鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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お、お気に入りが1000件を超えた、だと……。よもや!よもや!(煉獄さん風)である。


遊郭
遊郭


 傷が完全に癒え、範囲地区の警備を終えた楓は蝶屋敷に帰路に着いていた。

 すると、楓の目の前に凄まじい速度で走って来た一人の男が立ち止まる。――その男とは、音柱・宇髄天元である。

 

「丁度いい。栗花落、お前も来い」

 

 天元は「警備が終わって、これから待機だろ」と続けるが、天元の言葉に主語が無い為、楓は疑問符を浮かべる。

 

「宇髄さん。俺を何処に連れて行く気ですか?」

 

 天元は、ニヤリと笑った。

 

「――――鬼の棲む遊郭だよ」

 

 ――遊郭とは、男と女の見えと欲、愛憎渦巻く街。

 夜になれば煌びやかな街通りとなり、遊女たちを目的に男性の足通りも増える。それに遊郭は、借金の返済で売られた幼い子供も居るのだ。そして、この街を鬼からしてみれば格好の餌場。そう、自身の好物となる餌が揃っているのだから。

 でも、それはそれ。これはこれ、である。

 

「……俺、色々な意味で死にたくないんで拒否してもいいですか?てか、宇髄さんが居れば十分じゃないですか」

 

「もしかしたら上弦の可能性もあんのよ。だから、柱一人と隊士だけじゃ不安だろ」

 

 楓は「……上弦」と呟き溜息を吐いた。

 

「……一緒に行きますよ。でも、真菰とカナエさんに鴉を飛ばしますけど、いいですか?」

 

「構わねぇぞ。嫁たちに伝えるのは当然だ」

 

 楓は「宇髄さんと任務に同行することになった。場所は――遊郭らしんだが、俺は絶対に遊んだりしないから。任務が終わったら、一直線に二人の元に帰る」という内容の手紙を二枚書き、鴉に手渡した。

 

「鴉さんよ。この手紙を、真菰とカナエさんに届けてくれ」

 

「承ッタ!楓、武運ヲ祈ル!」

 

 そう言ってから、楓の鴉は飛び立った。

 それから天元の元に走って来た、炭治郎、善逸、伊之助と合流し、途中にある藤の花の家紋の家に立ち寄る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~藤の花の家紋の家、二階部屋~

 

 この部屋に、炭治郎、善逸、伊之助、楓、天元は腰を下ろし、天元が口を開く。

 

「遊郭に潜入したら、まずオレの嫁を探せ。オレも、鬼の情報を探るから」

 

 お茶やお菓子を食べていた善逸が「とんでもねぇ話だ!」と声を上げる。

 

「ふざけないでいただきたい!自分の個人的な嫁探しに部下を使うとか!?」

 

「はあ!?何を勘違いしてやがる!」

 

「いいや言わせてもらおう!アンタ見たいに奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも!だがしかし!鬼殺隊員であるオレたちがアンタの嫁探しなんて!」

 

「馬ァ鹿かテメェ!オレの嫁が遊郭に潜入して、鬼の情報収集に励んでんだよ!定期連絡が途絶えたから、オレも行くんだっての!」

 

 天元の言葉を聞いた善逸は、体を硬直させた。

 そして、それから口を開く。

 

「そういう妄想してらっしゃるんでしょ?」

 

「クソガキが!――これが鴉経由で届いた手紙だ!」

 

 天元が、届いていた手紙を善逸に投げる。

 束で縛られている手紙の数は、かなりの分厚い。

 

「ギャアアァァアァ――!」

 

 手紙を当てられた善逸は、叫び声を上げた。

 

「随分多いですね。かなり長い期間潜入されているんですか?」

 

 炭治郎がそう聞くと、天元がさらりと口を開く。

 

「三人いるからな、嫁」

 

 天元の言葉を聞いた善逸は、目を丸くし血走せる。

 

「三人!?嫁……三人!?テメッ……テメェ!何で嫁三人もいんだよ!ざっけんなよ!」

 

 善逸の腹部を殴る天元。

 

「おごぇっ」

 

 善逸は声を上げる。

 そして天元は、楓を見ながら口を開く。

 

「つーか善逸、栗花落も嫁二人いるだろうが」

 

「……し、知ってるけれども!なぜか楓さんは責められないんだよ!」

 

 そう。楓、真菰、カナエは、善逸たちに分け隔て無く(階級関係無く)接しているのだ。

 だからなのかも知れない、善逸は楓を責められないのである。

 すると、炭治郎が口を開く。

 

「あの……手紙で、来る時は極力目立たぬようにと何度も念押ししてあるんですが、具体的にはどうするんですか?」

 

「そりゃまあ、変装よ。不本意だが地味にな。お前らにはあることをして潜入してもらう――あ、栗花落は女装で決まりな。お前、客として入れないだろ」

 

 楓は肩を落とす。解ってはいたが、精神的にクルものがあった。

 そう、楓は一度だけ単独潜入をしたことがあるのだ。その時は旅館の女将になり済ましていたが、男性客からの性的な悪戯が多々あったのだ。

 

「既に怪しい店は三つに絞ってあるから、お前らはオレの嫁を探して情報を得る。――ときと屋の「須磨」。荻本屋の「まきを」。京極屋の「雛鶴」だ」

 

「嫁、もう死んでんじゃねぇの?」

 

 伊之助がそう呟くと、天元の右手拳が腹部に突き刺さる。

 それから「ご入用の物をお持ち致しました」と言って、襖が開けられる。どうやら天元が、女装用の品を見繕うように頼んでいたらしい。

 ともあれ、各自が着物に着替え、再び集まる。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……楓さんですよね?」

 

「……えっと、楓さんは男性ですよね?」

 

 善逸、炭治郎は目を丸くして呟く。

 そう。現在の楓は、気品のある着物を身に纏い、薄っすらと化粧を施しているのだ。何処からどう見ても、育ちの良いお嬢様である。

 そして、天元が口を開く。

 

「へぇ、女装で変わるもんなんだな。栗花落、お前顔だけで飯を食っていけるんじゃねぇの。つーか、声質を変えることが可能って胡蝶姉に聞いたんだが、本当なのか?」

 

「――本当ですよ」

 

 再び目を丸くする炭治郎たち。

 その声は、鈴を転がしたような可憐な声だったからだ。まあこの声質は、カナエと真菰の教育で身に付いたものでもあるんだが。ちなみに、潜入する時の名前は、炭子、猪子、善子、楓だ。

 楓の名前は、何の捻りも入れなくても女の名前で通る。ということになったのだ。




大正のコソコソ噂話。
楓の女装は、真菰たちと並んでも違和感が無い程美人。まあその所為で、真菰とカナエに着せ替え人形になった経験があるんだよ。声質の事項は、潜入捜査の際に役に立つ。と言われたので習得したんだ。

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