鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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約束

 ~蝶屋敷、居間~

 

 俺は現在、蝶と花の着物を身に纏う二人の少女に正座をさせられていた。

 その二人の少女は俺の前に立ち、腰脇に左右の手を当て『怒ってます』という表情である。

 

「柱に就任し僅かな期間で、お館様のお屋敷を破壊するとはどういうことなの?」

 

「手合わせをするな。と言わないけど、限度ってものがあるんじゃないかな?」

 

「……すいません。反省してます」

 

 俺は真菰とカナエさんの問いに、精神誠意を込めて頭を下げる。

 臨時会議終了後、修繕費の話になり『風柱』・『桜柱』で半分ずつ持つことになったのだ。

 修繕費は蝶屋敷に請求され、俺の生活費(給料)から引き落とすらしい。なので、俺が自由に使える金はほぼ皆無、ということだ。てか「本当かなぁ~」って二人で言わないで、マジで反省してます。

 

「楓って、こんなに戦闘狂だったかしら?」

 

「どうだろう?でも、内心で燻ってる物はあるんじゃないかな?」

 

 真菰に「どうなの、楓?」と聞かれ、俺は「……はい、そうです」と答えるのだった。……何か俺、浮気が露見した旦那な気分なんだが。まあ、結婚したことないけど。てか、しのぶさんとカナヲ、面白そうににこにこ見てないで助けてくれ。

 

「まあいいわ。楓は、これから非番なんでしょ?」

 

「私も非番だし、三人でお買い物をしに行こうよ」

 

「……今から行くの?俺、休みたいんだが」

 

 真菰とカナエさんは「へぇ~」と言いながら、俺を見る。……なんかあれだ、逆らえない雰囲気なんだが。

 

「わ、わかった。街に行こう」

 

「うんうん。じゃあ、カナエ。新しい着物を新調しようよ」

 

「そうね、真菰ちゃん。前に話してものね。じゃ、エスコートをよろしくね、楓」

 

「お、おう」

 

 そう言ってから安堵の吐く俺。つか、柱の威厳皆無なんだが。

 ともあれ、俺たちは身支度を整え、街に向かうのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~下街~

 

 身支度を整えた俺たちは、横に並んで歩く。

 

「で、二人はどんな着物を買おうとしてるんだ?」

 

「うーん。私は向日葵柄の着物が見たいなぁ。売ってたら嬉しんだけど」

 

「私は紫陽花柄かしら」

 

 ふむ。真菰が向日葵で、カナエさんが紫陽花。

 俺は内心で想像してみたが、かなり似合うと思った。てか、元が美人だし、二人に似合わない服はないよな。と思う俺である。

 街の中を見て回っていたら、女性が集まっている店を見つける。きっと、目的の店なのだろう。

 

「……着物屋、あそこだよな?」

 

「混雑してるねぇ」

 

「最近、できたばかりらしいわよ」

 

 俺、真菰、カナエさんと呟く。

 てか、俺も入るの?という疑問が浮上する。明らかに場違いで居心地が悪い気がするんだが。

 

「離れて待ってるから、二人で行って来いよ」

 

「いや、楓も一緒に入るんだよ。やっぱり、男性からの意見って必要だと思うんだ」

 

 真菰は俺の右袖を掴み「逃がさないからね」という視線を向ける。

 カナエさんも「さ、行きましょう」と言って、強引?に俺を引っ張るのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~着物店~

 

 店の内部に入ると、店内には様々な着物が陳列されていた。

 

「見て見て、着物だけじゃなく浴衣もあるよ!」

 

「本当ねっ。試着して見るのもいいかもね」

 

「……頼むから、少し落ち着いてくれ」

 

 俺は二人の呟きに、げんなりしながら答える。

 そう、周りの女性たちから微笑ましい視線が注がれているのだ。でも、殺伐とした“鬼殺隊”という組織に籍を置いているのだ。はしゃぐのは何となくわかる。

 

「お客様。そんなに気になるなら、試着してもよろしいですよ」

 

 「本当ですかっ」と呟く、真菰とカナエさん。

 

「俺のことは気にしなくていいぞ。ゆっくり見て来い」

 

 俺がそう言うと、真菰とカナエは、目的の着物を持っておばさんについて行った。

 やはり、男性が一人で残ると女性客の視線が先程より強くなる。これ、ある種の拷問だろ。と思いながら、俺は他の着物に目をやり、時間を潰す。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「お兄さん、こっちにおいで」

 

 時間を潰していると、着付けを手伝っていたおばさんが顔を見せる。

 真菰とカナエさんの着付けが終わったのだろう。なので、俺はおばさんの隣を歩く。

 

「あの子たちは別嬪さんだねぇ。お兄さんの本命はどっちなんだい?」

 

「いや、本命とかないですから。てか、そういう関係じゃないんですけど」

 

「そうかそうか。お兄さんは、二人に囲んでもらうんだね」

 

「このご時世それは拙いでしょ、おばさん」

 

 そんな会話をしながら、真菰とカナエさんが居る部屋に案内され、おばさんが襖を開けた。

 そこには、薄く化粧を施し、着物を着つけた真菰とカナエさんの姿。……てか、女性は化粧で化けると聞いていたが、これは化けすぎでしょ。俺の予想だが、街を歩いていたら、10人中8人が振り返る容姿である。

 

「ほら旦那さん。どうだい彼女たち?」

 

 いや、旦那じゃないから。と、内心で呟く俺。

 それにしても、向日葵と紫陽花の浴衣がもの凄く合っていて、一輪の花のようである。

 

「あー、うん。別嬪さんだな。似合ってる似合ってる」

 

 真菰とカナエさんは「照れ隠しかな?」と呟き、クスっと笑う。

 「他にも着て見るか?」聞いたのだが、真菰とカナエさんは、この着物で満足したようだ。ともあれ、俺が一時退出してから真菰たちは着替え、化粧を落とすらしい。

 

 ――閑話休題。

 

 決定した着物を包装してもらい、真菰とカナエさんがそれを受け取ってから、俺がおばさんに代金を払う。

 

「じゃあ、おばさん。ありがとうございました」

 

「気に入って貰えてよかったよ。お兄さんも、彼女たちを大切にな」

 

「命に変えても護るんで安心して下さい」

 

 おばさんは「そうかそうか」と言ってにこにこと微笑んだ。

 それから着物店を出て、一息つける店に入る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~とある店~

 

 テーブル席に座り、俺が口を開く。

 

「気分転換はできたか?」

 

「うん。新しい着物も手に入ったし、満足だよ」

 

 「むふふ~」と笑う真菰。

 

「そうね。これからも頑張れそうだわ」

 

 カナエさんがそう呟く。

 そうだよな、蝶屋敷は怪我人が搬送されてくる重大拠点でもある。基本、ゆっくりできる時間はない。

 

「楓は柱になったから、今まで以上に忙しくなるんでしょう?」

 

「私が柱を担っていた時は、警備地区も広くなるし、基本忙しかったわ」

 

 柱の任務は常に死と隣り合わせだ。十二鬼月と対面することになってもおかしくない。

 

「だろうな。まあ、無理がないように頑張るよ。それに、簡単には死なないから心配するな」

 

 俺だけで上弦に遭遇するのだけは勘弁して欲しけど。でも、きっと逃げることはないだろう。

 

「じゃあ、約束しよう。鬼舞辻を倒しても、生き残るって」

 

「そうね。約束しましょう、絶対生き残るって」

 

「そうだな。約束だ」

 

 真菰、カナエさん、俺と呟き。――そう、約束をしたのだった。




これで、原作前は終了ですね(たぶん)。
しのぶさんとカナヲちゃんは、ぎゆしの、炭カナ設定なので、あまり出てきませんでした。
てか楓君。将来、真菰ちゃんとカナエさんを囲まれ?そうですよね(笑)

ではでは、次回(@^^)/~~~

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