、並んで一緒にその光景を眺めていた。

 

 

「あの時の魔法か。」

 

「あぁ。」

 

 

そういえば、あの時も2人一緒に戦ったな。

またこんな日が来るとは思っていなかった。

出来れば彼女には二度と……

 

 

「レイ、記憶が戻ったんだな。」

 

「まだ完全じゃないがな、それでもこっちに来てからの事は全部思い出した。」

 

「良かった……」

 

 

つい本音が口から零れる。

流石に涙まで見せるのは恥ずかしいので、レイから顔を背けた。

色々あったが、やっとレイが帰ってきてくれたのだ。

こんなに嬉しい事はない。

 

 

「しかしなんだ、改めて思い返すとなかなか恥ずかしいな!」

 

「何が?」

 

「その私の――色々だ!」

 

 

レイは顔を真っ赤にしてそう答えた。

こういう所も変わってないなと思ってしまう。

 

 

「色々?」

 

「そう、色々だ。 だから気にするな。」

 

「はいはい、分かったよ。」

 

 

時間が巻き戻ったかのような錯覚に陥りそうになる。

でも健司はもういない。

俺がこの手で殺したんだ。

 

 

「葉助。」

 

「あぁ分かってる。」

 

 

気配が近づいてくるのが分かる、しかもかなりの人数だ。

この状況では敵の可能性が高い。

手持ちの残弾ではかなり厳しいな。

 

 

「レイ、まだいけるか?」

 

「誰に言っているんだ?」

 

 

レイは強くそう答えた。

どうやら心配するだけ無駄のようだった。

 

 

「いいか、やばくなったらお前が先に逃げるんだぞ?」

 

「断る。」

 

「――頑固な所は変わらないな。」

 

 

まぁ引きずってでも撤退するしかないか。

覚悟を決めて正面を見据える。

 

しかし、現れたのは――

 

 

「銀華さん!」

 

「カスパ先生!」

 

 

銀華さんと見慣れない初老の男だった。

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