命
玉壺、半天狗を倒した後、楓、蜜璃、無一郎、炭治郎、禰豆子、玄弥は集まり喜びは分かち合った。
だがそれも束の間、刀鍛冶の里の復興が急がれた。夜になれば、再び鬼の襲撃があるかも知れないのだ。なので、失った者たちを悼む時間は無い。直ぐ様、里の拠点を移す必要があるのだ。幸いなことに、刀鍛冶の里の外では“空里”というものを幾つも作っているので、刀鍛冶の里はその一角に移動することになったのだ。
そんなこともあり、楓たちは里の復興の手助をしてから里を後にしたのだった。
――閑話休題。
鉄穴森から新たな刀を受け取り刀鍛冶の里を後にした楓は、無事を知らせる鴉を蝶屋敷に飛ばし、帰りの道中鴉から手紙が届けられた。
差出人はカナエと真菰であり、その内容は『刀鍛冶の里の件で大変だったと思うけど、蝶屋敷に帰ったら大事な話があるんだ』というものだ。
それを見た楓は「大事な話?」と首を傾げる。
大事な話だと言うことは、“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”のことだろうか?
そんなことを考えながら、楓は蝶屋敷に帰還したのだった。
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蝶屋敷に帰還した楓は玄関で靴を脱ぎ、自室に繋がる廊下を歩き部屋に向かう。
部屋の前に到着し襖を開け部屋に入ると、花柄の着物を身に纏った真菰と、蝶の刺繍を基調にした着物を身に纏ったカナエが隣に座り、テーブルに書物を置き目を通していた。
ともあれ、畳に上に座っていた真菰とカナエは顔を上げる。
「楓、お帰り」
「お帰りなさい、楓」
真菰とカナエは「大丈夫だった?」と言葉を掛け、楓は「大丈夫だ、問題ない」と返す。
ともあれ、楓は刀を立て掛けてから隊服を脱ぎ、着物に着替えてから真菰とカナエの対面に座る。
「ところで話って?」
楓がそう言うと、真菰が口を開く。
「実はね。私とカナエ――――月の物が来なくなったから、しのぶに診断をお願いしたの」
「診断した結果、私たち――――
真菰とカナエの言葉を聞き、楓は目を丸くしその場で固まる。
「……………………………………………………妊娠?」
楓は、やっとの思いで『妊娠』と言う言葉を口にする。
てか、真菰とカナエをほぼ同時に身籠らせる楓は、ある意味凄のかも知れない。
「うん、妊娠」
「私たちのお腹の中には、楓の子がいるのよ」
楓は「俺の子?」と血迷ったことを思ったが、真菰とカナエは、楓としか交わっていない。
だから、他人の子、というのは有り得ないのだ。
そして楓は、重い口を開く。
「…………真菰とカナエさんは、お腹の子をどうしたいんだ?」
「もちろん産みたい」
「私も産みたいわ。私たちの愛の結晶だもの」
真菰とカナエは、楓の問いに間髪入れずに答える。
既に真菰とカナエの意思は固まっているのだ――――この子を産みたいと。
だからこそ、楓が反対をする理由はない。
「……そうか。――蝶屋敷の皆は、妊娠のことは?」
楓が「知っているのか?」と問いかけると、事情を知るのはしのぶだけ、ということだ。
楓たちは、妊娠のことは
「私たち、一児の母になるんだね」
「そうね。予想より随分早かったけれど」
真菰とカナエが嬉しそうに語る。
まあ確かに、真菰とカナエは十代であり、世間の目で見ればかなり早いだろう。ちなみに、楓も十代であるが。
「しかしそうなると、鬼殺隊士は引退ってことか?」
真菰は、右手人差し指を口許に当てる。
「そうだなぁ。鬼殺隊士は引退で、お腹が大きくなるまでは蝶屋敷のお手伝いになるかも」
「私も真菰ちゃんと同じかなぁ」
カナエは「軽い任務も無理そうだしね」と付け加える。
カナエは柱を引退しても、リハビリで“全集中の呼吸”が僅かな時間使用できたので、任務に出ていた経験があるのだ。
ともあれ、楓たちは立ち上がり、報告の為に居間へ向かう。
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~蝶屋敷、居間~
蝶屋敷の居間には、怪我をした炭治郎を始め、この蝶屋敷に住む家族がテーブルを囲むように座っている。
その中心に座るのは、楓、真菰、カナエだ。
「今日は皆に報告があってこの席を設けさせて貰いました」
「実は、私とカナエのお腹の中では、新たな命を授かっているの」
「だから、二人を気に掛けてやって欲しんだ」
カナエ、真菰、楓の順で口を開いた。
開口一番に口を開いたのは善逸だ。
「ええぇぇえええ――ッ!(汚い音声)命を授かるってっ、妊娠ですよねっ!」
「ほ、本当ですか!」
きよがそう言ってから、すみたちが「おめでとうございます!」と祝福してくれて、炭治郎やカナヲも「負担があると思われることは任せて下さい」と喜んでくれる。
――そう。これが、蝶屋敷の一幕だ
楓っ、カナエさんと真菰ちゃんをほぼ同時に孕ませるなんてやるねっ!
てか、楓たちの年齢は18~19歳を設定しています。……親になるの早いな(驚愕)
でも痣だよなぁ……。痣どうしようかなぁ……(震え声)
ちなみに、楓君の外傷は切り傷のみです。