周りの
この感じはどこかで――
「奴め、龍の姿になる気だ。」
「時空龍でもないのに、龍の姿になれるんですか!?」
「奴はロキアだけに存在する龍なんだ、根本的には私達と同じだ。」
そう言って銀華さんは、一歩前へと歩み出す。
「だからこそ、奴に対抗するには私も――」
「それはダメだ! 銀華さんには……」
「分かっている、それでも今はやらなければならない時だ。 お前にも分かるだろ?」
そうだ、俺にも分かっている。
こいつは必ずここで仕留めなければならない相手だと。
そして、そのためには互いに死力を尽くさねばならないのだろ。
生還は二の次、やるべき事をやれ、そう言うのだ。
「あぁ、そうだよ。 後先考えずにやるしかない。」
「ふん、こいつを使え。」
銀華さんが残りの弾をケースごと投げてくる。
俺はそれを両手で受け止めた。
「ここから先の戦闘では用済みだからな、お前が派手に使え。」
「――はい!」
「グゥゥゥ!」
ユニスが唸り声を上ゲながら龍へとその姿を変えていく。
その巨体に、礼拝堂が崩れていく。
「葉助! 変身が終わったら私の背に乗れ!」
「はい!」
ヘイムダルへの弾の装填を終え、変身を終えた銀華さんの背中に飛び乗る。
「奴の龍の姿は初めて見るが――デカイな。」
見上げると奴はそこにいた。
銀華さんよりふたまわりは大きいかもしれない。
「でも、やるしかないんでしょ?」
「その通りだ、やるぞ!」
銀華さんは地面を蹴り飛び上がった。
風を切る感触。 目の前には巨大な龍。
ヘイムダルのリロードを済ませ、敵を見据える。
「あいつにも強力な魔法障壁がある。 どう対処するつもりだ?」
「とりあえず、先に強度を確かめる!」
ヘイムダルの引き金を引き、数発の弾丸を発射する。
敵との距離30m程で、やはり魔法障壁と接触した。
しかし、本来ならば貫通出来る弾丸が、そのまま塵と化す。
「あれは防ぐバリアってより、もう結界の域だな……」
「私が接近して奴の障壁を中和する、あとはやれるな?」
「やるしかないでしょ!」
”コールダークネスⅢ!”
相手が何もしてこないわけもなく、こちらに向かって複合魔法を唱えてきた。
銀華さんが魔法障壁を全開にして突撃していく。
相手の魔法障壁の前に辿り着くと、両手を突き出して爪を立てる。
「ひらけぇぇ!」
魔法障壁同士が干渉し合う。
ありえない量の
「させぬぞ!」
”ユニオンエクストリーム!”
中和の最中で動けない銀華さんに対して攻撃してくる。
まずい、このままでは二人共やられる。
俺が止めるしかない!
集中して、
”ユニオンエクストリーム!”
同じ魔法をぶつける。
力に差がある分こちらが不利だ。
だからこそ、上乗せしてやればいい。
俺はヘイムダルの引き金を引き、撃ち出した弾丸を加速させる。
ぶつけ合い、混じり合った
”ユニオンエクストリーム!”
ユニオンエクストリームの重ね掛けだ!
その威力は相手の魔法に届いた。
大きな爆発の光が起こり、対消滅を起こす。
「銀華さん!」
「おぉぉぉ!」
ガラスが割れるような音が響いた。
魔法障壁を抜けた今なら奴は無防備だ。
次の弾をリロードし、撃ち尽くすつもりで引き金を引く。
全ての弾を操作し、全方位から相手を狙う。
いくら龍の皮膚でもこれは耐えれないはずだ!
”コールダークネスⅢ!”
”ユニオンエクストリーム!”
弾丸を接触させ、光と闇の魔法を発動させる。
本当なら皮膚を貫通させて内部から発動したかったが、それは叶わなかった。
それでもかなりのダメージにはなるはずだ。
「葉助、奴はどうやら元気みたいだぞ。」
「これでもダメなのか……」
光が収まって見えたのは、何事も無かったように佇む龍の姿だった。
「終わりか、もう少し楽しめると思ったがな。」
やはり内部からの攻撃でなければ、決定打にはならないか。
――方法は一つしかない。
「銀華さん、最後に一つだけ試したい事があります。」
「ほう、何かアイディアがあるのか?」
「はい、とびっきりのやつが。」
「なら、それに賭けようか!」
銀華さんは翼を羽ばたかせて高度を上昇させる。
「奴の頭部まで近づいてもらえれば、あとは俺がやります。」
「当てにしてるぞ。」
再び速度を上げ、奴へと近づいていく。
「無駄な足掻きだ、お前達に勝ち目など無い。」
「それはやってみなきゃ分からないぞ!」
龍の放つ魔法攻撃を華麗に避けながら、その距離を縮めていく。
あと少し、あと――
”トルネードⅢ!”
「んぐっ!」
「銀華さん!」
銀華さんが魔法の直撃を受けてしまう。
「いけぇ!」
”ウィンドウェアⅢ”
脚力を強化し、大きくジャンプする。
よし、届いた!
ヘイムダルを構えて照準を合わせる。
いくら強固な鱗に覆われていようと、口からの攻撃は耐えられないはずだ!
俺は全ての
おそらくは誰もやった事の無い魔法。
全ての属性の
何が起こるか分からないが、こいつを倒すには丁度いいだろう。
「これで終わりだ!」
俺は渾身の力を込めて引き金を引いた。
撃ち出されたのは弾丸では無かった。
光が束になって銃口から発射されたのだ。
その光は次第に大きく、太くなっていく。
4色が連なり、まるで虹のようだ。
「ぐっ、この程度で!」
魔法障壁を全面に集中させ、俺の攻撃を受け止める。
「うぉぉぉぉ!」
1枚、また1枚と、重ねられた魔法障壁を貫通していく。
その反動はすさまじく、両手でしっかりと
身体が空中で静止しているのも、そのおかげだろう。
――残り1枚!
その時だった。
何かが砕ける音が手元で響いた。
その凄まじい威力に耐えられずに、ヘイムダルが砕けたのだ。
「しまった……」
「どうやらここまでのようだな。」
推力を失い、体が地上へと落下していく。
その俺に向けて、奴は大きな口を開いた。
「我が炎の息で消し炭となるがいい。」
あと一息なんだ、こんな所で!
奴の口元にエネルギーが収束するのが分かる。
ものの数秒で、俺はこの世から消滅するだろう。
「レイ……!」
「葉助!」
背後から銀華さんの声がする。
後ろを振り向くと、傷まみれの銀華さんの姿が見えた。
「こいつを使え!」
銀華さんが何かを投げてよこす。
俺はそれを右手で掴み取った。
「――これは。」
中には弾が1発だけ込められている。
「お前を倒すのに、この1発で充分だな。」
右手を掲げ、奴に狙いを定める。
全ての
”葉助”
これは幻覚だろうか?
健司、兄さん、晧月さん、ちょっとした知人や見知らぬ人達。
色々な人達が見える。
「みんな、俺に力を貸してくれるのか?」
全員が頷く。
手元のロキが光り輝く。
「馬鹿な! バハムートの光だと!?」
「これで、終わりだぁぁ!」
人々の思いと共に、俺は引き金を引いた。
撃ち出された光は、先程と変わって真っ白になっていた。
その規模はくらべものにならない程大きい。
「私が、またこんな! 馬鹿なぁ!!」
奴の身体が光の束に飲み込まれる。
勝った……
薄れゆく意識の中、俺はそう確信した。