鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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再会と運命

 柱合裁判を終えて、処分を免れた炭治郎と禰豆子は、治療の為蝶屋敷に運ばれていた。

 そこには、那田蜘蛛山で共に戦った善逸と伊之助も入院しており、三人は感動の再会を遂げる。

 

「善逸!」

 

 炭治郎が声を上げると、善逸は「ギャー―っ!(汚い音声)」と声を上げる。

 

「大丈夫か!?怪我したのか!?山に入って来てくれたんだな……!?」

 

「た、炭治郎……」

 

 そう言って善逸は、ベットの横に歩み寄った、炭治郎を背負っている隠の人に抱きつく。

 ……まあ、鼻水を垂らすオマケ付きだが。

 

「炭治郎、聞いてくれよ――っ。臭い蜘蛛に刺されるし、毒で凄い痛かったんだよ――っ。さっきから、女の子にガミガミ怒られるし最悪だよ――っ」

 

 すると、アオイがギロッと善逸を睨みつけた。

 炭治郎は「善逸、静かにしような」と呟き、苦笑する。

 

「伊之助は?村田さんは見なかったか?」

 

 隠の人が善逸に「ちょっと離れろよ……オレ関係ない……」と言っているが、気にせず話しを続ける炭治郎と善逸。

 

「村田って人は知らんけど、伊之助なら隣で寝てるよ」

 

「あっホントだ!思いっ切りいた!気付かなかった」

 

 炭治郎は善逸の隣のベットで寝ている伊之助を見て呟き、隠の人の背から乱雑に下り、猪之助が寝ているベットの横で両膝を落としベットの上に手を置く。

 

「伊之助!無事でよかった……!ごめんな、助けに行けなくて……!」

 

「……イイヨ、気ニシナイデ」

 

 そう言った伊之助の声はガラガラだ。

 善逸の話によると、伊之助の喉は潰れていて、最後は自身の大声が引き金になったとか。ともあれ、善逸は隠の人から離れた。

 善逸は炭治郎を見て、

 

「それより炭治郎は見たっ!?」

 

 善逸には、蝶屋敷に運ばれて喜ばしいことがある。

 

「蝶屋敷の三大美人っ!」

 

 善逸の言う蝶屋敷の三大美人とは、――鱗滝真菰。――胡蝶カナエ。――胡蝶しのぶ。のことである。

 

「でだ!オレが一番推してるのは、胡蝶カナエさんっ!あの柔らかい笑顔に、絹のような肌っ!綺麗な指っ!あ――――!(汚い音声)マジであの人女神だわ!オレ、ここに入院できて幸せっ!結婚したいねっ!うん!」

 

 このように、熱く語る善逸。

 そして、善逸は体をくねくねさせた。

 

「いやね!真菰さんとしのぶさんも、もちろん可愛いよ!屋敷で助けたくれた時、ホント天使かと錯覚したもん!でもさぁ、最後は自分の好みってやつが勝っちゃってさ!ホントに天使と女神って居るんだな!」

 

 善逸に振り向いていた炭治郎も「そうなのかもなぁ」と頷いた。

 そして、あの日の出来事(・・・・・・・)を思い出した炭治郎から、善逸にとっては爆弾発言が落とされる。

 

「でも善逸、胡蝶カナエさんを推すのはいいけど、あの方は――――人妻(・・)、だと思うぞ」

 

 善逸の方向に振り向いた炭治郎がそう呟き、「そもそも、女性を邪の気持ちで見たらダメぞ」と、優しく指摘する。

 善逸は「はい?」というように、口をあんぐりと開ける。

 

「え!?マジで!?炭治郎、どこでその情報を聞いたんだッ!?」

 

「正確な情報とは言い切れないんだけど、オレは胡蝶カナエさんの旦那さんに会ってる」

 

「会ってるの炭治郎!?誰っ!?誰なんだっ!?」

 

 善逸は、炭治郎に迫る勢いで呟く。

 

「オレの予想では――桜柱・栗花落楓さん」

 

 炭治郎が「それに、楓さんはカナエさんの正式な後継者なんだって」と、善逸に止めを刺す。

 そう。正式な後継者とは、弟子と育手の親密度が全く違うのだ。楓とカナエには、切っても切れない“絆”が存在している。

 

「は―――ッ!(汚い音声)柱とか勝ち目ないじゃんっ!だって柱とか化け物じゃんっ!」

 

 善逸は、ハッ、と何かを思い出す。

 

「柱っ聞いたらさ、炭治郎。お前、裁判に掛けられたんだろ?よく無事だったな」

 

「ああ。師匠、兄弟子、カナエさん、楓さん、真菰さんがオレたちのこと庇ってくれて、どうにか無事だったんだ」

 

 炭治郎はあの時を思い出し、泣きそうになってしまう。

 禰豆子の為に、命をかけてくれるとは思っていなかったのだ。同時に、自分たちの不甲斐無さを痛感してしまった。

 善逸は「そんなことがあったんだ」と呟く。

 

「でもまあ、炭治郎と禰豆子ちゃんが無事でよかったよ」

 

「ありがとう、善逸。――善逸たちも無事でよかった」

 

 落ち着きを取り戻し、炭治郎と善逸が世間話をしていると、病室の扉を潜って楓が入室する。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「炭治郎、久しぶりだな」

 

 炭治郎の元に歩み寄った楓は「さっきは挨拶どころじゃなかったからな」と呟き、炭治郎の頭に右掌を置き、くしゃくしゃと撫でてから手を下ろす。

 

「はい!お久しぶりです!楓さんもお元気そうで!」

 

 炭治郎は、楓の回りをきょろきょろ見回した。

 

「カナエさんと真菰さんとは一緒じゃないんですか?」

 

「カナエさんは調剤の研究で、真菰は任務に出てる。今日の夜にゆっくり話すから心配するな」

 

 楓は「俺も真菰も夜は非番だしな」と付け加える。

 楓は善逸を見て、

 

「えっと、炭治郎の同期だっけ?」

 

「は、はい!我妻善逸!雷の呼吸使いです!」

 

 善逸は、表情を硬くして呟く。

 でも楓は「炭治郎もそうだけど、年も近いんだし何時もの口調でいいんだけどなぁ」と思いながら苦笑する。

 ともあれ、楓も自己紹介をする。

 

「俺は栗花落楓。花の呼吸使いで、鬼殺隊の桜柱の任に就いてる。よろしくな、善逸」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 善逸は「あの~」と言いにくくそうに、気になることを楓に聞く。

 

「胡蝶カナエさんの旦那さんって、楓さんなんですか?」

 

 その時、炭治郎が追撃に掛かる。

 

「確か、真菰さんもですよね?」

 

「まあな。カナエさんと真菰は俺の奥さんだ。一応、鬼殺隊では非公認で通してるから他言無用な」

 

 といっても、蝶屋敷の住人には露見しているんだが。

 そして楓たちは、これが運命を動かす出会いになるとは思ってもいなかった。




今回は、炭治郎と善逸、伊之助と楓君の邂逅(運命の出会い)でした。
おそらく、カナエさんと真菰ちゃんとの絡みは次回になりそうです。

ではでは、次回(@^^)/~~~

追記。
禰豆子が入った箱は、入り口付近に置いてありますね。

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