刀鍛冶の里
楓が女装をして祭りに赴いた数日後、楓は隠の人々の案内で刀鍛冶の里に移動していた。
そして、刀鍛冶の里の場所は誰も知らない。鬼に襲撃されるのを防ぐ為だ。その上、道順の鴉も隠の人々も頻繁に変更するのだ。
「桜柱様。到着しました」
楓が隠の背から下り地面に降り立つと、隠の人が目隠しを取る。
そこは森林に囲まれ、周囲には立派な木製の家が点在している。
「あちらを左に曲がった先が長の家です」
「わかった」
楓はそう言ってから頷いた。
まずは、責任者に挨拶である。
「私はこれで失礼します」
「案内お疲れさん」
「いえ、柱の方を案内できて光栄でした」
隠の人は「ごゆっくり」と言ってから、ペコリと一礼してこの場を後にした。
楓が長の宿に向かい為に歩いていると、箱を背負った少年を見つける。――上弦の陸を一緒に討伐した、竈門炭治郎だ。
「あ、楓さん。楓さんも、刀の破損を?」
炭治郎は、楓の隣まで歩み寄り呟く。
ちなみに、炭治郎が刀鍛冶の里に赴いた理由は、ヒノカミ神楽の連発で刃毀れしてしまったのだ。
「刀の
炭治郎が「
「新たな型、ですか。凄いですね」
「そうか?まあ、俺だけで創ったものじゃないんだけどな」
――“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”は、楓、真菰、カナエが共同で創った剣技。謂わば、愛の結晶ってやつである。
「今度、その剣技を見てみたいですっ!」
炭治郎は、目をキラキラと輝かせる。
だが“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”は技を反射させる剣技なんで、剣技を繰り出しても、楓の周囲に花の残像と水鏡が浮かび上がるだけだ。
ともあれ、楓は両腕を組む。
「見せるのは構わないんだけど、効果が反射だからなぁ」
「それでも構いませんっ!――それじゃあ、オレのヒノカミ神楽も反射することは可能なんですか?」
「できると思うぞ。“鏡花水月”は
“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”は例外無く全ての攻撃を反射するので、鬼にとっては初見殺しの技なのだ。――ということは、上弦の弐にとっても有効な技、とも言える。――楓は少なからず、上弦の弐と因縁があるのだから
そう話していたら、長が滞在すると思われる家に到着し、長の元へ向かうのだった。
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「どうもコンニチワ。ワシは、この里の長の鉄地河原鉄珍。よろぴく」
炭治郎、楓が正座している対面の座布団の上に座っているのは、ひょっとこのお面をつけた鉄珍と、その側近二人である。ちなみに、鉄珍は小さく子供のようだ。
「里で一番小さくって一番偉いのワシ。まあ畳におでこつくくらいに頭下げたってや。――あ、桜柱はいいで、ワシと対等な立場やから」
「竈門炭治郎です!よろしくお願いします!」
炭治郎は、畳におでこをつける勢いで頭を下げる、その間、ゴンっ、と音が鳴るものの。石頭の炭治郎は全然痛くなさそうだ。
「桜柱の栗花落楓です。よろしくお願いします」
楓は小さく頭を下げる。
「まあええ子たちやな。おいで、かりんとうをあげよう」
「ありがとうございます!」
炭治郎は、鉄珍から渡された深皿に入っているかりんとうを右手を使い口に運んで咀嚼するが、楓は「俺のことはお構いなく」と言って、やんわり断る。
話を聞く所、炭治郎の担当鍛冶職人――鋼鐵塚蛍が現在は行方不明であり、炭治郎の刀の研磨はすぐに取り掛かれないらしい。
「あの子は小さい時からあんなふうや。すーぐ癇癪起こしてどっかに行きよる。すまんの」
「いえいえそんな!オレがすぐに刃毀れさせたりするからで」
「いや違う。――そのような鈍を作ったあの子が悪いのや」
鉄珍の威圧が、炭治郎の背筋を凍らせた。
その後炭治郎は、体の疲れを癒す為に鉄珍に温泉を薦められて、一足先にこの場を後にした。
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「桜柱。鉄穴森は違う鬼狩りの刀を打ってる為、この場にいないんや」
「そうですか。でも、時間はあるので急がなくても大丈夫ですよ」
鉄珍は「すまんの」と言ってから、楓の刀の状態を聞く。
なので、楓が“漆ノ型”の反動がないか?と伝えたら、鉄珍が息を呑む仕草を感じた。
「その若さで新たな型を創るとわのぉ。ワシ、驚きじゃ」
鉄珍が言うには、鉄穴森の作業が終わり次第確認させるから、日輪刀を預かりたいということだった。なので、楓は腰に下げている日輪刀を鉄珍に渡す。その間は、鉄珍が貸してくれた日輪刀が代用品である。
受け取り鞘から刀を抜くと、その代用品になる日輪刀も、楓が使用していた日輪刀と遜色ない日輪刀である。
「日輪刀の整備が完了するまで、桜柱はそれを使って頂けるか」
「わかりました。では、整備をお願いします」
「ウム。任せてね」
楓は立ち上がってから刀を腰に差し、鉄珍に一礼してから長の家を後にしたのだった。
花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月は、チート剣技に昇格しそうです(笑)