「だーかーら、オレが配属された場所に鬼がいんだよ」
定期連絡の為、とある店の屋根の上に集まっていた伊之助が鬼の姿を催すが、正確要領が得ない。
「いや……うんそれは、あの……ちょっと待ってくれ」
「こうか!?これならわかるか!?」
「そろそろ、宇髄さんと善逸、楓さんが来ると思うから……」
対面に座っていた炭治郎が両手を突き出したが、伊之助は「こうなんだよ、オレにはわかってんだよ」と鬼の姿を催すが、炭治郎は「うんうん……」と頷いている。
「栗花落は来ると思うが、善逸は来ない」
天元は音も無く炭治郎たちの手前に現れる。
「……善逸が来ないって、どういうことですか?」
炭治郎が天元にそう聞くと、天元の隣に、ふわっと舞うように楓が姿を現す。
その姿は、薄く化粧を施し、相応な着物を纏い、蝶が刺繍されている羽織を羽織っている。――それは、ときと屋の
「――善逸と連絡が途絶えてるんだろう」
天元は楓を見てから「来たか」と手を上げた。
「何か掴めたか?」
「掴めた。と言えるか解りませんが、善逸の気配が地下からしたんです」
天元は「……何?」と怪訝な表情をする。――楓は
楓たちが善逸と連絡が途絶えたと解った時、楓は善逸の気配を探ったのだ。――そして楓は、善逸の気配を地下から掴み取った。だからこそ、この場に善逸が現れないことを解っていのだ。
楓は「でも」と眉を下げる。
「……捜索しようにも、地下は広過ぎてわからないんです」
楓の気配察知は大雑把な所までしか掴まない。こんなにも広い遊郭の敷地となれば、場所を特定するのは無理なのだ。
だが、連絡が途絶えた善逸の気配が今もするならば、捕まった人たちはまだ喰われてないかも知れない、とも採れるのだ。その中にはきっと、天元の嫁たちも含まれているに違いない。
天元は「……地下ねェ」と言ってから、
「鬼が
「あと、これは調べてわかったことなんですが、遊郭から姿を消しているのはほぼ花魁なんです」
そう。楓が過去から現在まで消息を絶った人物を調べた所――若い女性であり美人、身請け人の存在が見えた人たちが主なのだ。
楓はこのことを天元に話し「でも」と続けた。
「これもそこまでの確証が持てないんですけどね」
「いいや。そこまで解れば十分だ」
天元は、伊之助、炭治郎を見てから口を開く。
「――お前ら手を貸せ、遊郭の地下を調べんぞ」
「はいっ!」
「オレに指図すんなっ!」
炭治郎と伊之助がそう言ってから頷いた。
天元は楓に問いかける。
「んで、栗花落。これからお前はどうすんだ?」
「鯉夏花魁の傍に居ようと思います。実は今の条件に、鯉夏花魁は当て嵌まっているんですよ」
鯉夏は身請け人が決まったらしく、明日遊郭を出て行くのだ。きっと鬼は、それを易々と見逃さないだろう。
このことを天元に話すと「なるほどな」と頷く。
「鯉夏花魁を鬼が襲うのは今夜ってなるのか。鯉夏花魁は、護衛兼囮ってわけか」
「……そうですね。囮にしてしまうのは、申し訳ない気持ちになりますが」
「ま、いいんじゃねぇか。お前なら守り切るだろ。てか、オレも早く合流できるようにするからよ」
取り敢えず今後の予定は、天元、伊之助、炭治郎が
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
~ときと屋。鯉夏花魁の部屋~
この部屋には現在、二人の花魁が対面に座っている。
「これから遊郭は戦闘の場に様変わりします。鯉夏さんは戦闘が終わるまで、身を隠して下さい」
鯉夏は目を瞬かせる。
「楓。これから遊郭が殺し合いの広場に変わるってこと?」
「そんなところです」
楓と鯉夏は立ち上がった。
楓が「さ、早く。私は大丈夫ですから」と言って、「き、気をつけてね」と言った鯉夏を押入れに隠し、襖を閉めた。それから、楓は羽織で隠していた刀を右手で背から取り、左腰に吊り下げる。
そして一刻が経過した所で、部屋の襖が開かれる。そこに居たのは――蕨姫花魁の姿をした鬼だ。
「あら。あんたは、ときと屋の楓じゃない。鯉夏はどうしたのかしら?」
「鯉夏さんはこの場に居ませんわ。私が逃がしましたもの」
お淑やかに微笑む楓。――楓は花魁として、時間稼ぎに徹しているのだ。炭治郎たちが人々を避難させる時間は、一秒でも多い方が良い。
鬼の“堕姫”は「ふ~ん」と言いながら、楓が腰に吊り下げた刀を見る。
そして鬼の瞳に刻まれている数字は――上弦の陸。
「刀なんか持っちゃって、鯉夏を守る勇者気取りかしら」
「さあ。蕨姫花魁のご想像にお任せしますわ」
「……私を前にしてその余裕。あんた只者じゃないわね」
堕姫は自らの帯を、楓を四方から取り囲むように展開し、楓は右手でゆっくりと刀を引き抜く。
帯は手足のように蠢き、柱でもない限り防ぐのは不可能だろう。
「ふふ。私はただの人間、ですわよ」
左腕の着物袖を口許で抑え、楓はくすくすと笑う。
「あんたの態度、腹が立つわね 。今まで美しい女は喰ってきたけど、あんたは甚振り殺したくなるよ」
「あら、お褒めに預かり光栄ですわ。……でも、私を殺せます?」
堕姫の表情に変わりはない。――それもそうだ、小娘一人なら帯の一撃で殺せるのだから。
「……もう目触りよ。死んで頂戴」
堕姫は、楓を帯で四方から包み込むように取り囲む。
後は、帯の中で肉体を斬り刻むだけである。――斬り刻むことが出来るなら、であるが。
――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。
楓は周囲に花の斬撃を放ち、四方から取り囲んでいた帯を斬り裂く。
堕姫は楓が携える日輪刀の鍔の部分、『亞鬼滅殺』の文字を見て目を丸くする。
「あ、あんた!?鬼狩りの柱!?」
楓は、いつもの声質に戻す。
「まあな。それにしても、上弦の陸だとは驚きだ」
楓は「下弦だとずっと思ってた」と呟くが、堕姫はそれどころじゃない。
――そう、楓の性別が男性だった。ということが衝撃なのだ。
「あ、あんた!男だったのね!?」
堕姫の悲鳴に似た声が響き渡ったのだった。
気配感知(特定人物)ができるようになり、つよつよ(力量)を増す楓君。……まあでも、縁壱さんには遠く及ばないんですが(-_-;)
戦闘は隊服では無く、動きやすい今の着物で行いますね。まあ、上弦の場合は隊服は無意味だと思いますが。
ちなみに、声質は常に鈴の声でした。元に戻ったのは、堕姫と話した最後ら辺ですね。てか、堕姫が『亞鬼滅殺』の文字を確認したのは、帯が斬られてからですね。
大正のコソコソ噂話。
ときと屋の花魁に昇格した楓は、ときと屋の看板花魁として名を馳せたんだよ。なので、遊郭で調べ物をする際、役職を使って無理が通った経験があるんだ。ちなみに、花魁としての客捌きも見事にこなしてるよ。