鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

2 / 69
蝶屋敷

「着いたわ、起きれる?」

 

 目を擦ると、目の前には大きな屋敷が点在していた。――屋敷の名を、蝶屋敷。というらしい。てか俺、黒髪の女性におぶられてるよね?これって、傍から見たら恥ずかし過ぎる。ともあれ、俺は女性の背から下り、地面に両足を付ける。

 

「とりあえず、妹さんをお風呂に入れて来るわ。貴方はどうする?」

 

「そうだなぁ。縁側に座っていいか?」

 

「わかったわ。じゃ、何かあったら呼んでね」

 

 そう言って、妹を連れて女性たちは屋敷に上がっていった。ちなみに、刀はその場で返却して貰った。

 縁側で月を見ながら座っていると、お風呂に入って綺麗になった妹が世話を焼かれている。

 

「ダメだわ、姉さん!この子全然反応もないし、まるで自分の意思がないみたい!」

 

「ん~。大丈夫、きっとどうにかなるわ。それに、この子は可愛いもの」

 

「姉さん!楽観視しすぎよ!」

 

 姉妹(おそらく)の1人が「だよね?」と呟き、俺は「大丈夫だろ」と返した。

 

「まだ聞いてなかったけど、貴方のお名前は?」

 

「……“(かえで)”だ。名字はない」

 

 この名前だけが、両親が残してくれたものだ。

 

「そう。楓、妹さんのお名前は?」

 

「……無いんだ、妹の名前はない。俺は、名前をつけてあげられる存在でも無かったしな」

 

 「そんな……」と、姉妹の1人が妹を抱きしめる。きっと姉妹は、良い親の元で育てられたのだろう。でも、俺と妹は外れを引いてしまったけど。

 暫しの沈黙が流れ「胡蝶カナエ」と呼ばれた女性の笑い声が洩れる。

 

「うふふ。決まったわよ、この子の名前。――カナヲ。『栗花落カナヲ』なんてどうかしら?」

 

「………………」

 

 妹は反応をしない。いや、声は聞こえているがどう判断していいのか解らないのだろう。

 だがきっと、胡蝶姉妹ならカナヲのことを愛情を注いで育ててくれるだろう。今、そう確信した。

 

「妹の顔を見れたことだし、俺はそろそろ行くよ」

 

「ど、どこに行くのよ!?」

 

 「胡蝶しのぶ」と呼ばれる女性が声を荒げた。

 

「俺にもわからない。でも俺は、ここに居るべきじゃない人間だ」

 

「じ、じゃあ、カナヲのことを残していくの!?それに、子供が1人で生きていけると思ってるの!?それに貴方、傷だらけじゃない!?」

 

「何とかなるだろ、死にはしないと思うし」

 

 まあ、あの化け物を前にしたら死ぬかも知れないけど。

 カナエさんに聞いた所、あれは人に肉を食らう【鬼】と言われる化け物らしい。倒す為には日輪刀と言われる刀か、日光の光だけらしい。

 

「それにカナヲは、胡蝶姉妹と居た方が幸せに暮らせる。仮初の“兄”が傍に居るわけにはいかないしな――お前は幸せに暮らせ、カナヲ」

 

 俺が立ち上がろうとすると――聞いたことがない可愛らしい声が上がる。

 

「…………お、お兄ちゃん!」

 

 俺は目を丸くする。いやだって、初めて声を聞いて“兄”と呼ばれたんだから。さっきは、意思がなかったこの子がだぞ。

 そしてカナヲは俺に寄り添い、袖を、くい。と引っ張るようにして俺を引き止める。

 

「…………行かないで」

 

「い、いや、俺はお前の“兄”失格だろ。一緒に居るべきじゃない、胡蝶姉妹に世話になれ」

 

 ふるふると首を振るカナヲ。

 「絶対行かせないから」って視線で訴えかけるように見られてるのは、俺の気のせいだよね?だよね?

 

「うふふ。楓、諦めなさい、カナヲは絶対に引かないわよ」

 

「どうせ、1人も2人も変わらないわ。カナヲの為にも残りなさい」

 

「い、いや、でも俺は…………………………―――わ、わかった。世話になる」

 

 胡蝶姉妹とカナヲの言葉により、俺は折れたのだった。

 

「そうと決まったら、楓はお風呂ね。背中を流してあげましょうか?」

 

「カナエさん、冗談は止めてね。男にその言葉は麻薬に近いから」

 

「ふふ、そうかしら。冗談ではなかったのだけど」

 

 数分で、家族の位が決まったように感じる。3姉妹>俺。という感じに。

 はあ。と俺は溜息を吐き刀を立て掛け、立ち上がって風呂場へ向かった。――――このようにして『栗花落楓』の新たな人生が始まる。




基本の文字数は、こんな感じでいきたいと思います(たぶん)

では、次回(@^^)/~~~

追記。
楓君。鬼と戦闘後なのに普通に会話をするとか、胆が据わってますね(笑)
楓君は、助けて貰ったことにとても感謝もしています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。