妓夫太郎は鎌の
――花の呼吸 五ノ型・改 徒の勺薬。
楓が花の十八斬撃で鎌の斬撃を撃ち落とし、妓夫太郎に鋭い斬撃を与えようとするが凄まじい反射速度で交わされる。
「へぇ、今のを受け流すのかあ。お前いいなぁあ、甚振って殺してやりてぇなああ」
妓夫太郎は、楓に称賛の声を掛ける。
その隙に天元の斬撃が襲うが、妓夫太郎は携えている鎌で迎撃する。
「殺されるわけにはいかねぇんだよ。オレたちには待ってる人が居るんでな」
天元は「な、栗花落」と同意を求め、楓は「そうですね」と刀を構えて頷く。――楓には、真菰とカナエに伝えなくてはいけないことがあるのだ。
「大切な人かぁあ、お前ら羨ましいなあ。オレたちにはいねぇのになぁあ。死んでくれねぇかな」
妓夫太郎は鎌を振り下ろす。
――血気術 飛び血鎌。
妓夫太郎の放った血気術は、薄い刃のような血の無数の斬撃だ。
――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。
天元の前に躍り出た楓が、周囲に花の斬撃を放ち相殺させるが、血鎌の数が異常だ。全てを相殺させることが出来ない。
――音の呼吸 肆ノ型 響斬無間。
天元は楓と変わるように前に出て、前方広範囲に鎖で繋がった日輪刀を振り回し爆発を起こし、楓が相殺しきれなかった鎌を撃ち落とす。
――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。
――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。
――音の呼吸 肆ノ型 響斬無間。
楓が刀を振るい、この場に桜の斬撃を降り注ぐ。
自身の頭上に降る桜は、周囲を舞う花の斬撃と天元が振るう日輪刀が爆発を起こし、全て撃ち落とす。
この捨て身とも言える攻撃に妓夫太郎たちは対応できないと踏んでいたが、煙が晴れるとそこには帯が舞うだけだ。その後方には、妓夫太郎の背に乗る堕姫。
「……さすが上弦、一筋縄じゃいかねぇよな」
「……ですね。通常の鬼に比べると強さが異常です」
先程の攻撃ならば、下弦の鬼ならば対応が出来ず、直後に頸を落とせたはずの攻撃だったのだ。
「それよりも宇髄さん。あの鬼はきっと二人で一つです」
楓が静かにそう呟くと、天元は「ああ」と頷く。
天元は、楓が言わんとすることを理解したのだ。
「オレもド派手に同意する。……問題は、どうやって同時に頸を落とすだが」
楓と天元の予想だが、妓夫太郎を柱一人で抑え込むのは難しい。そう、堕姫は誰かに任せるしかないのだ。
一刻が経過した所で楓たちの走り寄ったのは、炭治郎、善逸(寝ている)、伊之助だ。
「宇髄さん、楓さん!大丈夫ですか!?」
「グハハハ!オレ様が来たからには百人力だぜっ!」
「オレたちもの出来ることがある筈です」
上から、炭治郎、伊之助、善逸である。
前までの楓なら任せるのは不安だったが、炭治郎たちは楓の地獄に稽古に血反吐を吐きながら着いて来たのだ。
「炭治郎、伊之助、善逸で、女の鬼を任せる」
「ド派手に期待してるぜ。――同時に頸を刎ねるぞ」
「はいっ!」
「グハハハ!オレ様にかかれば、そんなこと簡単過ぎて欠伸が出るぜっ!」
「任せてください」
すると、妓夫太郎が「ククク」と笑う。
「お前らがそれに気付いてもなあぁあ、結局死んでいくだけなんだよなあ」
天元が「はッ!」と鼻で笑う。
「こいつら三人共、優秀なオレたちの継子だ!逃げねぇし根性がある、手足が千切れても喰らいつくぜ!――栗花落も何か言ってやれ!」
楓は「そこで振るの」と内心で呟いてから溜息を吐く。
「きちんと成仏しろよ?でいいか」
青筋が浮かぶ、妓夫太郎と堕姫。
「ああうぜぇなあ!気に食わねぇなあ!妹を泣かせたクソ野郎は死んでくれやあ!」
「お前ら絶対に殺してやるっ!」
先手を打ったのは天元だ。
天元は右手に持っていた爆薬を妓夫太郎たちに投げ、鎖で繋がれた日輪刀をぶつけ爆発を起こし、堕姫と妓夫太郎を分断させて距離を取らせる。
そして、善逸が型を取っていた。
――雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・六連。
善逸は技を繰り出し、堕姫を押し上げるように動き、堕姫を引き連れて近場の屋根の上まで移動する。
炭治郎、伊之助もそれに続き――この場に残ったのは、妓夫太郎、楓、天元だけになる。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
楓と天元は妓夫太郎の頸を飛ばす為剣技を繰り出しているが、妓夫太郎の動きは
屋根上で戦っている堕姫と炭治郎たちも、堕姫の進化に苦戦してるようだ。――ここからが、上弦の陸の本領、といった所だろうか。
「お前ら違うなぁ、今まで殺してきた柱と違う。お前らは生まれた時から特別な奴だったんだろうなぁ。妬ましいなぁ、一刻も早く死んでもらいてぇなぁ」
「……オレに才能。――ハッ!オレに才能なんてもんがあるように見えるか?オレ程度でそう見えるならテメェの人生幸せだな。何百年生きていようが、こんな所に閉じこもってりゃ世間知らずのままでも仕方ねぇのか。この世界は広いんだぜ、凄ぇ奴がウヨウヨしてる。得体のしれねぇ奴、刀握って二月で柱になるような奴もいる。オレが選ばれてる?ふざけんじゃねぇ。オレの手の平から今までどれだけの命が零れ落ちたと思ってんだ」
「……悪いが俺も才能なんてもんはない。俺は努力することでしか力を付けられない人間だぞ。そんな奴が才能?――いやいやある訳ない。今の俺が柱に就任出来たのも、皆の力があってこそだ。俺は恩人に拾われるまで、何所ぞに転がっていた普通の人間だぞ」
楓と天元の言葉に、妓夫太郎は唸る。
「……ぐぬぅう。だったらどう説明する。お前たちがまだ死んでいない理由は何だ?オレの血鎌には猛毒があるのに、いつまで経ってもお前らは死なねぇじゃねぇかオイ!」
「オレは忍びの家系なんだよ。耐性つけてるから、毒は効かねぇ」
「俺の場合は家族に毒に詳しい人がいてな、
ギョと目を見開く天元。
一日耐毒訓練など拷問以外に考えられない。――楓は毒の耐性を身に付ける為に、しのぶに毒を仕込んで貰った経験があるのだ。
「……そうかあ。お前らのそのねぇ才能は、オレが取り立ててやるから心配すんなあ」
話は終わりだ。と言う風に、楓と天元、妓夫太郎の鎌がぶつかり合い火花を散らす。
そしてこの瞬間、屋上で戦っていた堕姫の頸が落される。――今この瞬間に妓夫太郎の頸を落とせば、鬼殺隊の勝利だ。
――音の呼吸 五ノ型 鳴弦奏々。
――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。
天元は鎖の日輪刀を振り回し爆発を起こしながら突進し、楓はその爆風に紛れ込み下から上に斬り上げる花の斬撃で妓夫太郎の
――血気術 跋孤跳梁。
――血気術 円斬旋回・飛び血鎌。
妓夫太郎は血鎌で天蓋を形成して楓たちごと後方に弾き、妓夫太郎は両腕から血鎌が螺旋状に回転し、広範囲に繰り出される。――だが、楓は待っていたのだ。このような強力な技、堕姫の頸を落とす瞬間を。そして、今までの戦闘を分析すると、血鎌の血気術を放てば反動があり、僅かに妓夫太郎は硬直するという情報も得ているのだ。
もし上弦でも、自身の
――花の呼吸 陸ノ型 渦桃。
楓は空中で花の斬撃を空に放ち、その反動で体勢を整える。
そして血鎌が四方から、天元、楓に襲い掛かるが、
――花の呼吸
型を繰り出すと、楓と天元を包むように
血鎌は周囲に反射され、血鎌が反射された場所は抉れ、妓夫太郎自身も血鎌が全身に直撃。そして血鎌は、妓夫太郎を斬り刻む。
「ぐおぉォおお――!」
そう呻きながら、妓夫太郎は血鎌の斬撃を浴び続ける。
血鎌の斬撃が終えると、妓夫太郎は四肢を欠損させ、残るは欠損させた体に繋がる頸だけだ。
そして、着地した楓は刀を構え走り出す。
――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。
下から上に描く花の斬撃で、楓が妓夫太郎の頸を空高く刎ね飛ばした。
祭りの神は片目と片腕を失いませんでしたので、柱続行です。
楓君たちは毒の耐性がありますが、徐々に蝕んでる状況なんですよね。
てか、上弦の陸を致命傷なしで討伐するとか、楓(炭治郎たち)強くなり過ぎですね(^_^;)
大正のコソコソ噂話。
楓、カナエ、真菰が創った漆ノ型は上弦対策の剣技であり、特に童磨さん(チート教祖)対策として創り上げた剣技。そして、鬼にとっては初見殺しの技。
技のデメリットとしては、共闘では使い勝手が悪い。クールタイムが存在するので連発が不可って所。
条件として“透き通る世界”に入っていないといけない、ってものあったりする。
ちなみに使用できるのは、今の所楓だけ、でも条件を満たせば、真菰、カナエも使用可能。
楓が使用できる剣技はこれだけでは無く、鱗滝に頼み享受して貰った“水の呼吸 五ノ型 千天の慈雨”も使用可能。