「…………ここは?」
瞳を開けると、白い天井で、俺はベットの上に仰向けで布団をかけていた。
人の気配は無いが、ここは見慣れた場所――蝶屋敷の一室だ。
「……そうか。上弦と戦闘後に気を失ったんだっけ」
上体を上げ体を見ると、額、片頬、両脇腹、右腕、右足には包帯が巻かれている。
痛みが走らないということは、鎮痛剤が効いているのだろう。
「……あの野郎。次は絶対に殺す」
俺は、奴を思い出しながら呟く。
“桜の呼吸 終ノ型 千本桜・景厳”が通らなかったらやばかったけど。
「……でも、今の手札をほぼ見せたのは痛いよな」
はあ。と溜息を吐く。
きっとあの鬼が鬼殺隊士を殺す時、型を全て出させそれを分析し、甚振って殺すのだろう。……悪趣味にも程がある。まあ、そのお陰で助かった要素もあるのかも知れないが。
すると廊下から、誰かが近づいて来る音がする。音から察するに、これはカナヲか?
「兄さん、失礼します」
扉を開けたカナヲが両手でお盆を持っていた。その上には、水が入った桶と濡れたタオルがある。
カナヲは俺を見て目を丸くし、お盆を落とし、バシャン、と水が飛び散る。
「兄さんッ!兄さんッ!目を覚ましてくれて良かった!」
カナヲは小走りで俺の胸に飛び込む。
「悪い、心配かけたな」
カナヲは「うんん、約束を護ってくれるって信じてたから」と言って、俺の胸の中で頭を振った。
ああ、確かに約束したんだった。――「最終選別から、必ず生きて帰ると」。上弦の弐と対面したのは、最終選別から帰る途中だったか。
カナヲは顔を上げ、俺を見た。
「兄さん、どこか痛くない?」
「今の所は大丈夫だ。きっと鎮痛剤のお陰だな」
「そっか」と言って、カナヲは花の笑みを浮かべた。
取り敢えず、カナヲに俺の怪我の状況を聞いた所、カナヲの答えはこうだった。
「兄さんの怪我は――右腕の筋の損傷、全身打撲、軽い凍傷、血管損傷、右足の骨折、だよ」
俺は絶句し、カナヲの言葉を聞いて思った。
「(――俺、かなりの重傷じゃね?よく生きてたな……)」
そう思った。
でも俺より――、
「カナエさんは、大丈夫なのか?」
カナエさんは肺をやられてので、きっと後遺症が残ってしまう。
「今は寝てるだけだから心配しないで。……でもカナエ姉さんは、肺胞を破壊されていたから鬼殺隊士としての生命が――」
カナヲは、そこまで言って泣きそうになっていた。
そうか。“全集中の呼吸”が巧く使用ができなくなるから“花の呼吸”が使用不能なるのか。
「でも、日常生活を送る分には問題ないって」
俺は「そうか」と頷く。
生きていれば何とかなる。その中で、何かを見出せれば良い。カナエさんなら、それができるはずだ。
「きよたちも心配してる。早く顔を見せてあげないと」
“きよたち”とは、蝶屋敷で保護をした子だ。
この子たちの両親たちは、鬼に殺されてしまった。
すると、しのぶさんが姿を現し、部屋に入ってから扉を閉め、ニコニコ笑みを浮かべ俺の元まで歩み寄る。
「起きたんですね、楓」
俺は、んん?と、内心で首を傾げる。
姉御気質が無くなって、口調がいつもより優しい?んで、ニコニコ微笑んでる。
「(……しのぶさん、だよな?)」
――俺は「そうか」と納得した。おそらくしのぶさんは、カナエさんの想いを継ぐと決めているのだ。だから“胡蝶しのぶ”を殺し、“胡蝶カナエ”を演じる。きっと、そういうことなのだろう。てか、俺たちの生活に罅を入れた“上弦の弐”を滅殺したくなる。……絶対、
「お陰さまでな。てか、俺ってどれくらい寝てたんだ?」
「三日、ですね。その間の御世話は、カナヲが」
「うん」と、カナヲは頷いた。
「それと、数日後に柱合会議があります」
――柱合会議。
それは、半年に一度、『柱たち』で行う会議のことである。
俺は「へぇ~そうなんだ」と聞き流そうとしたが――、
「怪我もあり辛いと思いますが、準備をしといて下さいね、楓」
……待って。聞き捨てないことを聞いたんだが?
「俺も出席?……も、もしかして、上弦の弐の情報、のこと?」
「はい。柱たちの前に出ると思うので、粗相ないように」
しのぶさんは、言葉を続ける。
「それに、私は『柱』になったので、私の顔合わせも含んでいます」
しのぶさんは、俺が眠っている間に『柱』になったそうだ。――お館様からは、『蟲柱』の称号を戴いたということ。
まあ確かに、しのぶさんの鬼殺の“毒”なら、『柱』に就任できてもおかしくない。……でも俺は、もう“毒”の実験台になるのは勘弁だが。
「……まあうん、わかった。準備しとくよ」
「行きたくね――!」と、内心で叫び散らす俺。
俺の内心を読んだように、カナヲは苦笑、しのぶさんは「ふふ」と微笑んでいた。
楓君、重傷過ぎですね。
まあ、あの怪我で三日で目を覚ますとか、体力がお化けなんでしょが。
次回は、柱合会議かな?
ちなみに、しのぶさんは“柱”になりました。“柱”の方が、鬼の情報とかが耳に入りやすいですしね。
ではでは、次回(@^^)/~~~
追記。
しのぶさんは、藤毒の摂取は無い方向で考えてます。