鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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ご都合主義満載です。


上弦の参

 楓は加速し跳び込んだ各車内で、蠢く肉塊へ向かって刀を振るう。

 

 ――花の呼吸 五ノ型・改 徒の勺薬。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 ――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。

 

 技を放ち、ボタボタと肉塊を斬るが、すぐに車両に吸収されてしまう。

 その時、凄まじい断末魔が車両全体を揺らした。

 現在の魘夢の体は列車そのものだ。彼がのた打ち回ればその分、列車全体も跳ねるのだ。

 このままでは、列車が脱線して乗客の命が失われてしまう。なので、楓は車両の窓から外へ飛び出し、刀を振るう。

 

 ――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。

 

 楓が放ったのは、無数の桜の斬撃だ。

 桜の斬撃は前方車両(四両)の頭上に降り注ぎ、斬撃の重力で動きを停止させる。だが桜の無数の雨で、列車頭上のへこみ具合が凄まじい。

 後方四両も完全に動きを停止していた。どうやら、杏寿郎が停止させたようだ。

 楓が安堵の息を吐くと、前方から「炭治郎ぉぉおおっ!」と善逸の叫び声が届く。

 楓は納刀し、声が発した方向に走り出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楓が炭治郎のたちの元に到着すると、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら片膝を突けている善逸と、腹を抑えて片膝を突けている炭治郎の姿。

 炭治郎は、苦しそうにしながらも息を整えようとしている。

 

「楓さんんんっ!炭治郎のお腹から血が出てるよぉぉおっ!炭治郎、死んじゃうよおぉぉおッ!」

 

 楓は「いや、死にはしないから」と内心で呟きながら炭治郎の傷口を見ると、鋭利な物で刺されたのか血管が損傷している。それに呼吸を見る限り、炭治郎は“全集中・常中”を習得している。ちなみに伊之助は、炭治郎と善逸に頼まれ、一足先に乗客の避難に向かったそうだ。

 

「炭治郎。もっと集中して呼吸の精度を上げて、体の隅々まで神経を行き渡せろ。――破れた血管があるはずだ、そこを呼吸で止血するんだ」

 

 楓の言葉に、炭治郎はふぅと息を吐く。鋭い痛みの中呼吸を集中させ、無事止血することに成功したのだ。

 

「よくやった。取り敢えず止血は出来たが、激しい行動は厳禁だ。傷口が開く」

 

 楓の話を聞いた善逸は安堵の息を吐き、後方から現れた人影が大きな声を上げる。

 

「ふむ。竈門少年は、全集中・常中で止血ができるようだな、感心感心!常中は柱への第一歩だからな!柱までは、一万歩あるかも知れないがな!」

 

 炭治郎は「はい、頑張ります」と呟き、杏寿郎は言葉を続ける。

 

「それに呼吸を極まれば様々なことが出来るようになる。何でも出来るわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる!」

 

 また杏寿郎の話によると、後方車両(四両)の乗客は無事だ。

 楓も「前方は無事です」と返すと、杏寿郎は「うむ!」と頷く。

 

「皆無事だ!怪我人は大勢だが、命に別状は無い!竈門少年たちはもう無理はせず――」

 

 杏寿郎の言葉を遮るように、ドォン、と地面を抉る凄まじい衝撃音が響く。

 杏寿郎の数メートル前に着地したのは、右瞳に“上弦”、左瞳に“参”と刻んでいる鬼。――十二鬼月、上弦の参だ。

 上弦がどうしてここに?という疑問が上がるが、それ以上に、この場の圧迫感が凄まじい。

 そして上弦の参は、炭治郎たち目掛けて加速する。

 

 ――炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天。

 

 ――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。

 

 楓と杏寿郎は瞬時に抜剣し、型を繰り出す。

 杏寿郎は円を描くように炎の斬撃を、楓は下から上に描く花の斬撃を放ち、炭治郎たちに迫っていた上弦の参の両腕を切断し吹き飛ばした。

 上弦の参は、ズサァァ、と後退する。そして、両腕もすぐに再生させる。――さすが上弦と言うべきか、再生速度が異常だ。

 

「なぜ手負いの者から狙うのか、理解できない」

 

「話の邪魔になると思った。オレとお前たちの」

 

 そう言ってから上弦の参は、杏寿郎の問いに「なぜ当たり前のことを聞いた?」と疑問符を浮かべる。

 楓は刀を構え、口を開く。

 

「善逸。炭治郎を安全な場所に連れて、伊之助と共に残りの乗客の誘導を任せる。――俺と煉獄さんで、上弦の参を討つ」

 

「黄色い少年。上弦の参はオレと栗花落が討つので、乗客の避難は任せた!」

 

「……分かりました。煉獄さんも楓さんも、無茶はしないで下さい」

 

 善逸は頷き、炭治郎を背に乗せ立ち上がりこの場から離れて行こうとするが、上弦の参は地を踏み加速し、善逸に右手拳を振るう。

 そして楓は、左腰方向に刀を回す。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃――極。

 

 爆発的に楓は加速し、上弦の参の右腕を切断するが、直後に再生。

 楓は上弦の参を見据え、鋭い視線を送る。

 

「……お前の相手は、俺と煉獄さんだ。他所見するな」

 

 上弦の参は後退するが、杏寿郎が型を構える。

 

 ――炎の呼吸 壱ノ型 不知火。

 

 杏寿郎は一気に間合いを詰め上弦の参の頸を落とそうとするが、上弦の参はさらりと回避する。

 杏寿郎はその勢いに乗って加速し、楓の隣に立つ。

 

「……なぜお前たちは、弱者を庇う。――オレからしたら、弱者は見たら虫唾が走る」

 

 だから嫌いだと、上弦の参はそう呟く。

 

「やはり、オレたちと君は物事の価値基準が違うようだ」

 

 杏寿郎がそう呟くと、上弦の参はある提案をする。

 

「そうか。では、素晴らしい提案をしよう――お前たち、鬼にならないか?」

 

「ならない。オレは炎柱・煉獄杏寿郎だ」

 

「悪いが俺もお断りだ。俺は桜柱・栗花落楓だ」

 

 しかし、上弦の参の提案を、楓と杏寿郎は間髪入れず拒否。

 鬼になってしまっては、帰る場所に帰れなくなってしまう。

 

「オレは猗窩座――見れば解る、お前たちの強さ。その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い。しかし、なぜお前たちが至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう」

 

 猗窩座は、右手人差し指で楓と杏寿郎を差す。

 

「人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ。――だが鬼になれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる、強くなれる」

 

 杏寿郎は、猗窩座に鋭い視線を送る。

 

「老いることも、死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ、死ぬからこそ、堪らなく愛おしく尊いのだ。――強さというものは、肉体に対してのみ使う言葉ではない」

 

「そう、強さとは人の気持ちでもある。お前も人間だったころは、人の心を持ち(・・・・・・)誰かを愛したはずだ(・・・・・・・・・)。――猗窩座、その心はどこに置いてきた?」

 

 楓と杏寿郎がそう呟くと、猗窩座の額に青筋が浮かぶ。

 

「結論は見えている。――君とオレたちの価値基準が違う、如何なる場合も、オレと栗花落は鬼にはならない」

 

「…………そうか」

 

 猗窩座は落胆したように眉を下げるが、次第に不敵な笑みを浮かべる。

 猗窩座が型のような姿勢を作った途端に、空気の重圧が増した。――それは殺気。これから始まるのは、命を賭けた殺し合いだ。




次回、上弦の参(猗窩座)VS楓(桜柱)、杏寿郎(炎柱)、です。
でも、童磨さん(チート教祖)よりはマシな相手なのかなぁ。

てか、戦闘回上手く書けるか不安です……(-_-;)

ではでは、次回(@^^)/~~~

追記。
原作と違うのは、炭治郎が戦線を離脱してることですかね。

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