――二週間後。~道場~
「いだだだだだ!カナエさん、ゆっくり倒して!」
「うふふふ。男の子だから大丈夫。さ、もっと倒すわよ」
そう言って、俺の背に居るカナエさんは、両足を開いて座る俺の体を床につけようと押し倒す。
――そう。俺はカナエさんと一緒に機能回復訓練を行っているのだ。きよたちも『楓様のことは、カナエ様に一任することになってますから』ということらしい。
「ちょ、待って待って!変な方向に骨が曲がっちゃうからね!」
「大丈夫大丈夫。楓は、常中が習得できてるもの。それに、今日は最終訓練日じゃない」
「それってどういう理屈!?」
俺は声を張り上げる。
ちなみに、機能回復訓練は三つある。まずは、今カナエさんから受けている体の解しから始まり、続いて“反射訓練”と呼ばれる薬湯のかけ合い勝負、それから“全身訓練”と呼ばれる鬼ごっこ、である。てかカナエさんは、『本当は肺を痛めてないんじゃない?』ってくらい強い。勝負の全てが互角、それが現状である。
ともあれ、一通り解れた所で、「よしっ」とカナエさんが呟く。
「解すのはこれで終わり。じゃ、次に行こっか」
「……お、おう」
立ち上がり体を動かして見ると、八割程思うように動くようになっていた。やはり、コツコツと積み上げるのが機能回復訓練なんだなぁ。と実感する俺である。
「そういえば楓。最近、カナヲが時間を開けているのだけど何か知ってる?」
「ああ。たぶん、桜の呼吸の修行だろうな。俺、型は一通り教えたから」
「なるほど。それで、カナヲには桜の呼吸の適性は?」
俺は「あったな」と答える。
俺は終ノ型を教えなかったが、カナヲは自分だけの終ノ型を創るんじゃないか?って思うのは、俺の気のせいだろうか?
「それにしても、義兄妹で“花の呼吸”を習得できるとは思ってなかったよ、師匠」
「そうね。呼吸には、様々な種類や派生があるものね」
俺は「まあな」と頷く。
カナエさんは「そういえば」と話題を変える。
「楓。今日の訓練が終わったら、街へ行きましょう。約束だもんね」
「そうするか。明日からは、任務が言い渡されるのかも知れないし」
「そうね」と言って、カナエさんは微笑んだ。
てか、俺の階級は
「それじゃあ、早くお出かけする為に訓練を終わらせましょう」
「そうだな」
このようにして俺とカナエさんは、機能回復訓練を終了させたのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
~下街~
「久しぶりに来たなぁ」
下街は人通りが途切れることは無く、昼過ぎなのか、活気に満ち溢れていた。ちなみに、俺とカナエさんは着物姿である。
「そうね。楓は、ほぼずっとベットの上だったものね。……でも、安静にしてたかは怪しいけど」
「俺、柱合会議以外安静にしていたから」
「……本当かしら、真菰ちゃんと逢引していたでしょ?」
「い、いや。眠れなかった夜、縁側で話してただけだから。決して逢引じゃないからね、本当だよ」
「まあ、私は別に構わないんだけど」
そっぽを向くカナエさん。
「……カナエさん、何か拗ねてる?」
「……拗ねてないわよ、タラシ楓」
カナエさんが見ているのは、俺の利き腕に結ばれたミサンガだ。カナエさんが言うには「ミサンガの色と結ぶ位置の意味って知ってる、楓?」とのこと。
「わからん。カナエさんは解るの」の聞いた所、「教えないわよ、バカ」らしい。いや、何で俺怒られてんの?理不尽……。
「あら、カナエちゃんと楓じゃない。久しぶりね」
他愛も無い会話をしながら並び、赤い野点傘を通り過ぎようとした時、女性がひょっこりと顔を出したのだ。
「お久しぶりです、
カナエさんが言った“捺さん”とは、この店の店主の名前である。
「お久しぶりです、おばさん」
俺がそう言うと「私はまだ二十代だよ」と苦笑。
ちなみに俺も、店主とは顔なじみでもあった。ここの団子屋には、よく買い出しに来ていたからである。
「どうかな?新商品ができたの、食べて行かない?」
「じゃあ、お言葉に甘えます。楓も、いいわよね?」
「構わないぞ」
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
店内に入り、奥のテーブル席で対面に座る、俺とカナエさん。
ともあれ、新作のみたらし団子と緑茶を頼むと、捺さんは店の厨房へ向かった。
それから、程なくして運ばれてくるみたらし団子と緑茶。
「こうして見ると、世の中に鬼舞辻が潜んでるなんて考えられないよなぁ」
俺は「平和だなぁ」と呟く。
カナエさんは、クスっと笑った。
「そうね。
「そうだな」
そう呟いた所で「いただきます」と手を合わせ、俺たちは団子を口にする。
団子は、口の中に蕩けるような味で、口直しの緑茶がかなり合う。つまり、美味い。ということだ。
「ねぇ楓。楓は、鬼殺隊に入隊したことに後悔はない?」
カナエさんは「もしかしたら、あんなに重傷を負うことはなかったのよ」と続け、目を伏せる。そしてカナエさんの視線は、店内に入って来た家族連れ。
まあ確かに――普通に仕事に就いて、恋人を作り、幸せに暮らす。と、俺には別の道もあったのかも知れない。
でも俺は――、
「全くない。――それに、俺は知ってしまったしな。世の中には“悪鬼”が居ることに」
カナエさん「……そっか」と頷く。
「楓。私と約束して、絶対に死なないって」
「大丈夫だ。鬼舞辻の頸を捕るまで、絶対に俺は死なない」
――そう、誓いを立てた。
今一真菰ちゃんとカナエさんのキャラ(口調)が掴めない……。ヒロインで書いてるつもりなんだけどなぁ(遠い目)
ではでは、次回(@^^)/~~~