今回の話は、賛否分かれそうだなぁ。
松葉杖を突き門の前まで移動していたら、花柄の着物に、肩まで伸びた黒髪。蒼みを帯びた水晶のような瞳であり、側頭部には花柄の狐の面。つまり、真菰のことである。
「(……か、かなり怒ってるように見えるのは気のせいだよね)」
ともあれ、俺は真菰の元まで歩み寄る。
「ひ、久しぶりだな、真菰」
「うん、久しぶりだね」
ちょ、真菰さん。ニコニコ笑ってるのに、目が笑ってないよ。なんつーか「楓、何でそんなに重傷なのかな?」って感じで。
「か、髪伸びたな、真菰」
咄嗟に話題を考え、話を逸らす。
「気づいてくれたんだ、さすが楓。――で、その怪我はどうしたの?」
……うん、そうだよね。話題を逸らせる訳無いよね。俺、知ってた。
俺は観念して話し出す。
「真菰と別れた後、上弦の弐と交戦して重傷を負ったんだ。――心配かけてごめん」
真菰は、俺に抱きつき両手を腰に回した。
「鱗滝さんに手紙がきた時、本当に驚いたんだからね。だって、お別れの挨拶をして1日も経過してなかったんだから」
「命の恩人が死んじゃうなんて、嫌だよ……」と、真菰は涙声だ。
まあ確かに、“元柱”に手紙が届けられるのは当然か。
「……そうだよな、悪い。でも助けたい人が居て、その人の為に命を張ったんだよ」
真菰は見上げるように顔を上げる。
やっぱりこう見ると「真菰って美少女なんだよなぁ」って改めて思う。
「……その人って、
「まあな。で、俺の師匠だ」
何で解ったんだ?と思ったが、俺の女性関係は最終選別の帰りに話したんだっけ。てか、真菰さん「ふ~ん」って同意するの止めて!?何か、俺悪いことしたと思っちゃうから!
「……兄さん。そこの
俺と真菰に気づいたカナヲが、俺たちの元まで歩み寄りそう言った。……てか、カナヲさん。女狐って、真菰が女性で、狐の面をしてるからだよね?そうだよね?
真菰は俺からパッと離れ、一歩後ろに下がった。
「そうきたかぁ~」
そう言って、真菰は苦笑。
「私は真菰っていうんだ、楓とは同期だよ。よろしくね、カナヲちゃん」
「………………」
黙り込むカナヲ。
やはり、他人と接点を持つのはまだ早いらしい。まあ俺としては、真菰とも仲良くなって欲しいが。
真菰は「カナヲちゃん、ちょっと来て」と言って、カナヲを呼び寄せ、何か話している。
「…………それって本当」
「ホントだよ。きっと、楓は喜ぶから」
「…………そう。じゃあ、
……真菰さん。カナヲに何を吹き込んだの?てか、「さっきの話」ってなんのこと?
そして、次の真菰の言葉で、俺は思考を停止するのだった。
「――――楓。今日から私、蝶屋敷でお世話になります!」
「はい?」と俺は困惑。……てか、カナヲに話ってそれのこと?ちなみに、しのぶさんには事前に
カナエさんにはまだらしいが、カナエさんならば『あらあら。家族が増えるのね、嬉しいわ』と、許可を出すだろう。それと、きよたちも話を聞いていて賛成ということ。
――そ、そう。鱗滝さんの許可が無ければ、話を白紙できる。
「ま、真菰。鱗滝さんの許可は?」
真菰は、右手人差し指を口許に当てた。
「えっとね。泣き落としを使ったら、しぶしぶ頷いてくれたよ」
「ちょっと待って。俺、鱗滝さんに恨まれない?『儂の真菰を奪いおって、栗花落楓め……』って感じになってないよね?そうだよね?」
「う~んとね。鱗滝さんは『今度、楓を連れて来なさい。話したいことがある』だって」
「待って待って、本当に待って。俺、もしかしたら
「楓、ガンバ」
俺は肩をガックリと落とす。
……俺、鬼殺隊士になってから、怒涛な生活を送ってない?俺、今後色々な意味で大丈夫だよね?
「あ、それとね、楓。私の専属鍛冶屋も、蝶屋敷を訪れることになってるんだ」
「そ、そうか。わ、わかった」
俺は「もう諦めた」と思い、全てを投げ出したくなった。てかこれ、外堀埋められてたんじゃね。真菰はきっと、蝶屋敷に住むことは決まってた、と思う。
はあ。と俺が吐いた溜息は「頑張れ」と言っているように思えた。
真菰ちゃんは狭霧山ではなく、蝶屋敷住まいになりました。鱗滝さん、楓君に色々な意味で嫉妬してそう(笑)
そして、屋敷の中では発言権が弱い楓君でしたね。
ではでは、次回(@^^)/~~~
追記。
真菰ちゃんは鱗滝さんに声をかけてから、一人で蝶屋敷に向かいました。
ちなみに、真菰ちゃんは刀(日輪刀)を腰に(隠して)下げてます。