鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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継子

 警備が終わり、楓が早朝に蝶屋敷に帰還すると道場の方で物音がした。

 楓が顔を覗かせると、額に汗を滲ませ、カナヲが真剣で素振りをしていた。

 

「……に、兄さん。お帰りなさい」

 

 カナヲは驚いた顔をして、真剣を後方に回し隠す。

 

「ただいま。カナヲ、一人で鍛錬か?」

 

 楓が「炭治郎たちは一緒じゃないのか?」と問いかけると、カナヲは恥ずかしそうに顔を俯けた。

 どうやら、炭治郎たちには隠れて鍛錬をしていたらしい。

 

「……えっと、皆と鍛錬するのは恥ずかしくて」

 

 「やっぱりそうか」と内心で頷く楓。

 だから楓は「じゃあ」と提案する。

 

「俺もこれから待機だし、一緒に鍛錬するか」

 

 楓とカナヲは同系統の呼吸を使用しているし、剣技の師はカナエだ。

 お互いに共通する物があると思うので、相手としては適任だろう。

 

「……うん」

 

 楓は、靴を脱いでからその場で一礼し道場に上がり、カナヲを対面に立ち、帯剣していた真剣を抜き構える。

 次いでカナヲも構え、お互いが加速し刀を打ち付け刀の鍔競り合い。力量が伴えば、これだけで相手の強さが解ってしまうのだ。

 

「強くなったな、カナヲ」

 

 カナヲの力量は、那田蜘蛛山で刀を合わせた時よりも増している。

 だがカナヲは、「うんん」と頭を左右に揺らす。

 

「……まだ、兄さんや姉さんたちには程遠いよ」

 

「いや、カナヲは十分強いぞ」

 

 まあ確かに、元柱、現柱、準柱、と比べてしまっては、カナヲがそう思ってしまっても仕方がないかも知れない。

 その前に、柱を基準にするのは些か無謀な気もするが。

 

 ――閑話休題。

 

 そして、無数の剣撃を打ち合う、楓とカナヲ。

 刀を弾き間合いを取ると、型を繰り出す。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 だが、加速して繰り出した一閃は刀の鍔競り合いになる。

 

 ――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。

 

 楓は刀を弾きその勢いで体を捻り、下から上へ刀を振るう。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 カナヲは周囲に自身を守る斬撃を放ち、楓の斬撃を受け止めると、ガキンッ、と甲高い金属音が響き、楓とカナヲは距離を取る。

 

「カナヲ、型を使っていく内に無駄な動きが混じってる。――鋭く、速く、そして体感を意識して剣技を繰り出すんだ」

 

「……は、はいっ!」

 

 楓とカナヲは道場の中を縦横無尽に動き、刀の合わせ金属音を響かせる。

 この攻防も、見る人が見れば高水準な剣技だ。

 

 ――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 カナヲが高速の九連撃を、腕、足、手の甲、と動きを止めることが出来る部位に放つが、楓は周囲に花の斬撃を放ち、九連撃を弾き落とす。

 だが先程とは違い、カナヲの無駄な動きが無くなり、剣技には鋭さが増している。

 

「その感覚を忘れるな。後、もし“徒の勺薬”から“乱舞一閃”に持ち込む場合は、踏み込みを忘れるなよ。これがあると無いとでは技の繋ぎがだいぶ違ってくる」

 

「……う、うんっ!」

 

 楓の言葉に、カナヲは嬉しそうに頷いた。

 ともあれ、楓が現在の(時間)を確認すると、約一時間剣を交えていた。なので楓が「終わりにするか」と言うと、カナヲが「……うん」と返答し、納刀する。

 

「そういえば、炭治郎たちの機能回復訓練の進行状況はどうだ?」

 

「……今、機能回復訓練に参加してるのは、炭治郎だけになってる。善逸と伊之助は不貞腐れて不参加」

 

 楓は「善逸と伊之助は、カナヲの強さに打ちのめされたんだろうなぁ」と内心で呟く。ちなみに、現在のカナヲの力量は、(きのえ)格の実力と見ていいだろう。

 でも、炭治郎たちが“全集中・常中”を会得出来れば、今の状況をから抜け出せる切っ掛けになるはずだ。

 

「そうか。でも、真菰たちが上手く焚き付けるだろ」

 

 きっと、真菰たちなら上手いこと誘導し、善逸と伊之助のやる気を引き出すはずだ。

 だから楓は、カナヲに指示を送る。

 

「カナヲ、機能回復訓練で絶対手を抜くなよ。――カナヲもその訓練の中で、自分の長所を磨き、短所を克服するんだ」

 

 「時間は有効活用しないとな」と言って、楓は笑う。

 カナヲは頷き、

 

「……任せて兄さん。私、絶対に負けないから」

 

 カナヲの瞳に、メラメラと炎が見えるのは気のせいだろうか。

 楓はぎこちなく「そ、そうか」と頷き、内心で「……もしかしたら、炭治郎たちは一勝も上げることはできないかもな」と、思うのだった。

 

「……ところで、兄さんは継子をとらないの?」

 

 カナヲが言う継子とは、柱が直接修行をつけ、自身の後継となる弟子を育成する制度だ。

 その稽古は厳しい物ばかりなので、逃げ出す隊士が後を絶えない。そして楓は、柱に就任してから一度も継子を取った経験が無い。

 

「……継子かぁ」

 

 楓は深く呟く。

 それに継子は、柱が見込みのある隊士を直接選別する。という仮定もあるのだ。

 カナヲはもじもじと体を動かし、

 

「……わ、私、桜柱の継子に立候補したいんだけど、ダメかなぁ」

 

 確かに、カナヲの呼吸は楓と同系統であり、剣技の力量も申し分ない。――継子の条件は満たしていると見ていいだろう。

 

「ダメじゃない、こっちからお願いするよ。――でも俺は、柱の任で教える時間が取れないかも知れない。それでも大丈夫か?」

 

「……う、うん。大丈夫だよ、兄さん」

 

 だが、楓が不在の場合でも、蝶屋敷にはカナエが居るので指導を受けることは可能である。ある意味カナヲは、楓とカナエの継子、とも言える。

 こうして楓の継子は、義妹のカナヲに決定したのだった。




元柱、現柱が鍛えたら、カナヲちゃんがかなり強くなる未来が見えるんだが。
てか、今までも楓君たちに鍛えられていたので、何も変わらないのでは。とも思ってしまいますね。

ではでは、次回(@^^)/~~~

追記。
カナヲちゃんと楓君の手合わせは、寸止めか武器落としで決着となってます。てか、真剣で手合わせとか恐怖ですね(-_-;)
力もセーブしていたので、道場は無事です。まあ、物が僅かに散乱してしまったんですが。
ちなみに、蝶屋敷と道場は分かれて作られていますね。

追々記。
カナヲちゃんの継子に関しては、今日が初めての話題になりましたね。それまでは、家族で教え合う、見たいなものでしたから。

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