~蝶屋敷、居間(台所)~
「できたぞー。持って行ってくれ」
「皆、たくさん食べてね」
「どんどんおかわりしてね」
そう呟くのは、楓、カナエ、真菰だ。
きよたちが「はいっ!わかりましたっ!」と返事をし、お盆に料理を乗せテーブル席に運んで行く。
「美味しいですっ!」
「柱の人たちからご飯を頂けるなんて光栄ですっ!」
テーブル席に座り、運ばれた食事を箸で取り、白飯と
「……楓様、真菰様、カナエ様。夜食は私たちが作りましたのに」
炭治郎の隣の席に座り、ご飯を口にしていたアオイがそう言った。
そうなのだ、アオイが夜食を作ろうと居間に入ったら、既に準備が進められていたのだ。
確かに、蝶屋敷では手の空いた人がご飯を作るという習慣があるが、階級の高い人たちに任せるなんて恐れ多かった。
「いいんですよ、アオイ。姉さんたちは、好きで台所に立っているんですから」
「……兄さんと姉たちは仲良し、だもんね」
アオイの隣に座るしのぶと、その隣に座るカナヲがそう言った。
ともあれ、楓たちは「新婚生活の代わりでもある」と言って、台所に立っている時が多々あったりする。
その成果もあるのか、楓たちの料理の味は、料亭と遜色ない美味しさだ。
「そうだな。それに俺たちは忙しくて時間が取れない日が多々あるから、集まった時は共同で作業したくてな」
でも楓は、最初の頃は失敗が多くて、カナエと真菰に料理を教わりながら作っていたが。
その間しのぶたちの「イチャイチャするなら、お部屋でお願いします」と、指摘があったのは言うまでも無いだろう。
ともあれ、楓たちも席に着き、目の前にある箸を取って「いただきます」と音頭を取ってから、箸で焼きシャケを掴み口に運び、次いで白飯も口に運び、咀嚼してから楓たちが口を開く。
「炭治郎たちは、怪我を治す為にたくさん栄養を摂れよ」
「おかわりもまだあるから遠慮しないでね」
「ふふ。男の子はたくさん食べないとね」
楓、真菰、カナエがそう言って、炭治郎と善逸は「はいっ!」と返事をする。
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それから数分経過した頃だろうか、真菰が不意に口を開く。
「そういえば楓、那田蜘蛛山に向かう前に“下弦の参”を単独で滅したんだよね?」
楓は、咀嚼していた白飯を飲み込んでから口を開く。
「少し厄介な奴だったけど、何とかな」
楓は「
「じゃあ、鋭利な刃でつけられたような両腕の傷は、その時の傷なのね」
楓は「……やべっ」と内心で焦る。
カナエは蝶屋敷の隊士が搬送された時、直に治療を受けさせる(強制)と決めているのだ。それを破る隊士は、きつい説教が待っていたりする。現在その対象は、楓でもあったりするんだが。
そして、炭治郎と善逸は目を丸くする。
「(……嘘でしょ。満身創痍になっても、オレは“下弦の伍”を倒せなかったのに。冨岡さんもそうだけど、柱は強さの次元が違うよなぁ)」
「(……十二鬼月は単独で滅っするって、柱って化け物の集まりだなぁ)」
このようにして夜食を摂り終わり、各自で食器を片付け部屋に戻るのだった。
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~蝶屋敷 とある一室~
楓は現在、対面で正座をしながら座るカナエに説教を受けていた。ちなみに、楓たちは着物姿である。
「楓。私たちに心配をかけないようにするのは分かるわ。でも、そういう傷はちゃんと治療をしないと、化膿する可能性も捨てきれないの」
カナエは「その場の応急措置だけじゃダメなのよ」と呟いてから溜息を吐き、楓は「……ごめんなさい」と言って、肩を小さくしている。
近場で足を楽にして座り、説教を見ていた真菰は苦笑してから助け舟を出す。
「その辺でいいんじゃない、カナエ。楓、反省してるようだし」
カナエは頷き「次は楓、怪我はちゃんと見せるように」と、釘を刺してこの場を収めた。
そして、必然のように柱合裁判の話になった。
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「禰豆子、容認されてよかったわね」
「私たちは柱合裁判に参加できなかったから、少し心配でもあったんだ」
カナエ、真菰はそう呟く。
まあ確かに、判決を待つだけ。という立場では、不安に駆られるのは当然だろう。
「そうだよな。でも、巧く事が運んでよかったよ。皆のお陰だな」
楓が言う通り、個人だけの力では成し遂げられなかった事項だったのだ。
ともあれ、楓は今後のことに話を切り替える。
「風呂まで時間があるし、ちょっと散歩しないか」
「賛成っ」
「気分転換にいいわね」
楓たちは帯剣してから部屋から出て、廊下を歩き、玄関で靴に履き替えてから外に出る。
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楓たちが到着した場所は、蝶屋敷から僅かに離れた丘の上だ。――この場所は、楓とカナエが鍛錬で使用した場所でもある。そして、この場所から見える月は綺麗に輝いていた。
「こんな場所があったんだ。私、初めて知ったよ」
輝く月を見ながら、真菰が嬉しそうに呟く。
「俺とカナエさんも、偶々見つけたって感じだからなぁ」
楓とカナエは鍛錬終了時、この場でよく月明かりを見たものだ。
「そうね。――それに、この場で鍛錬していた弟子が“柱”に就任できるとは思っていなかったわ」
カナエは、考え深く呟く。
そう。楓とカナエはこの場所で“正式の後継者”としての儀式も行ったのだから。
すると、真菰が首を傾げた。
「そんな特別な場所、私に教えてよかったの?」
「構わない。真菰は
楓が言うそれは、カナエも同じ気持ちだ。
そして楓たちは、この時間を大切にしようと心に仕舞った。鬼殺隊に籍を置いている限り、何時自身の
ちなみに、前線から離れたカナエにも言えることだ。
「月を眺めていると、この世に鬼が存在するなんて考えられないわね」
「そうだな」
「うん、そうだね」
カナエの問いに、楓と真菰は頷いた。
月を眺め数分が経過し「じゃあ、帰るか」と楓が言って、蝶屋敷に帰ることになった時、真菰が楓にとっては爆弾発言を落とす。
「お風呂は三人で入ろうか。家族、なんだし」
「ふふ。私は構わないけど」
真菰とカナエに見られた楓は、顔を真っ赤に染めた。
「――……いや、俺の理性が持たないから無理だな」
楓は、恥ずかしさを悟られないように呟くのだった。まあ、顔を真っ赤に染めていたので、無意味だったのかも知れないが。
――閑話休題。
楓たちは横一列に歩き、楽しく談笑しながら蝶屋敷に戻るのだった。
カナヲちゃんの真菰ちゃんの呼び方は“真菰”から“真菰姉さん”に変わっています。てか楓君、青春してるなぁ。
ちなみに、楓君、真菰ちゃん、カナエさんの部屋は、同室設定(結構大きい一室)になってます。これだったら、風呂の件はあんまり変わらなくね。と思ってしまう作者でした。
ではでは、次回(@^^)/~~~
追記。
真菰ちゃんは、お館様(蝶屋敷の皆)から準水柱の認識です。