鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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鬼滅の本誌がしんどくて、描いてしまいました。後悔はしていない!


歩む道
始まり


 ――家とも言えない場所で、俺は首元を持ち上げられてから投げられ、強く背後の壁に叩きつけられる。喉の奥からは紅い液体が昇り、それを吐血し、飛び散った鮮血で床を汚す。壁はボロボロのまま放置されており、朝方の冷ややかな風が隙間から吹き込み、体温を奪っていく。――そして、目の前に横たわっている幼い子供は、虐待で命の灯火が潰えている。

 生き残りは、俺と1人の妹のみ。――絶対この子は護らなくては、仮初とは言え、俺は義兄なんだから。なので俺は、地に倒れながら義親を睨み付ける。

 俺の本当の両親は病に倒れ、その町の資金源にする為身を売られた。そこで、俺を奴隷として買ったのが、今の義親だ。

 

「チッ。またその目か。誰のお陰で飯を食えると思ってるッ!」

 

 俺を買い取った親を見ると、顔面を目掛けて蹴られる。

 だが、次に殴られないということは、これ以上は諦めてくれたらしい。

 

「貴様ら、今日までに残りの木材を売って於け。それまで、飯にありつけられると思うなよ」

 

 義親は、ボロボロの障子を開け、勢いよく、ピシッ、と締め家を出て行った。

 俺は震える膝を抑え立ち上がり、妹を見た。妹は、一度殴られただけで済んだようだ。本当は、俺が護れれば、妹たちにこんな思いをさせなくて済む、はずなのに。

 

「大丈夫か?」

 

「…………」

 

 妹は頷くだけだ、きっと心が壊われかかっている。

 早朝、この家から出て行く算段だったのだが、奴らが様子を見に来たことによって予定を狂わされた。

 そして、殴られてから指示を与えられる。――その間、1人の妹は殺されてしまった。見殺し、と言われたら最後だが、俺は前に出る力がつき、地に倒れた。悔しいが、限界は迎えていた。ということなのだろう。

 

「ここから逃げるぞ」

 

 妹は頷くだけだ。

 俺は横たわっている妹を横抱きにして家から出て、裏手にある土の中に埋葬した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~道中~

 

 あの家を出て、まず汚れを落とす為川や湖を探していたら、いつの間にか夜になってしまった。

 そして、脱出の為に準備していたのは、井戸の底に隠していた刀、お守りと言われている藤の花の袋1つ。懐には、皺苦茶になった食料に、水。そして顔を隠す為ボロボロの上着を羽織っている。まあ、纏っている衣服もボロボロなんだが。また、夜は冷え込む為、肌に当たる冷気が冷たい。

 俺は上着を脱ぎ、妹の袖に通す。……かなり寒いが、俺は義兄、俺は義兄。と、謎の義兄理論で我慢する。

 

「あれ、こんな所に子供か。旨そうだなぁ」

 

 眼前に立っていたのは、人間であるが理性を無くしかけている生物だ。そして僅かにだが、血の匂いが鼻をつつく。……この生物の正体は解らないが、おそらく人間を喰っている。

 俺は刀を抜き、構える。

 

「ッチ。1人は藤の花を持ってやがるな」

 

 ……なるほど。こいつらの弱点の1つは藤の花、なのだろう。だが今までの言動で、藤の花だけでは、奴を後退させることはできないだろう。

 

「まあいい。小僧は持っていないようだし、貴様を喰ってやるよ」

 

 へらへらと笑う化け物。

 齧る程だけだが、俺は剣術の経験があった。両親が生きていた時、興味本位だけだったが。

 

「(この場は、奴を退けないと通れない、か……)」

 

 俺は刀を構えたまま走り出す。

 

「ひひ。貴様は、いたぶってから喰ってやるよ」

 

「……やってみろ。逆に、お前を殺してやる」

 

 もちろん、ハッタリである。実践経験など皆無だし、奴の首をとれる確率は低いだろう。だが、ここでやらなければ妹はどうなる?藤の花があろうとも、有限な物じゃないはずだ。

 怪物の爪が迫るが、俺は紙一重でそれを避け、肩に一太刀浴びせるがその傷は瞬く間に塞がっていく。

 

「へ。そんな刀じゃ、オレを殺せねぇよ」

 

 確かに、奴を殺すには特定の武器が必要なのだろう。

 研ぎ澄まされた感覚で攻撃を避け、斬撃を浴びせるが瞬く間に治ってしまう。……このままじゃジリ貧だ。何とかして突破口を見つけないと。それに、後方に隠れるように妹もいるのだ。ここで死ぬわけにはいかない。

 だが、現実は非情であり、傷ついた傷口から紅い鮮血が洩れていく。さすがに血を流しすぎたか、体の寒さが異常だ。

 

「(……でも、殺される訳にはいかない)」

 

 だが、徐々に力が抜けていく様を化け物はケラケラ笑いながら見ていた。

 このまま死ぬ訳にはいかない。妹は何としても護る。そう心に刻みながら、化け物を睨み付ける。

 ――その時だった。化け物の首が空を舞ったのだ。俺は安堵し、手から刀を落とし、両膝を地面に付けた。

 霞んだ瞳でその人物を見た所女性2人だ。長い黒髪の女性は「大丈夫?」と言って、俺と同じ目線まで膝をつけた。

 そして俺は、重い口を開く。

 

「……たぶん大丈夫だ。それよりも、妹を頼む」

 

「妹さん?」

 

「……ああ。かなり衰弱してると思う。助けてやってくれ、俺はどうなってもいい」

 

「いえ、貴方も助けます。よく今まで頑張りましたね、眠ってもいいですよ」

 

「…………済まない」

 

 俺は瞳を閉じ、体を前のめりに倒したのだった。

 そして、俺が最後に目にしたのは、夜に輝く蝶の髪飾りだった。


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