鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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ご都合主義満載です。


正と悪

「弱き者を甚振る鬼蓄……不快、不愉快、極めり」

 

 六体目。否、喜怒哀楽が一つになり「憎」の文字が書かれた五つの太鼓を輪のようにして背負い、象の牙の形状の棒を持った、雷神のような小さい姿。

 憎珀天が木の龍を生み出し、半天狗を守るように囲む。そして、憎珀天が棒で太鼓を叩くと、半天狗を木で包み込む。

 

「――待て!」

 

 炭治郎が半天狗にそう言うと、憎珀天が睨み付ける。

 それは息が詰まる威圧感だ。

 

「――何ぞ?貴様、儂のすることに不満でもあるのか?のう、悪人共めら」

 

「……どうして、オレたちが悪人……なんだ?」

 

 憎珀天は右手を握り拳を作る。

 

「弱き者を甚振るからよ。先程貴様らは、手のひらに乗るような小さく弱き者を斬ろうとした。何と言う極悪非道、これはもう鬼蓄の所業だ」

 

「小さく弱き者……誰がだ」

 

 炭治郎の額に青筋が浮かぶ。

 

「――ふざけるな。お前たちの匂い……血の匂い!喰った数は百や二百じゃないだろう!その人たちが何をした?その全員が命をもって償わなければならないことをしたのか!?」

 

 炭治郎は再び刀を構える。

 

「大勢の人を殺して喰っておいて、被害者ぶるのはやめろ!捻じ曲がった性根だ!絶対許さない!……悪鬼め!お前の頸はオレが斬る!」

 

 その時、ふわりと空から舞い立った楓が、炭治郎の隣に着地する。

 そして刀を抜き、憎珀天に向けて構える。

 

「そうだな。お前は来世でやり直せ」

 

 憎珀天は、ピクっと片眉を上げる。

 

「……柱か」

 

「まあな。桜柱・栗花落楓だ。――ああ、覚えなくてもいいぞ。お前はここで滅されるんだし」

 

 楓の挑発に、憎珀天は青筋を浮かべ怒りに表情を浮かべる。

 

「……貴様、必ず殺す」

 

「殺せるならな」

 

 その時、空から蜜璃の声が届き、楓の隣に着地する。

 

「楓君早すぎだからねっ!」

 

 そう抗議しながら、蜜璃はぷんすかと頬を膨らませる。

 ――そう。楓は足の負担にはならないように、“乱舞一閃”を連発してこの場まで急行したのだ。そして蜜璃は、その速度に着いて行けずに遅れたのだ。

 蜜璃は憎珀天に目に向けると、目を輝かせる。

 

「キャー!何あの子!?幼い子鬼さん!?」

 

「いや、鬼ですから。――上弦の肆です」

 

 楓が蜜璃に、先程確認した数字を伝える。

 

「じょ、上弦!?あんなに幼い子が!?」

 

 蜜璃は目を丸くする。

 

「……鬼に見た目は関係無いでしょう?」

 

 楓の言葉に蜜璃はハッとする。

 

「そ、そうね。鬼に見た目は関係ないものね。よーし、お姉さん頑張っちゃうぞ!」

 

 蜜璃は日輪刀をギュッと握る。

 ……何て言うか、命を賭けている戦いなのに空気がふわふわし過ぎである。

 

「……黙れ、あばずれが」

 

 ――血気術 狂鳴雷殺。

 

「あ、あば……お姉さん傷ついたんだから!」

 

 ――恋の呼吸 参ノ型 恋猫しぐれ。

 

 蜜璃は迫り来る攻撃自体を斬り防ぐ。

 この時、楓が炭治郎に合図をする。

 

「(炭治郎。奴は俺と甘露寺さんの任せて、本体の頸を刎ねろ。多分だが、あいつは囮見たいなもんだろう?)」

 

「(……はい、奴は頸を刎ねても死にません。オレたちは本体の頸を刎ねますので、この場はお任せします)」

 

 これ会話が終わり、炭治郎、禰豆子、玄弥は半天狗本体を追い、楓と蜜璃は憎珀天を抑えることになったのだ。――憎珀天がチッと舌打ちをし、炭治郎たちに放った攻撃は、蜜璃の刃が斬り裂く。

 そして、楓が憎珀天の懐に飛び込もうとするが、憎珀天が棒で太鼓を叩くと団扇のような形をしたクレーターが出来、楓を地に押し付ける。

 だが甘い、この程度で柱が殺される筈が無い。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 楓が周囲に放った花の斬撃が、楓を守る刃となり憎珀天の攻撃を凌ぐ。

 

「(柱となれば、今の攻撃は通用せんか……――ならば、一掃するのみ)」

 

 ――血気術 無間業樹。

 

 地面から大量の木で作られた龍が現れ、楓、蜜璃を襲う。

 

 ――花の呼吸 五ノ型・改 徒の勺薬。

 

 ――恋の呼吸 五ノ型 揺らめく恋情・乱れ爪。

 

 楓は自身に迫る龍を花の十八連撃で撃ち落とし、蜜璃は龍を斬り刻みながら憎珀天に迫る。

 そして、自身のしなやかな刀を憎珀天に巻き付け切断しようとした瞬間、憎珀天は口を開き、楓が叫ぶ。

 

「甘露寺さん!そいつは本体じゃないんだ!」

 

 楓は「あの時情報が伝えられていれば」と内心で呟くが、後の祭りである。

 まあ確かに、蜜璃は技を放った直後だったので、仕方無いと言ってしまったらそこまでなんだが。

 

「(えっ!やだホントに!?判断間違えちゃ……)」

 

 憎珀天はニヤリと笑う。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃――極。

 

 楓はその場から加速し、蜜璃の目の前で停止する。

 そして楓は刀を構える。

 

 ――血気術 狂圧鳴波。

 

 ――花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月。

 

 憎珀天は口から無数の雷撃のような攻撃を放つが、楓の周囲には花の残像が現れ、それが水鏡を作り、技を反射させる。

 楓の予想では、この攻撃が直撃すれば本体では無い憎珀天は死にはしないだろうが、体が細切れになり再生に時間が掛かる筈だ。細切れになった所からは技の持久戦に持っていけるはずだ。

 

「こ、攻撃を反射……だと――!?」

 

 憎珀天は驚愕な表情を浮かべ、憎珀天は体を崩壊させる。

 

 ――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。

 

 細切れになった上から無数の刃の斬撃を降らせるが、肉が蠢き体を再生させようとする。

 

「甘露寺さん、ここからは持久戦です。体が再生しないように攻撃を与え続けて下さい」

 

「わ、わかったわ!」

 

 蜜璃は目をキラキラ輝かせる。

 

「と、ところで、今の技って花の呼吸には無いわよね?」

 

「そ、そうです。俺たちが創った技ですから」

 

 柱全員は、楓の嫁が真菰とカナエだということは知っている。なので『俺たち』の意味も解った筈だ。

 そして蜜璃は「キャー」と声を上げるのだった。……何と言うか、何とも締まらない戦闘であった。




何とも締まらない戦闘後(笑)
蜜璃さん、ある意味最強ですわ。
ちなみに、憎珀天が本体だった場合は“鏡花水月”で死んでますね。

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