鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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想い

 ~狭霧山、麓~

 

 現在、俺、真菰、カナエさんは狭霧山の麓まで足を進めていた。――そして、ある小屋を目にする。

 

「あの小屋の中に、鬼の禰豆子が?」

 

 カナエさんに問いに俺が「たぶんな」と頷く。

 てか、今の状況を鱗滝さんに見られた反応が、俺は恐怖なんだが……。

 

「じゃ、行こうか」

 

 真菰の問いに頷き、俺とカナエさんは歩を進めた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 扉を開けると、炭焼の近くに座りながら鬼の禰豆子がボーっと俺たちを見ていた。

 そして、鱗滝さんは匂いで察していたのだろう。別段、俺たちの登場に驚いていなかった。

 

「鱗滝さん。お久しぶりです」

 

「鱗滝さん。ただいま~」

 

「こんにちは、鱗滝さん」

 

 ……うっ。俺限定で鱗滝さんから威圧の視線を感じる。『儂の知らない間に、もう一人女子(おなご)を囲っておったのか?』って感じで。

 鱗滝さんは口を開く。

 

「儂は鱗滝左近次だ。確か、胡蝶カナエ殿だったか」

 

「胡蝶カナエです。お初にお目にかかります、鱗滝さん」

 

 カナエさんの挨拶を聞いた鱗滝さんは、顔を綻ばせたように感じた。

 それから靴を脱ぎ、段差を上がり禰豆子の元まで歩み寄った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「ウー!」

 

 そう、禰豆子が鳴いた。

 今禰豆子の長い髪は、対面に座っているカナエと真菰が三つ編みしている所だ。

 

「ふふ。禰豆子は良い子ね」

 

 カナエは「やっぱり、鬼と仲良くなれるのは可能なんだ」と内心で呟き、禰豆子の髪を触っている。

 確かに、カナエが見ている現在の光景は、カナエが夢に掲げていたもの、そのものなんだから。

 

「本当に人を食べないんだね~。何か私、義妹ができたみたい」

 

 「むふふ~」と、真菰は嬉しそうに呟く。

 こちらは和やかな雰囲気に包まれているが、そこから少し離れた所では、鱗滝と楓が対面で座っている。その表情は、真剣そのものである。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「楓よ。お前は将来、真菰とカナエ殿を囲うと決めているのか?」

 

「……できることなら、そうしたいです」

 

 だがこのご時世、楓の考えは否定されることが多々あるだろう。でも楓は、どちらかを切り捨てる、ということが出来ない人間だ。悪く言えば、優柔不断。というやつであるが。

 だが鱗滝も、この二年間で“栗花落楓”という人間を見てきたのだ。きっと楓なら、実現できるのだろう。

 

「……そうか。儂も、少なからず楓の人間性を理解しているつもりだ。お前がそういうなら、それが最善との考えなのだろう」

 

「……そう、なんですかね」

 

「自信を持ちなさい、楓。儂は、お前の覚悟には反対しない」

 

 楓は「鱗滝さん、ありがとうございます」と、涙を我慢しながら呟いたのだった。

 そんなことがありながらも、楓は刀を右腰に吊り下げ小屋を出て、狭霧山に麓から山を登り出した。――目的は、炭治郎の修行である。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楓は山を登り、奥に入った場所で、鎮座している岩付近で炭治郎を見つけた。どうやら、炭治郎の修行はこの岩を斬ることだろう。だが、振りかぶった日輪刀は、岩に弾かれてしまっている。

 

「――炭治郎」

 

 楓がそう呼ぶと、炭治郎は肩をびくっとしてから振り向いてから納刀し、呟く。

 

「あ、あなたはあの時の……」

 

「ああ。あの時は怖がらせて悪かったな」

 

「い、いえっ。オレは竈門炭治郎です」

 

 炭治郎は、楓に一礼した。

 楓は「固くなり過ぎだぞ」と苦笑してから、自己紹介をする。

 

「栗花落楓だ。よろしくな、炭治郎」

 

「は、はい!よろしくお願いしますっ」

 

 炭治郎は生まれつき鼻が良い。それこそ、人の感情が読み取れてしまう程だ。

 その炭治郎が栗花落楓から嗅ぎ取った匂いは、桜のように優しい匂いだ。だがその匂いの中には、慈悲の念が伴ったの匂いも含まれている。

 炭治郎は、師の鱗滝から聞いたことがあった。鬼狩りでありながらも、鬼に慈悲の念を抱き、鬼を滅する鬼殺隊士がいることを。その人物は、栗花落楓のことを差していたのだろう、と。

 

「楓さんは、なぜここに?」

 

 楓は「修行の頻度が気になってな」と言葉にしようとしたが、先程の光景を思い出し「いや、修行の話は時間を開けてからだな」と思い、話を切り返ることにした。

 

「息抜き相手にどうかな?と思ってな」

 

 楓は「ちょっと休憩しよう」と呟くと、炭治郎は「は、はい」と頷いた。

 それから、炭治郎と楓は近場の切り倒された丸太に座り、世間話をした。

 楓の話は、炭治郎にとって心を擽るものだらけだった。この世には、塩で構成された水()が流れていることや、世界には外国というものがあり、それが点在していることなど。まるでこのひと時は、鬼の存在など忘れてしまう程だ。

 その時、炭治郎がポツリと呟く。

 

「……オレ、強くなれるんでしょうか?」

 

 炭治郎が言うには、宍色の髪をして狐の面をしている青年に稽古をつけてもらっているが、まったく成果が出ない。と言う悩みだった。

 それを聞いた楓は「ちょっと違うかも知れないけど」と内心で呟いてから、話し出す。

 

「これは俺の持論なんだけどな、“これだけは譲れないもの”を心の中に作るんだ」

 

 僅かに沈黙が流れて、炭治郎は言葉を紡ぐ。

 

「……譲れないもの、ですか?例えば、どんな?」

 

「例えば、人々を守る誓いとか、鬼に対する怒りでもいいと思う」

 

 楓は「取り敢えず、何でもいいんだ」と言って言葉を続ける。

 

「想いを抱くことで、劇的に強くなれるみたいなことは起こらないけど。――その想いは窮地に陥った時、心の支え、折れない芯になる」

 

 「俺の場合は、それをバネにして強くなった経験もある」と付け加え、楓は笑った。それを聞いた炭治郎は「じゃあ、楓はなにを心に刻んでいるのだろう」と気になった。

 

「楓さんの想いって、何なんでしょうか?」

 

 楓は「そうだなぁ」と頷き、話し出す。

 

「俺はな、人々()を護りたいという想いもあるけど、それとは別に、ある人たち(・・・・・)の笑顔も護りたいんだ」

 

「ある人の笑顔、ですか」

 

「まあな。でもさすがに、名前までは教えられないけどな」

 

 そう言って、楓は苦笑した。

 でも確かに、炭治郎はそう言った折れない()を一度も考えてこなかったし、漠然に修行の反復だけを行っていた気がする。

 炭治郎は、力を付けてどうするか?何をしたいか?という目的も必要なんじゃないかと思った。

 

「よしっ、俺も修行を見てあげるよ」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 そう言うと、楓と炭治郎は立ち上がり、――想い強さを抱き、刀の柄を握り抜刀したのだった。




炭治郎は、禰豆子を人間に戻す。といった想いはありましたが、ここでは長男の義務が混ざっていて少し違ったと解釈して下さいm(__)m
てか、楓君の将来のお嫁さんは決まったも同然になりましたね(笑)

追記。
もしかしたら、明日は投稿ができないかもです。
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