出立ちして早々に帰って来た炭治郎たちを蝶屋敷の面々は目を丸くして迎えた。
炭治郎や善逸、伊之助の怪我もそうだが、それ以上に、柱である楓、杏寿郎の満身創痍の姿を見た途端、蝶屋敷の面々の行動は迅速だった。各自が、病室の手配、治療器具の準備、応援の要請と動いたのだ。
診察をした結果、炭治郎は各部位(特に腹部)に殺傷、全身打撲。善逸と伊之助は全身打撲に各部位に殺傷。楓は、左腕、右足、右脇腹の肋骨を骨折、所々に血管損傷に殺傷。杏寿郎は、左目が潰れ、所々に血管損傷に殺傷、折れた肋骨が内臓に突き刺さり内蔵機能低下。
――柱二人の怪我の具合を見た蝶屋敷の面々は、内心で「……よくこの傷で生還できたな、柱ってやっぱり規格外」と思っていたらしい。
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二日眠り、ベットから上体を起こした楓は体中の激痛に顔を顰めた。鎮痛剤を投与しているのだが、それ以上の痛みが襲ったのだ。
その時、向日葵の刺繍が所々にあしらってある着物を身に纏った真菰が入室する。その側頭部には花柄のお面がつけられている。
「あ、起きたんだね、楓」
真菰はパタパタとベットの横まで歩み、そこにある椅子に腰を落とす。
「今さっきな。てか、もっと強い鎮痛剤ってないか?」
楓は「体中が激痛なんだが」と呟く。
だが真菰曰く「これ以上は副作用があるから無理かな。今も結構強い鎮痛剤を投与してるだよ」ということ。
楓は「そうか」と頷き、気になることを質問する。
「ところで、煉獄さんはどうしたんだ?」
「煉獄さんなら臨時柱合会議に参加しているよ、上弦の参の情報を提示してるはず」
杏寿郎は治療の後
杏寿郎は怪我が酷い中でも「うむ!この程度の怪我問題ない!オレより、栗花落の方が重傷なはずだ!」と言って、平気そうだったとか。でも、左目が潰れ内臓機能が低下したことにより、柱からは引退とのこと。
「煉獄さんもそうだけど、楓が無事で良かった……。運ばれた時、私、血の気が引いたんだからね」
「死んでもおかしくなかった怪我だったからな。まあ、上弦と対峙して命があっただけでも幸運だろ」
真菰は「それはそうだけど」と言って、若干顔を俯けていた。――でもそう、心配をかけてしまったのは間違えない。
楓も逆の立場だったら、同じように思っていただろう。
「俺の怪我だが、どれくらいで完治しそうだ?」
真菰が言うには、楓の主治医はカナエらしいので、カナエに聞いてみないと解らないとのことだ。でも、一ヵ月間は激しい運動は厳禁だろう。てか、柱の空席が二つになってしまったのは痛手だ。新たな柱を就任させると言っても、実力が伴わなくてはならないのだ。
楓は口を開く。
「なあ真菰。真菰が柱に推薦されたらどうする?」
真菰は目を丸くする。
「わ、私が柱!?む、無理無理!私、弱いし!?」
真菰は両手を前に出し左右に振る。
だが、真菰も柱の条件である「
楓の予想だが、
真菰が柱になった場合、蝶屋敷には元柱が一人、現柱が三人在住していることになる。……何て言うか、蝶屋敷は柱の巣窟なのだろうか?
真菰は「そういえば」と話題を変える。
「楓、上弦の参との戦闘で“乱舞一閃――終”を使ったでしょ」
「……使わない約束だったのにな、悪い」
真菰は左右に頭を振る。
「私は怒ってないよ。そこまで追い詰められたってことなんでしょ?」
楓は「そうだな」と頷く。
真菰は「
「そうだな。早く完成させるか」
「じゃあ、カナエもこの場に呼ぼう。早く完成させちゃおう」
真菰は「じゃあ、呼んで来るね」と言って、椅子から立ち上がり病室を後にした。
それから一刻が経過し、紫陽花の刺繍が所々にあしらってある着物を身に纏ったカナエと合流し、あれを完成させるのだった。
※ネタバレを含むので、スクロールは自己責任でお願いしますm(__)m
大正のコソコソ噂話。
楓、真菰、カナエが共同で創っている型は上弦の対策として、花の呼吸 漆ノ型になる新たな型であり、水・花を融合させた物でもある。ちなみに、カナエと真菰も使用可能な技でもあるんだ。