鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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那田蜘蛛山

 那田蜘蛛山に到着すると、凄まじい刺激臭が鼻を突く。

 

「……かなり臭いな」

 

 そう呟いてから、俺は生存者を捜索する為、木々に飛び移り山の中に入って行く。

 跳んでいたら微かの人の気配を感じたが、発生源はぶら下げられた白い繭の中からだ。だが、死臭が混じっていることは、全ての繭が手遅れだろう。

 

「(……どうか安らかに)」

 

 俺は心中で手を合わせ呟き、先を急いだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺が木々と跳んでいると、猪頭の鬼殺隊士が約二メートルを超える鬼に首を掴まれている所を発見する。

 

 ――閑話休題。

 

 猪頭の鬼殺隊士は、猪の口から鮮血を流していた。おそらく、頭を潰されるのも時間の問題だろう。

 なので俺は、跳んでいる最中で刀の柄に右掌を添え、

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 一閃し、猪頭が掴まれてた腕を斬り落とすと「グワアァァアッ!」と雄叫びを上げ、俺は地に落ちた猪頭の鬼殺隊士を見るが、呼吸も安定しているので死んではないだろう。

 

 ――花の呼吸 肆ノ型 紅羽衣。

 

 俺は抜刀したついでに踏み込み、勢い良く下から上に跳びようにして花の斬撃を描き鬼の体を一刀両断すると、鬼は力尽きたように鬼は仰向けに倒れる。

 その時、起き上がった猪頭の鬼殺隊士が、俺に刀を突き付け呟く。

 

「――オレと戦え、蝶羽織り!」

 

「……はい?」

 

 思わず首を傾げてしまう。

 だが、猪頭の鬼殺隊士は話し始める。

 

「お前は、あの十二鬼月を倒した!そのお前を倒せば、オレの方が強い!」

 

 見るからに、猪頭の鬼殺隊士は重傷である。

 なので、どうしてその結論に至ったんだ?としか言いようがない。てか、あれが十二鬼月とか弱過ぎる。それに、瞳には数字が刻まれていなかったし。

 

「……傷が治ったら何時でも手合わせをしてやる。――まあ、俺が生きてたらの話だが」

 

 そう言ってから加速し、猪頭の後方に回り首筋を柔らかく叩き意識を落とす。

 

「後は、隠の人に頼むか」

 

 俺はそう呟いてから納刀し、この場を小走りで後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 鬼の気配がする方向に走っていたら、その先で刀を構え対峙している冨岡さんとしのぶさんの姿が映る。そして、冨岡さんが地に倒れている――竈門炭治郎、竈門禰豆子を護っていた。

 俺は「柱に露見したか。たぶん柱合会議、いや柱合裁判だなぁ」と思いながら、ザザッと急停止して冨岡さんの隣に立ち抜剣し刀を構える。

 

「あら、楓も隊律違反に加担するんですか?冨岡さんが庇っているのは、鬼、ですよ」

 

「そうだな。俺と冨岡さんが庇っているのは鬼だ」

 

 俺がそう言うと、しのぶさんは「……なぜ庇うんですか」と言って青筋を浮かべる。

 でも確かに、事情を知らないしのぶさんから見たら、鬼は滅殺する対象だ。

 

「……栗花落。ここはオレが受け持つ、炭治郎たちを任せる」

 

「……わかりました」

 

 俺は納刀し、箱を背負い気絶した炭治郎を背におぶりこの場から走り出すが、走っている途中で足を止める。これは――カナヲの気配だ。

 カナヲは木々を分けて姿を現し、禰豆子が入った箱だけに向けて抜剣し振り下ろすが、俺も咄嗟に抜剣し、ガキンッと音が響き、それを受け止める。

 

「……兄さん。隊士が背負っている箱からは、鬼の気配がする」

 

「わかってる。これには事情があるんだ」

 

 俺は「悪い」と言ってから瞬時に移動し、気絶している炭治郎たちを安全な場所に下ろしてから元の場所に戻る。

 

「……どんな事情?兄さんは、鬼に慈悲をかけ過ぎ」

 

 カナヲは後方に刀を回し、

 

「――私はしのぶ姉さんに、鬼を滅するように頼まれた」

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 俺は炭治郎に迫ると思われる一閃を、自身の一閃で相殺させると、ガキンッと甲高い音と共に刀の鍔競り合いになる。

 そして、カナヲは眉を寄せる。

 

「……兄さん、私と戦うなんて正気?」

 

 カナヲは「隊員同士の戦闘は、隊律違反になるんだよ」と言い、首を傾げる。

 

「……わかってる。でも、この先には通せない」

 

 そこからは、俺とカナヲは無数の斬撃の応酬であり、隙を全く与えなかった。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 俺とカナヲの九連撃は、互いが正確に刀を打ち合い、相殺する。

 そして、お互いに決定打を与えないのが現状だ。

 

「……兄さん、そこをどいて」

 

「……断る」

 

 俺がそう言ったら、カナヲは「……兄さんの分からず屋!」と呟き、刀を振るう。

 

 ――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 的確に急所に振り注ぐ刃は、俺が周囲に放った花の斬撃で弾き飛ばす。

 やはり経験の差が見えてきたのか、カナヲは呼吸が乱れ両肩を揺らしていた。

 

「……やっぱり強いね、兄さん」

 

「俺はカナヲの義兄だしな。簡単には負けない」

 

 その時、鴉が空中を旋回し、口を開く。

 

「カァァアア!伝令!伝令!炭治郎、及ビ、鬼の禰豆子ヲ拘束!本部へ連レテ帰ルベシ!」

 

 それから、鴉が炭治郎と禰豆子の特徴を復唱していた。ともあれ、俺は日輪刀を納刀し息を吐く。取り敢えず、この場は収まったと見てもいいだろう。

 だが、鴉が言葉を付け加えた。

 

「加エテ、水柱、桜柱モ連行セヨ!カアァァア!」

 

 カナヲも納刀し、口を開く。

 

「……兄さん。命令により、ご同行を」

 

「……わかってる」

 

 俺は「抵抗の意思ない」と言って、炭治郎を背負いカナヲに連行されて行ったのだった。




兄妹喧嘩が勃発しましたね。
累を滅殺した仮定は原作通りです。ちなみに、カナヲちゃんと楓君の乱舞一閃の型は微妙に異なります。まあ、抜剣した状態でも放てるのは変わりありませんが。

ではでは、次回(@^^)/~~~

追記。
禰豆子は義勇さんに助けられてから箱の中に隠れ、炭治郎は気絶してしまいました。ここが、ちょっと原作と違いますね。

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