――最終選別六日目。
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――花の呼吸 弐ノ型 御影梅。
俺は自身の回り囲うように斬撃を放ち、鬼の頸を撥ね、鬼は体が消滅してから日輪刀を鞘に納刀する。
その時、肌に刺さるような威圧が触る。
「鬼、だよな」
先程の鬼より、遥かに強いだろう。おそらく、人を喰った数も十や二十じゃない。すると、木々を掻き分けながら、選別を受けているであろう少年が顔を出し、少年は俺の傍にあった木の幹を背に座り込む。
「どうかしたのか?」
「ば、化け物だ。何であんな鬼が最終選別に居るんだよ!」
「化け物?どんな鬼だった?」
「触手を生やしている、かなり大きい鬼だ。――あれは、異形の鬼だ!」
「そうか。他に戦っていた奴はいたか?」
少年は震えた声で呟く。
「お、女の子が鬼と戦っている。小柄な女の子だった」
「わかった」
この時、カナエさんの言葉が思い出す。
――『楓。助けてあげるのが男の子よ』、と。
「(カナエさん。約束は護ります)」
俺は構えを取り、最近、改良した型を繰り出す。
でも、足が使い物になるかも知れないので、乱発はできない技である。
――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃――極。
俺はその場から勢いよく離れ、戦場へ駆けた。
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私を笑いながら見る鬼は、体は緑色で人の形を保っておらず、四本の手足以外にも無数の腕を生やしいて胴体に結びつけていた。
「クスクスクス。お前、鱗滝の弟子だなァ」
「貴方、鱗滝さんを知ってるの?」
私は型を取り、
――水の呼吸 参ノ型 流流舞い。
襲いかかる腕を斬り落とし胴体にも傷を残すが、やはり私では、この鬼の頸を斬るのは難しいかも知れない。
鬼は、後方に移動した私と対面した。
「クフフフ。そりゃ知ってるさ、この檻の中に入れたのは鱗滝だからなァ!――十一、十二……お前で十三だ」
「何の話?」
鬼は「フフフ」と笑う。
「喰った鱗滝の弟子の数だよ。アイツの弟子は、皆喰ってやるって決めてるんだ」
私の動きが止まる。
「そうだなァ。特に印象に残ってるのは、珍しい毛色のガキ。宍色の髪をしていて口辺りに傷があった奴だなァ。お前がしてる狐の面。厄除の面と言ったかァ。それが、鱗滝の弟子の目印なんだよ」
鬼は言葉を続ける。
「だから喰われた。皆オレの腹の中だ。弟子たちは、鱗滝が殺したようなものだ。フフフフ」
「お前が皆をッ。鱗滝さんを悲しませた元凶かっ!」
私は激怒して走り出し、地面を蹴り型を繰り出そうとするが、呼吸が乱れていて、思うように体が動かせない。そして、地面を割って這い出てくる無数の腕。――鬼は、この瞬間を狙ったに違いない。まさか、腕を地面に隠せるなんて思っていなかった。
私は四肢を腕に掴まれ、宙に持ち上げられ、刀が手から落とされる。
――死。私はこの鬼によって惨めに殺されるのだろう。
『最終選別……必ず生きて戻れ、真菰』
――護れない。
きっと鱗滝さんは、私が約束を破ったら酷く悲しむ。でも、私はここで殺されてしまう。
「(鱗滝さん、ごめんなさい。私、帰れない)」
私は心の中で、師に詫びた。
「クフフフフ。まずはどこから潰してやろうか。右腕か、左腕か。それとも、右足からがいいかなァ」
その時、私の耳に声が響く。
――桜の呼吸 壱ノ型 乱舞一閃――極。
――花の呼吸 五ノ型 徒の勺薬。
花の斬撃が鬼と私との間に走ると、私は拘束から解かれ尻餅を突く。
私は隣に立つ人物を見ると、蝶羽織りに、花色の日輪刀。黒髪に漆黒の瞳の少年。
この子は印象に残っていた。最終選別の参加者の中でも、彼だけは纏う雰囲気が違ったのだ。あれは、強者のものだ。おそらく、受験者の中で一番強い。
「大丈夫か?」
「う、うん」
「そうか。足は動くか?」
「ちょっと、難しいかな」
かなり強く掴まれていたので、最終選別を終えても歩くのは厳しい。
「わかった。あいつは俺が殺していいか?」
私が「うん」と頷くと「でも、仇なんだろう」と、少年は聞く。
「私は戦えない。お願い、私たちの仇をとって」
「――ああ」
私はビクッ震えた。
続けて言った「簡単には殺さねぇからな、悪鬼」と言った少年の声は、とても冷たいものだったからだ。
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俺が向かった先に少女は、花柄の着物を身に纏った小柄の少女。側頭部には花柄の狐の面。
複数の腕に拘束され、動きを封じられていたので、それを全て斬り落とす。また、少女から話を聞いた所、この悪鬼は水一門の仇だと言う。
だが、少女の手足は負傷しているので、まともに戦うことは不可能であり、俺が頸を取る。水一門の仇なので申し訳ない気持ちもあるが、簡単には殺さないので許して欲しい。
「ちきしょうちくしょうちくしょう!誰だ貴様は!?」
斬られた腕を再生した鬼が叫ぶ。
「折角、鱗滝の弟子を殺せると思ったのに邪魔しやがって!」
「黙れ、悪鬼。お前はここで死ね」
俺は少女の前に出て、
――桜の呼吸 弐ノ型 千本桜。
俺が刀を振るうと、無数の斬撃が悪鬼を襲う。そして、這い出る腕は“花の呼吸 肆ノ型 紅羽衣”で斬り刻む。
千本桜は、全方位から囲むような斬撃なので、奴はゆっくり切り刻まれながら「痛い痛い痛いッ」と雄叫び上げ斬られていく。宛ら、拷問のような斬撃だ。まあ、創った俺が言うのはアレだが。
「鱗滝ぃぃぃいい鱗滝ぃいいいい!こんな檻に入れやがってぇぇぇええ!」
俺は「うるせぇな」と思いながら、
――花の呼吸 陸ノ型 渦桃。
俺は地面を踏んで飛び、体を捻りながら斬撃を放ち、奴の頸を飛ばす。やはり、じっくり殺すのは色々な意味で面倒くさい。
その時少女が「……うわっ」って引いてたのは気のせいだよね?そうだよね?
「鱗滝……」
奴は最後にそう呟き塵に還った。
乱舞一閃――極。は、霹靂一閃――神速のイメージです。
なら、雷の呼吸を習得しろよ。と言いたい人も居ると思いますが、楓君の適性は“花の呼吸”なんです、ええ。
千本桜のイメージは、BLEACHの千本桜かなぁ(たぶん)
ちなみに、真菰ちゃんの両腕は無事です。
ではでは、次回(@^^)/~~~