刀鍛冶の里に赴いてから数日が経過し、現在楓の部屋には、炭治郎、無一郎、楓が集まっていた。
その間炭治郎は、刀鍛冶の里に存在する“縁壱零式”という絡繰人形を使い鍛錬をしていたそうだ。何でも、腕を六本装着しないと“縁壱”という剣士の剣技の再現が出来ないとか。
しかし、戦国時代から使用されている“縁壱零式”は老朽化が進んでいて、炭治郎の鍛錬を最後に壊れたそうだ。
――炭治郎が頭部を破壊すると、そこからは三百年前に使用されていたと思われる刀が埋め込まれていて、それを鋼鐵塚が現在研磨しているらしい。
「で、何で俺の部屋にいるの?」
胡坐で座る楓が、対面に座る炭治郎たちにそう聞いた。
「桜柱は鉄穴森っていう鍛冶屋に刀を打って貰ってるんでしょう?なら、場所もわかると思って」
無一郎が、ボーっとさせながらそう呟く。
すると、炭治郎が口を開く。
「鉄穴森さんなら、多分、鋼鐵塚さんと一緒にいるんじゃないかな?」
炭治郎は「一緒に探そうか?」と、無一郎に提案する。
確か炭治郎は、絡繰人形の頭部から現れた刀を筋骨隆々で姿で戻って来た鋼鐵塚に渡したのだ。鋼鐵塚は「鋼鐵塚家に代々伝わる研磨術で刀を研ぐ」と言って、共に居た鉄穴森と一緒に何処かに姿を消した筈だ。
――そして無一郎は疑問に思う。炭治郎はお節介が過ぎるのではないか、と。
「……何で君は、そんなに人を構うの?君には君のやるべきことがあるんじゃないの?」
「――人の為にすることは結局、巡り巡って自分の為にもなってるものだから。結局の所、オレの為でもあるんだよ」
無一郎は炭治郎の言葉を聞いて、目を丸くする。
「……何?今何て言ったの?今、今……?」
「へ?自分の為になるって」
「ウー!」
炭治郎の両膝の上で眠っていた禰豆子が目を覚まし、頭を上げると同時に、ゴンッと炭治郎の顎に直撃する。
「禰豆子!起きたか―」
無一郎は首を傾げる。
「うーん。その子何か、凄く不思議な生き物だなぁ」
「えっ、変?」
「うん、凄く変だよ。何だろう、上手く言えない」
その時楓が、隣に置いてある刀を取り抜刀し戦闘態勢に入る。
その表情は厳しいものだ。
「……お喋りはそこまでだ。――敵が来てる」
炭治郎、無一郎は「え?」と眉を寄せ、刀を抜き戦闘態勢に入る。
そして、襖を開けてぬらりと入って来たのは涙を流した鬼だ。――そして、ここまで気配の消せるとすれば、間違えなく上弦と判断出来る。
――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃――極。
楓が加速して放った一閃は鬼が飛び上がり天井に張り付く。鬼には、頸に切れ筋を入れただけだ。
――ヒノカミ神楽 陽華突。
炭治郎が刀を突き上げると、鬼は素早い動きで床に落ちる。
――霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り。
無一郎が滑り込むように繰り出した斬撃が鬼の頸を飛ばすと、頸から一体、体が再生するように一体の鬼を形作る。そして、前方の鬼が草の団扇を振り上げる。
危機感を感じ取った無一郎が刀を振り上げて鬼に向かうも、その寸前で草の団扇が煽られ、回りの障害物を破壊し、楓と無一郎は外へ飛ばされる。
「楓さんっ!時透君っ!」
家に残された炭治郎、禰豆子は、禰豆子が半壊した家の壁にしがみつき、炭治郎の左手を掴み襲ってくる暴風で吹き飛ばされることはなかった。
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暴風に飛ばされた楓と無一郎は、地面に落ちる空中で一回転し地面に着地する。そして、飛ばされた家からここまでの距離はかなりある。
早く里に戻り、鉄珍の安全を確保しなければいけない。里での最高技術者の損失は、鬼殺隊にとっても刀鍛冶の里にとっても大打撃に成りかねない。
里に戻る途中で無一郎と楓は、血気術で創られた金魚の化け物と、縦横無尽に刀を振る回す少年が目に入った。
「……ねぇ桜柱。君は、里の長の命を優先して、僕はちょっと野暮用ができたから」
「……わかった。死ぬなよ、霞柱」
そう言ってから、無一郎は少年の元に、楓は里へ向かって飛ぶ。
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楓が里に到着すると、街の道中では、大量の金魚の姿をした化け物が里の者たちを襲っていた。
里の者たちは槍や刀で対抗しているが、化け物との戦力差は明らかだ。
――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。
――花の呼吸 五ノ型・改 徒の勺薬。
――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。
楓が加速し放った一閃で一体の
そして、飛び上がりながら前方に桜の雨を降らせ、後方にまで届かなかった
――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。
着地した直後に跳び掛かって来た化け物は、下から上に斬り上げ描かれる花の斬撃で壺を破壊し滅する。回りを見渡した所、今の化け物で最後だ。
なので楓は、里の者の感謝の声を背に、長の元まで走り向ける。
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楓が長の宿に到着すると、長は金魚の化け物に体を掴まれ持ち上げられていた。
息はあるようだが、このままでは死に至る。
――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃――極。
――恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき。
楓が一閃と刃の斬撃が壺を破壊する。
楓がその人物の着地点を見ると、そこには隊服姿の恋柱・甘露寺蜜璃が長細い刀をしならせている。
「鉄珍様っ!」
蜜璃は刀を投げ捨て鉄珍を受け止める。
「若くて可愛い娘に抱きしめられて何だか幸せ……」
声は掠れていたが、命には別状はないようだ。
それを見ていた楓は、溜息を吐き納刀するのだった。
楓君が上弦戦に参加は、次回になりそうですね。