鬼滅の刃~花と桜~   作:舞翼

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ご都合主義満載です。


柱稽古

 翌日、柱稽古が開始された。

 稽古内容としては、まず初めに、桜柱・栗花落楓による基礎()の確認、正しい呼吸法――そう、全集中の呼吸を休まず続けるのだ。

 もし型に癖、呼吸が乱れてしまっていたら、攻撃、防御に転じる速度が微妙に違ってくる。――これを矯正するのが、桜柱・栗花落楓が考案した稽古内容だ。

 ――もしかしたら、 “透き通る世界”が習得できる切っ掛けになるかも知れないのだ。……まあ、棚から牡丹餅になるけれども。

 ともあれ、これは地獄のような稽古だが、真菰、カナエが見て回って悪い点を指摘してくれるのだ。

 

「うん。呼吸は乱れていないようだね。でも、型を舞う時に余分な力が入ってる。そこを直そうね」

 

「君は逆かしら。型は問題なけど、呼吸が不安定になりがちね。呼吸は力まないように、ゆっくり優しく」

 

 ――蝶屋敷の三大美人である、胡蝶カナエ、鱗滝真菰の優しい指導だ。

 男共は、疲れを浄化する気分になれるだろう。……その証拠に、指摘された男性隊士の意欲が掻き立てられるのだ。

 

「――残り十分。型、呼吸を乱すなよ」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 楓の言葉に、鬼殺隊士は声を張り上げる。

 このようにして、楓の稽古は脱落者を出さない――楓たちは、ある意味策士とも取れるのだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楓の稽古が終了したら、音柱・宇髄天元による基礎体力向上。――要は、休んでは走り、休んでは走りの繰り返しである。

 天元の稽古が終了したら、恋柱・甘露寺蜜璃による柔軟。なので、体が硬い隊士に取っては地獄の稽古になる。

 次に、時透無一郎による高速移動の稽古。素振りが終わっても、打ち込み台が壊れるまで終了することができない地獄の稽古だ。

 次に、小芭内による太刀筋矯正。……出来ないと、地獄が待ってるとか。

 小芭内の次は実弥を相手にした無限の打ち込み稽古なのだが、反吐を吐いて失神するまでが一区切りであり、休憩は無しだとか。

 次に岩柱・悲鳴嶼行冥の稽古で、筋肉強化訓練。その稽古では、地獄を見るそうだ。

 そして、しのぶはある薬(・・・)を共同で開発する為に不参加であり、義勇は隊士への指導は行わないが、柱との手合わせに参加し自身の強化。

 最後に、隊士は杏寿郎との手合わせで稽古が終了となる。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 柱稽古が開始され数週間が経過した頃、稽古が終了し、夜道場で鍛錬していた楓の元にカナヲが歩み寄る。

 

「……に、兄さん。鍛錬をつけて欲しいんだけど、時間はある、かな?」

 

「時間はあるけど、今から鍛錬か?」

 

 カナヲは「うん」と頷く。

 確かに、継子であるカナヲに稽古をつけるのはおかしなことではないが、柱稽古を一段落させた直後に鍛錬は、過酷過ぎるのではないか?

 ともあれ、楓が口を開く。

 

「じゃあ、少しだけな」

 

 鍛錬の内容は、真剣であり、寸止めか、武器の取り零しで決着。ということになった。

 楓とカナヲは日輪刀を抜き、一定の距離を保ち神経を集中させる。

 そして、ほぼ同時に相手を錯乱するように左右に動き、刀を振るう。

 

 ――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 楓の下から上に描かれる花の斬撃を、カナヲが周囲に花の斬撃を放ち、互いに受け止め刀の甲高い音が道場に響く。

 刀を弾き、楓は刀を構える。

 

 ――花の呼吸 五ノ型・改 徒の勺薬。

 

 カナヲも同じく“花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬”で迎え撃つが、楓の勺薬は十八連撃、カナヲの勺薬は九連撃だ。

 

「(……――兄さん、剣技を昇華させてるのっ!?)」

 

 目を見開くカナヲ。

 カナヲは、楓が放つ“勺薬”は初見なので、解らなくて当然だ。

 そしてカナヲは、九連撃を相殺されてから、型を繰り出す。

 

 ――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。

 

 カナヲは周囲に花の斬撃を放ち、残りの九連撃を防ぐが、これは楓の予想通りだろう。

 そして斬撃が止んだ瞬間が、楓の狙いだ。

 

 ――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃。

 

 ――花の呼吸 陸ノ型 渦桃。

 

 楓は腰に刀を回して加速し、カナヲの刀を落す為に右腕を狙い一閃を放つが、カナヲは飛び上がり一閃を躱し刀を振るう。楓はそれに刀を打ち当て相殺させる。

 カナヲは着地し、持ち前のバネのような体を駆使し、そのまま上るように剣技を繰り出す。

 

 ――花の呼吸 肆ノ型 紅花衣。

 

 カナヲが下から上に放つ花の斬撃を、楓は足を後方に移動して紙一重で躱す。

 それからも、お互いが譲らない攻防を約三十分継続した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「やっぱり決定打に欠けるな」

 

「……うん。お互いの手の内を知り尽くしてるから」

 

 楓が「だよなぁ」と言って、楓とカナヲは刀の構えを解き納刀する。これ以上打ち合っても、勝負は付かないと悟ったのだ。

 すると、話を切り替えるようにカナヲが口を開く。

 

「……兄さんは、決戦時に上弦の弐と戦うの?」

 

「ああ。アイツとはまた殺し合いをする確信がある。――きっと、どちらかが死ぬまで戦い続けるだろうな」

 

 それに上弦の弐の力量は、あの時よりも増している筈だ。

 おそらく楓と上弦の弐は、二対八で上弦の弐に勝利が傾いているだろう。

 

「――私も兄さんと一緒に戦う」

 

 カナヲは力強く頷く。

 その両瞳の中には、奴を滅する覚悟の炎が灯っていた。

 きっとカナヲは、楓と共に上弦の弐と戦うだろう。楓もそれが解っていたかのように「そうか」と言って頷く。

 

「……それに兄さん、終ノ型の使う気、なの?」

 

 カナヲの言葉に、楓は、ギクッと体を震わせる。

 楓の終ノ型である、“千本桜・景厳”は、両腕に途轍もなく負担が掛かり、両腕が動かなくなるかも知れないのだ。

 

「……私も、終ノ型を使う覚悟はある」

 

 カナヲの終ノ型――彼岸朱眼は、カナヲの動体視力を極限まで高めるものだ。

 それは、両目の負担が途轍もなく掛かり、使用時には両目が赤く染まる。赤く染まると言うことは、眼球が負荷に耐えられず出血するから。なので、失明と隣り合わせな技でもある。

 

「そ、それはダメだ!あれは、失明の恐れがあるだろう!」

 

 楓は声を上げる。

 

「……でも、兄さんは父親になる。もし終ノ型を使えば、命を縮めるかも知れない。だから私が使う」

 

 カナヲは一歩も引かない。

 

「わ、わかった。お互い、終ノ型を使用する前に上弦の弐を倒せば問題ないだろ」

 

「……うん」

 

 どうやら、カナヲも納得してくれたようだ。

 ――でもそうなれば、“花の呼吸 漆ノ型 鏡花水月”が勝負の流れ決める剣技になるのかも知れない。




上弦の弐の戦闘には、しのぶさんと伊之助も参戦予定です。

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