鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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番外編です。


番外編
帰省


「……なあ真菰。俺、帰っていいかな」

 

 俺がそう呟く。

 今俺と真菰は、鱗滝さんに顔を見せる為、故卿である狭霧山に向かっているのだ。なんで俺が一緒に居るかと言うと、鱗滝さんからの手紙で『楓も一緒に顔を見せに来なさい、話したいことがある』ということだ。

 

「ダメだよ。もう、鱗滝さんに鴉を飛ばしちゃったんだから、観念してっ」

 

 真菰は、頬を膨らませて呟く。

 俺、鱗滝さんから半殺しにされないよね。客観的に見れば、俺が鱗滝さんの元から真菰を引き抜いた。ということでもあるんだし。

 

「大丈夫だよ、楓っ。きっと、近況報告だけだと思うし」

 

 真菰はそう言うが、俺は「きっとそれだけじゃないよなぁ……」と内心で呟く。

 そんなことを話しながら山を登っていると、ある小屋が目に入る。――鱗滝さんが住まう小屋だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 小屋まで歩みを進め扉を開けると、炭火の近場に座る鱗滝さんが、俺を突き刺すように見ていた。……いや、天狗の面で顔が隠れてるから、俺の勘なんだけど

 

「ただいま~!鱗滝さん!」

 

「お邪魔します、鱗滝さん」

 

「真菰、帰ったか……――待っていたぞ、楓」

 

 ……後半になるに連れ、鱗滝さんの声が低くなったんだけど、俺の気のせいだよね?

 ともあれ、俺と真菰は靴を脱いでから、段差を上がり、鱗滝さんの元へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「――真菰は、蝶屋敷で上手くやってるのか」

 

「はい。それに、彼女の手腕には驚かされます」

 

 正座をして、鱗滝さんと対面で座る俺がそう言ってから、鱗滝さんは「そうか」と頷く。

 真菰は、蝶屋敷の戦力の一つだ。彼女が居ると居ないでは、助けられる命の数も違ってくると見ていい。最初の頃は「覚えることが沢山あるよ」と、若干涙目であったが。

 

「楓は柱に就任したと、真菰の文にあった。お館様からは何柱の称号を戴いたんだ?」

 

 「やはり花柱か?」と、鱗滝さんは続けた。

 

「――いえ、桜柱の名を戴きました」

 

 “花”ではなく“桜”の称号になったのは、おそらく俺の派生の為だろう。

 そして、鱗滝さんの気配が変わる。

 

「――だが、柱に就任したからと言って、真菰を預けられると決まったわけではない」

 

 俺は「……避けて通れなかったか」と思いながら内心で溜息を吐く。いや、覚悟はしていたけどさ。

 

「楓よ。もし真菰が病床に伏せた時、お前はどうする?」

 

「そうなった場合、俺の最優先事項は真菰の看病。となるでしょう」

 

 俺は間髪入れずに答える。

 鱗滝さんは面を食らったよう見えたが、俺の気のせいか?

 

「……それは、全てを投げ打ってもか?」

 

例外を除けば(・・・・・・)、全てを捨てる覚悟はあります」

 

「地位や名誉も捨てると?」

 

「――捨てますね。彼女の安全が第一ですから」

 

 ――その時、声が上がる。

 

「う、鱗滝さんも楓もストップっ!私、かなり恥ずかしいよ……」

 

 鱗滝さんの両膝の上に座っていた真菰は、顔を茹でダコのように真っ赤にしていた。まあ、本人の前でする話じゃない気がするし。

 でも、鱗滝さんは弟子は、異形の鬼の存在もあり、最終選別から帰って来なかった方が圧倒的に多い。

 そして、真菰の前に指導を施して二人の弟子、その二人は、鱗滝さんの弟子の中でも抜きん出た才能を有していたと聞いたが――その片割れは、最終選別で帰らぬ人となってしまった。だからこそ、鱗滝さんは真菰を最終選別に送り出すことを渋っていたと。後に真菰の口から俺は聞いた。

 なので俺は、鱗滝さんが過保護になる理由も解る気がする。

 

「真菰よ。儂にとっては重要なことなのだ、分ってくれ」

 

 鱗滝さんの言葉に、真菰は「うぅぅ」と小さくなり若干涙目である。

 ともあれ、鱗滝さんは言葉を続ける。

 

「及第点、としておこう」

 

「……及第点、ですか?」

 

「そうだ。儂は、完全に許したわけではない」

 

 鱗滝さんはそう呟く。

 きっと、今の状況を暫く様子見。ということなのだろう。

 

「わかりました。完全に認めてもらえるように精進します」

 

「期待してるぞ、楓」

 

 そう言って、鱗滝さんが面の中で笑った気配がした。

 この日は、鱗滝さんと近況報告をし、昼食を御馳走になった。帰り際に「――いつでも帰って来なさい、歓迎する」と言ってもらえた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~帰り道、道中~

 

「俺一応、鱗滝さんに認められた、のか?」

 

 「でも、及第点だしなぁ」と、俺は付け加える。

 真菰は笑みを浮かべ、

 

「大丈夫大丈夫。時が経過すれば、完全に認めてくれるって」

 

「そうだな」

 

 俺もそう呟き、今日のやり取りを振り返る。ともあれ、俺と真菰は、今日の出来事を話しながら蝶屋敷を目指して帰路に着く。

 このようして、俺と真菰、鱗滝さんとの会合が幕を閉じたのだった。




楓君と真菰ちゃんですが、着物姿で、腰には(隠して)日輪刀を下げています。
てか、鱗滝さんと楓君の会話を聞いていた真菰ちゃん、かなり恥ずかしかっただろうなぁ。

ではでは、次回(@^^)/~~~

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