鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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お帰り

 上弦の陸の討伐を終え、楓は一直線に蝶屋敷に帰路に着いた。

 部屋に入り、帰りを待っていてくれたのは、向日葵の刺繍を基調にした真菰と、紫陽花の刺繍を基調にしたカナエだ。

 楓は「お帰りなさい」と言ってもらえると思っていたのだが、真菰とカナエの一声は「可愛くなったね、楓」だ。まあ確かに、花魁姿の楓は、男性の10人中8人が振り向くと思われる容姿だ。

 ともあれ、楓は部屋に入り刀を立て掛ける。

 

「上弦の陸討伐、お疲れ様」

 

「怪我、大丈夫かしら?」

 

 対面に立つ真菰とカナエが、楓を覗き込むように見る。――見た所、楓の外傷は切り傷だけなんだが。

 

「何とかな。でも、刀の反動が気になるな」

 

 楓が“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”を使用したと伝えると、真菰とカナエは目を丸くする。――下級の鬼に試す前に、上弦と戦闘で実戦投入したからだ。未だに、“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”は未知な部分が多いのだ。

 

「そっかぁ。それじゃあ、近い内に刀鍛冶の里に赴くんだね」

 

「でも、丁度良いんじゃないかしら。刀も、自身の整備じゃ不安があったんでしょう?」

 

 「まあな」と頷く楓。

 そんな中、楓は嫌ぁな予感がした。真菰とカナエが、じっと楓を見ていたのだ。こういう時は、楓にとっては不安事でしか無い。

 

「今度、私たちと楓で街に行って見ない。もちろん――楓は女装して」

 

「いいわね。その時は、うんとおめかしをしましょう。――楓には、女性の声質に変えて貰いましょう」

 

「……それって露見したら、俺の人生詰むよね」

 

 柱たち(しのぶは除く)に露見したら、柱合会議が楓に取って拷問場所に成り変わるだろう。……柱たちの視線が恐怖でしかない。

 

「……ダメ、かな」

 

「……楓、お願い」

 

 真菰とカナエの、目許に涙を溜めた(うるうる)上目遣いに楓は「うっ」と口籠る。

 そう。楓は一度も、真菰とカナエの上目遣いのお願いを断ったことが無い――いや、断れない。が正しいのかも知れない。

 

「わ、わかった。今度の非番の日を合わせて街に行こう。――も、もちろん、俺は女装で…………いいよ」

 

 楓は最後に葛藤が合ったのだが、真菰とカナエのお願いを断ることはしなかった。

 それから、真菰たちが温めてくれた夜食を食べ、楓は風呂に入ることになったのだが「三人で入りましょう」ということになり、三人で風呂に入り、就寝の支度をし眠りに就くのだったが――、

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~翌朝。とある部屋~

 

 翌朝になり、楓は仰向けの体勢で、襖越しの陽の光を浴び両目を両手で擦り開く。

 首を左右に動かすと、着ていた服が乱雑に周りに散らばっていて、生まれたままの姿(・・・・・・・・)で布団を被り、横になり眠る真菰とカナエの姿が映った。

 楓が一刻程考え込むと、徐々に顔が熱を持つ。

 

「(――理性が溶けたんだっけな)」

 

 楓は内心でそう呟きながら頭を抱える。

 でも、美女二人と共に居るだけでも理性を保つのを苦労するのに、艶麗(えんれい)な誘いを断れる男の方が珍しい。

 すると、右手で右目を擦りながら真菰が目を開け、楓は横向けになり真菰を見る。

 

「楓。おはよう」

 

「おはよう、真菰」

 

「カナエは?」

 

「まだ寝てるな」

 

 真菰は「そっか」と頷く。

 そうしてから、楓は逆横向けになり、真菰は眠っているカナエの寝顔を見る。

 その表情は幼い子のようだ。起きている時は、お姉さん。という感じなので、カナエの寝顔は新鮮に見える。

 楓は悪戯心が湧いたのか、カナエを起こさないように頬をつんつんと突く。

 その時カナエが「んん」と呟き、うっすらと両目を開ける。

 

「起しちゃったか?」

 

「……うんん。実は、少し前に起きていたの」

 

 カナエは最初に起きていたのだが、時間も早かったのもあり、二度寝をしてしまったそうだ。

 

「そういえば、昨日お館様の鴉が楓の元に来たらしいけど、どうかしたの?」

 

 楓は「ああ、そのことか」と言ってから頷いた。

 そう。昨日就寝する前に楓に指令が下ったんのだが、その内容は「多々渡る上弦遭遇、上弦討伐、多忙な柱業務に任務。――さすがの私も見逃す訳にはいかなくなった。楓はこれから一週間体を休めなさい。産屋敷耀哉」と簡素な文だが、優しい命令文のようだったのだ。

 このことを話すと、カナエと真菰は「妥当な判断だね」と呟き頷いた。――楓は働き過ぎなのだ。体を休めないといつか壊れてしまう。

 

「じゃあ、今日街に行こうよ」

 

「そうね。そうしましょうか」

 

「……それって、俺が女装して。なんだよね?」

 

 真菰とカナエは「そうだよ」と言ってから頷く。

 楓が、着物等はどうするのか聞いた所、着物は真菰の花柄の着物であり、化粧を施すのは真菰とカナエだということ。

 楓は「な、何とかなるだろ」と内心で呟く。

 

「じゃあ、そろそろ起きるか?」

 

「そうなんだけど。実は腰が痛くて……」

 

「真菰ちゃんもそうなのね。実は私もなの……」

 

「……ごめんなさい」

 

 楓は小さな声で呟く。

 真菰とカナエは「ふふ」と笑う。

 

「怒ってないよ。私たちが沢山愛をちょうだい。って言った結果なんだし」

 

 真菰がそう言って、カナエも「そうね」と同意する。

 それから真菰とカナエは、楓に身を寄せる。……楓にとっては肌が直に当たるので心臓に悪いんだが。

 

「もう少ししたら起きましょう。それまではこのままで」

 

「そうだね、そうしよっか」

 

 カナエと真菰の言葉を聞き、楓が「これって生殺しだよねっ!」と内心で叫んだのは当然だった。

 それから一刻が経過し、楓たちは布団から起き衣服を纏い、部屋を出てから風呂に入って昼食を摂りに向かうのだった。




楓、マジで羨ましいです(血涙)書いてて、かなり嫉妬しました、ええ。
てか楓っ!カナエさんと真菰ちゃんのことを幸せにするんだぞ!

だからなんですけど、痣の件はどうしようかなぁ。と迷ってます。
でも楓には、透き通る世界、チート剣技(たぶん)+終ノ型(桜)があるし、痣無しでもいけんじゃね。と思っている作者でもありますが。

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