鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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家族

 ~蝶屋敷、居間(台所)~

 

「できたぞー。持って行ってくれ」

 

「皆、たくさん食べてね」

 

「どんどんおかわりしてね」

 

 そう呟くのは、楓、カナエ、真菰だ。

 きよたちが「はいっ!わかりましたっ!」と返事をし、お盆に料理を乗せテーブル席に運んで行く。

 

「美味しいですっ!」

 

「柱の人たちからご飯を頂けるなんて光栄ですっ!」

 

 テーブル席に座り、運ばれた食事を箸で取り、白飯とおかず(焼きシャケ)を咀嚼し飲み込んだ炭治郎、善逸が嬉しそうに呟く。ちなみに、伊之助は喉が潰れてしまっているので、病室のベットの上だ。

 

「……楓様、真菰様、カナエ様。夜食は私たちが作りましたのに」

 

 炭治郎の隣の席に座り、ご飯を口にしていたアオイがそう言った。

 そうなのだ、アオイが夜食を作ろうと居間に入ったら、既に準備が進められていたのだ。

 確かに、蝶屋敷では手の空いた人がご飯を作るという習慣があるが、階級の高い人たちに任せるなんて恐れ多かった。

 

「いいんですよ、アオイ。姉さんたちは、好きで台所に立っているんですから」

 

「……兄さんと姉たちは仲良し、だもんね」

 

 アオイの隣に座るしのぶと、その隣に座るカナヲがそう言った。

 ともあれ、楓たちは「新婚生活の代わりでもある」と言って、台所に立っている時が多々あったりする。

 その成果もあるのか、楓たちの料理の味は、料亭と遜色ない美味しさだ。

 

「そうだな。それに俺たちは忙しくて時間が取れない日が多々あるから、集まった時は共同で作業したくてな」

 

 でも楓は、最初の頃は失敗が多くて、カナエと真菰に料理を教わりながら作っていたが。

 その間しのぶたちの「イチャイチャするなら、お部屋でお願いします」と、指摘があったのは言うまでも無いだろう。

 ともあれ、楓たちも席に着き、目の前にある箸を取って「いただきます」と音頭を取ってから、箸で焼きシャケを掴み口に運び、次いで白飯も口に運び、咀嚼してから楓たちが口を開く。

 

「炭治郎たちは、怪我を治す為にたくさん栄養を摂れよ」

 

「おかわりもまだあるから遠慮しないでね」

 

「ふふ。男の子はたくさん食べないとね」

 

 楓、真菰、カナエがそう言って、炭治郎と善逸は「はいっ!」と返事をする。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 それから数分経過した頃だろうか、真菰が不意に口を開く。

 

「そういえば楓、那田蜘蛛山に向かう前に“下弦の参”を単独で滅したんだよね?」

 

 楓は、咀嚼していた白飯を飲み込んでから口を開く。

 

「少し厄介な奴だったけど、何とかな」

 

 楓は「得物()も使う奴だとは予想外だった」と付け加えて呟くと、カナエが、むっ。と頬を膨らませる。

 

「じゃあ、鋭利な刃でつけられたような両腕の傷は、その時の傷なのね」

 

 楓は「……やべっ」と内心で焦る。

 カナエは蝶屋敷の隊士が搬送された時、直に治療を受けさせる(強制)と決めているのだ。それを破る隊士は、きつい説教が待っていたりする。現在その対象は、楓でもあったりするんだが。

 そして、炭治郎と善逸は目を丸くする。

 

「(……嘘でしょ。満身創痍になっても、オレは“下弦の伍”を倒せなかったのに。冨岡さんもそうだけど、柱は強さの次元が違うよなぁ)」

 

「(……十二鬼月は単独で滅っするって、柱って化け物の集まりだなぁ)」

 

 このようにして夜食を摂り終わり、各自で食器を片付け部屋に戻るのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~蝶屋敷 とある一室~

 

 楓は現在、対面で正座をしながら座るカナエに説教を受けていた。ちなみに、楓たちは着物姿である。

 

「楓。私たちに心配をかけないようにするのは分かるわ。でも、そういう傷はちゃんと治療をしないと、化膿する可能性も捨てきれないの」

 

 カナエは「その場の応急措置だけじゃダメなのよ」と呟いてから溜息を吐き、楓は「……ごめんなさい」と言って、肩を小さくしている。

 近場で足を楽にして座り、説教を見ていた真菰は苦笑してから助け舟を出す。

 

「その辺でいいんじゃない、カナエ。楓、反省してるようだし」

 

 カナエは頷き「次は楓、怪我はちゃんと見せるように」と、釘を刺してこの場を収めた。

 そして、必然のように柱合裁判の話になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「禰豆子、容認されてよかったわね」

 

「私たちは柱合裁判に参加できなかったから、少し心配でもあったんだ」

 

 カナエ、真菰はそう呟く。

 まあ確かに、判決を待つだけ。という立場では、不安に駆られるのは当然だろう。

 

「そうだよな。でも、巧く事が運んでよかったよ。皆のお陰だな」

 

 楓が言う通り、個人だけの力では成し遂げられなかった事項だったのだ。

 ともあれ、楓は今後のことに話を切り替える。

 

「風呂まで時間があるし、ちょっと散歩しないか」

 

「賛成っ」

 

「気分転換にいいわね」

 

 楓たちは帯剣してから部屋から出て、廊下を歩き、玄関で靴に履き替えてから外に出る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楓たちが到着した場所は、蝶屋敷から僅かに離れた丘の上だ。――この場所は、楓とカナエが鍛錬で使用した場所でもある。そして、この場所から見える月は綺麗に輝いていた。

 

「こんな場所があったんだ。私、初めて知ったよ」

 

 輝く月を見ながら、真菰が嬉しそうに呟く。

 

「俺とカナエさんも、偶々見つけたって感じだからなぁ」

 

 楓とカナエは鍛錬終了時、この場でよく月明かりを見たものだ。

 

「そうね。――それに、この場で鍛錬していた弟子が“柱”に就任できるとは思っていなかったわ」

 

 カナエは、考え深く呟く。

 そう。楓とカナエはこの場所で“正式の後継者”としての儀式も行ったのだから。

 すると、真菰が首を傾げた。

 

「そんな特別な場所、私に教えてよかったの?」

 

「構わない。真菰はお嫁さんであり家族(・・・・・・・・・)、だろ」

 

 楓が言うそれは、カナエも同じ気持ちだ。

 そして楓たちは、この時間を大切にしようと心に仕舞った。鬼殺隊に籍を置いている限り、何時自身の灯火()が消えてもおかしくないからだ。

 ちなみに、前線から離れたカナエにも言えることだ。

 彼女の剣技(元柱)の強さ、僅かな時間“全集中の呼吸”の使用が可能だと言うことは、小さな任務なら舞い込む可能性も捨て切れないからだ。

 

「月を眺めていると、この世に鬼が存在するなんて考えられないわね」

 

「そうだな」

 

「うん、そうだね」

 

 カナエの問いに、楓と真菰は頷いた。

 月を眺め数分が経過し「じゃあ、帰るか」と楓が言って、蝶屋敷に帰ることになった時、真菰が楓にとっては爆弾発言を落とす。

 

「お風呂は三人で入ろうか。家族、なんだし」

 

「ふふ。私は構わないけど」

 

 真菰とカナエに見られた楓は、顔を真っ赤に染めた。

 

「――……いや、俺の理性が持たないから無理だな」

 

 楓は、恥ずかしさを悟られないように呟くのだった。まあ、顔を真っ赤に染めていたので、無意味だったのかも知れないが。

 

 ――閑話休題。

 

 楓たちは横一列に歩き、楽しく談笑しながら蝶屋敷に戻るのだった。




カナヲちゃんの真菰ちゃんの呼び方は“真菰”から“真菰姉さん”に変わっています。てか楓君、青春してるなぁ。
ちなみに、楓君、真菰ちゃん、カナエさんの部屋は、同室設定(結構大きい一室)になってます。これだったら、風呂の件はあんまり変わらなくね。と思ってしまう作者でした。

ではでは、次回(@^^)/~~~

追記。
真菰ちゃんは、お館様(蝶屋敷の皆)から準水柱の認識です。

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