夢
「……鬼の気配?」
任務が終わり蝶屋敷を目指して帰還している途中、俺は鬼の気配を感じ取った。
木々を跳び超えていたら「禰豆子!?」という声が聞こえてくる。気配を辿ると、その声の主は人間だ。俺は加速し、少年の前で雪をザザッ蹴るようにして停止し、右手で日輪刀を抜き放つ。
「大丈夫か?」
「あ、貴方は!?」
「鬼を狩る剣士だ。あれは、お前の妹か?」
「は、はい。禰豆子は、妹は体調がおかしいんです」
俺は「そうか」と空を仰ぐ。
「――妹は鬼になった」
「お、鬼!?」
少年は“鬼”という言葉に驚愕していた。
それもそうだ。鬼の存在など、日常生活では認知されていないのだから。
「ッウ“―――!」
鬼化した妹は、俺と兄に牙を剥いて威嚇している。
俺の力量を感じ取ったのか、体も大柄になっていった。なので俺は加速し、背後に回って鬼の両腕を組み、左手を使用し拘束する。
「ま、待って下さい!?……い、妹は、禰豆子は鬼じゃ……」
「妹は鬼だ、現実を見るんだ」
俺の言葉を聞いた少年はガクリと項垂れる。
「い、妹を殺すんですか!?」
「……殺す。鬼は人を喰う」
「ッ!?や、やめてください!妹は、まだ誰も殺していない!」
「それは目覚めたばかりだからだ。これから腹を満たす為に人を喰う。鬼は、そうして力を増す」
「禰豆子は他の鬼とは違う!
「……人を喰わない鬼か。それは夢物語だな」
――鬼が人を喰わないなど有り得ない。
鬼は人を喰う、だから殺す。鬼殺隊士としては当然だ。……――でも、俺が掲げるのも夢も、夢物語でもあるのだ。
そして俺は「悪い」と呟き、左腕で首を固定し、右腕を振り上げ、刀を右肩から突き刺さるように固定する。
少年は座り込み、両手を前にして頭を垂れた。
「……ど、どうか妹を離してくれないでしょうか。……妹には誰も殺させません……。人間に戻す方法も、必ず見つけます……お願いします……」
「……断る、妹はここで殺す」
「や、止めてください!オレが妹を人間に戻します!だから――」
顔を上げ、泣きながらに懇願する少年。
俺はそれを無視し、妹を突き刺す。妹は「ギャア――!」と声を上げる。
「止めろおぉぉッッ!」
少年は反射的に石を投げ俺の行動を遮る。そして立ち上がり傍らに置いていた斧を持ち、木々に隠れながら俺に向かって来るが、俺は刀の柄で背後を叩き気絶させる。そして途中で投げたと思われる斧が、空で回転し俺の隣接する木に刺さる。
その時、気を緩めてしまった俺に妹は右蹴りを放ち、俺は体勢を崩してしまった。妹が移動したその先には、少年が気絶をしている。
「(――喰われる)」
そう俺は思ったのだが、妹の行動は“喰う”ではなく“護る”だった。
その時、少年の『禰豆子は他の鬼とは違う!人を喰ったりしない!』という言葉が蘇る。
「(……飢餓状態でも護る、か。まるで、俺が掲げている夢が現実になったかのようだな)」
妹は俺に跳びかかろうとするが、俺は背後に回り後首を軽く叩き気絶させ、ゆっくり横たえる。
「冨岡さん。そんな所で隠れてないで出て来ていいですよ」
俺がそう言うと、冨岡さんが隣接した木々を分けて姿を見せる。
「……なぜ殺さなかった?小僧の妹は鬼だぞ」
「一連の流れを見てたはずです。そしてこれが、俺の答えです」
冨岡さんは、少年たちと俺を交互に見る。
「……胡蝶カナエの夢、か」
――胡蝶カナエの夢。
それは、人間と鬼が垣根を跳び超え、仲良くする夢だ。その夢の一環を、少年と鬼の妹は見せてくれた気がした。
「そうですね。――冨岡さんは、これを見てどう思いました?」
「……通常の鬼とは何かが違う――オレも賭けてみたい、とも」
「……そうですか。でもそうすると俺と冨岡さん、立派な隊律違反ですよね」
鬼を逃がす柱など、前代未聞だろう。
すると、冨岡さんが口を開く。
「……でもいいのか?オレは兎も角、栗花落は、
「……あー、そうですね。俺、鬼の形相で怒られそうです。でも、賭けたくなったんですよね。今の光景はまるで、俺の夢そのものでしたから」
冨岡さんは「……そうか」と頷いた。それから、冨岡さんがお館様に文を送り、俺が鱗滝さんに文を送るのだった。
原作とは違い、その場に居合わせたのは楓君となりましね。てか、炭次郎たちは楓君たちの夢を叶えてあげて(願望)
ちなみに、今の義勇さんと真菰ちゃんは面識はありますね。
ではでは、次回(@^^)/~~~