真菰事件?から数日が経過し、俺と真菰は縁側に座り、蝶屋敷に彷徨い込んだ蝶を眺めていた。ちなみに、真菰部屋は蝶屋敷に空いていた一室だ。
『真菰ちゃん、楓。お客様よ』
カナエさんの言葉に、縁側に座っていた俺と真菰は首を傾げる。はて、俺たちに客?
「もしかして、刀かな?」
「ああ確かに、そろそろ予定日だったか」
俺は、この日に合わせるように手足の包帯を取ることができたが、激しい運動は厳禁である。
機能回復訓練ができるようになるまでは、後一週間くらいかかりそう。
「楓。私の肩に掴まって」
「いや、そこまでは……よろしくお願いします」
……俺は真菰の、むっ。という表情に負けました。
なので俺は、真菰の肩を借りて立ち上がり、鍛冶屋が座っている居間へ向かうのだった。
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居間へ向かうと、ひょっとこの面をつけた2人の鍛冶屋が座布団に座っていたので、俺たちも対面になるように座る。
鍛冶屋の前には、風呂敷に包まれた長い箱。おそらく、日輪刀を格納している箱だろう。
「私は、真菰の刀を打った鋼鐵塚という」
「私は、栗花落殿の刀を打った鉄穴森といいます」
カナエさんたちの話によると、鍛冶屋の方は、かなり情熱的な鍛冶屋ばかりだという。――刀に対する愛情が、狂気に近いらしい。
鋼鐵塚さんと鉄穴森さんが風呂敷を取ると、そこからは長細い木箱が姿を見せ、取っ手を外すと箱の中には鞘に納められた日輪刀。
「さ。手に取ってみてくれ」
「どんな色に変化するか、楽しみですね」
――日輪刀は、別名“色代わりの刀”と呼ばれ、持つ者によって色を変えるらしい。だが、才が無ければ色が変わることはないという。
俺と真菰が刀の柄を握り日輪刀を鞘から抜くと、刀身が緩やかに色付けていく。
「……凄い、本当に変わるんだ」
「……どういう仕組みなんだか」
俺の刀身は
「真菰は、“水の呼吸”の使い手に多い色だな」
「栗花落殿の色は初めて見ました。綺麗な“桜色”ですね~」
ともあれ、これからはこの日輪刀が、俺たちの手足も同然になると。
「「刀、大事に扱います」」
俺たちがそう言うと、鋼鐵塚さんは「刀折ったら殺す」と言い、鉄穴森さんが「2人なら大丈夫ですよ、鋼鐵塚さん」と言っていた。そして、鋼鐵塚さんたちは長居すること無く帰って行った。
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刀の受け取りが終わり、カナヲに道場に来て欲しいと言われたので、俺は道場に入る。ちなみに、あの後真菰は鴉に『カー!カー!真菰!任務だ!』に言われ任務へ向かった。
その時に、
――『このミサンガ、私からの御守り。楓、無理しないで、絶対に死なないでね』
真菰はそう言って、俺は赤色と水色が混じったミサンガを貰ったのだ。ちなみにそのミサンガは、俺の利き手に結ばれている。
ともあれ、俺はカナヲに声をかける。
「カナヲ。約束通り来たけど、どうかしたのか?」
「に、兄さん。わ、私に、“桜の呼吸”を教えて」
カナヲは、緊張の面持ちで俺にそう言う。
“桜の呼吸”を次の代に享受できるのは、かなり嬉しい。でも終ノ型は、俺だけが可能な剣技の為教えることはできない。なので、壱、弐ノ型だけ。ということになる。
「いいぞ。教えるよ」
俺が朗らかにそう言うと、カナヲが「……本当に、真菰の言う通りだった」と呟いていた。……なるほど。
ともあれ、俺は口を開く。
「俺が教えるのは、“壱ノ型 乱舞一閃”。“弐ノ型 千本桜”だ」
「あ、あの兄さん。“乱舞一閃”には――極。があったはず」
「よ、よく知ってるな。でもなぁ……」
――極。は乱発してはいけない技だ。最悪の例が、上弦の弐と交戦した俺の足だ。
俺が渋っていたら、カナヲが「教えて、兄さん……」と上目遣いで見詰める。……てか、これは真菰の入れ知恵に違いない。と、俺は思った。
「わ、わかった。――極。も教える。でも乱発はするなよ、いいな?」
「う、うん。よろしくお願いします」
カナヲは、ペコリと頭を下げた。
こうして俺は、カナヲに “桜の呼吸”の継承するのだった。
義兄の剣技を受け継ぐカナヲちゃん、鬼殺隊に入るまでにかなり強くなってそう。
楓君の任務は、機能回復訓練を終えるまでは休みですね。
ではでは、次回(@^^)/~~~
追記。
真菰ちゃんの隊服はスカート形式です。羽織は、最終選別で炭次郎が着ていたアレです。
ちなみに終ノ型は、楓君専用の型に繰り上げました。んで、鍛冶屋が帰ってから立ち上がる時も、楓君は真菰ちゃんに肩を貸してもらいました。
追々記。
楓君が折った日輪刀は、事情があった為お咎め無しなっています。