楓たちが道場に集まり海斗と夏帆に時間一杯稽古をつけ昼食を摂った後、子供たちの面倒を蝶屋敷の皆に任せ、楓、真菰、カナエは買い出しに街へ向かっていた。
今朝、食べ物の在庫が品薄になっていたからである。
到着した街では、道中の人通りは途切れることはなく活気に満ち溢れている。
「お家の食材を購入し終えたら、蝶屋敷の皆にお菓子を買っていきましょうか」
「そうだねぇ。最近噂の、
「確か、外国から渡ってきた甘いお菓子だったか」
楓の記憶によると、外国から輸入されたチョコレートは異国の食べ物であったが、最近ではその製造が日本で行われるようになった代物だ。
つまり、珍しいお菓子。ということである。
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「かなり買ったな」
両手で食材が入った大袋を持つ楓が呟く。
「これなら、暫くは買い出しをしなくて済むね」
「でも、すぐに食べちゃうのは気のせいかしら」
真菰、カナエがそう呟く。
その時、楓たちを呼ぶ声が前歩から届く。
「楓君――!カナエちゃん――!真菰ちゃん――!」
その人物の容姿は、鮮やかなピンク色の長い髪に整った顔立ち、ピンク色を基調にした着物を身に纏った――甘露寺蜜璃である。
無惨戦では、無惨の複数の心臓、脳を討つ時に一役買っていた恋柱でもある。――でも無惨討伐時、左腕を失い鬼殺隊を引退した経緯を持つ。
楓たちの元まで、右手を振り走り寄って来た蜜璃は口を開く。
「こんな所で会えるとは思っていなかったよ!?今日は夫婦でお買い物っ?こうやって見ると美男美女だね!そういえば、蝶屋敷から引っ越したんだよね?」
可愛らしい声で、楓たちが質問に答える前に次から次へと質問が飛ばされ、楓たちが口を挟むことが出来ない。
でも、無惨討伐を終えても目に見えて気持ちが沈んでいたので、現在の活発な蜜璃を見た楓たちは安堵の息を吐く。
「お久しぶりです、甘露寺さん。――それと、今日は買い出しです。後、蝶屋敷からは引っ越しましたね」
ちなみに現在楓たちが住む一軒家は、楓が鬼殺隊引退時にお館様から頂いた家である。
「蜜璃ちゃんは、今日はどうしたの?」
「誰かと逢引とか?」
カナエと真菰の言葉を聞き、蜜璃は両頬を若干赤く染める。
そして小さな声で「……逢引じゃないはず」と呟く。
「じ、実は伊黒さんから誘われて、街で有名なご飯屋さんに来たの」
蜜璃が口にした『伊黒さん』とは――元蛇柱である、伊黒小芭内のことだ。
小芭内も無惨討伐時に右目の視力を完全に失ってしまった為、鬼殺隊には籍を置いているが、柱からは引退した経緯を持つ。
「なるほど。伊黒君もやるわね」
「楓、こういう所は無頓着だったからね~」
うんうんと頷くカナエと真菰。
すると、楓たちの後方から冷たい声が届く。
「おい貴様ら何でこんな所にいる貴様らは引っ越したはずだ時に栗花落は甘露寺を見すぎだ塵屑にするぞ」
相変わらず、ネチネチと言葉を吐く小芭内。
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「ごめんね、伊黒さん。楓君たちを見つけはしゃいじゃって……伊黒さん、困ったよね」
「……いや、甘露寺がオレを困らせたことなど一度もない。寧ろ、久しぶりに見る知人に素直に喜べるのはお前の美徳だ」
「伊黒さん……」
蜜璃は頬を若干紅く染め、お互いを見つめる小芭内と蜜璃。
この光景を対面に座って見ている楓たちは、かなり居心地が悪かったりする。
「(……何で俺は、伊黒さんたちの逢引を見なきゃいけないんだ)」
「(……居心地が悪いわね。確かに、伊黒君と蜜璃ちゃんが上手くいってるから嬉しいけれども)」
「(……私、胸焼けしそうだなぁ)」
楓、カナエ、真菰が内心でそう呟く。
そして、こうなった経緯はこうだ。
楓たちは逢引の邪魔をする訳にはいかないと思い「お先に失礼します」とその場を離れようとしたのだが、蜜璃の「楓君たちも一緒にどう?」と言う言葉に引き留められたのだ。
でも如何にかこの場を去ろうと思案した楓たちなのだが、小芭内の「甘露寺の誘いを断るのか、貴様ら」と、若干圧が強い言葉を受け、共に食堂にお邪魔したのだ。
それから数刻が経過し、蜜璃のテーブル前に店員から届けられたオムライスの数が十皿を超えている。
まあでも、蜜璃の体質を知っている楓たちは、時に驚くことはしないが。
「伊黒さんっ!ここのオムライスとても美味しいですっ!」
十皿のオムライスを平らげ、蜜璃がキラキラと目を輝かせる。
「そうか。今度は甘露寺の為に団子屋も探した。次はそこに行こう」
平然と次の約束を取り付けている小芭内。
いや、それにしても――、
「(……伊黒さん。甘露寺さんの為に色々なお店に通って、甘露寺さんの好みの味を見つけてるのか……凄ぇな)」
そう思いながら、店が推している有名緑茶が注いである湯のみを右手で持ち口につける楓。
それに聞いた話によると、小芭内は蜜璃を想って、度々蜜璃の屋敷に訪れているらしい。
まあ確かに、蜜璃は左腕を欠損している為、自身で間々ならない事項があるのは確かなのかも知れない。
「(伊黒君が蜜璃ちゃんの心を射止めるのも時間の問題かしら?)」
「(でも男性陣は、肝心な所でヘタレちゃうんだよねぇ)」
カナエと真菰も内心でそう呟きながら、有名緑茶が注いである湯のみを右手で持ち口をつける。
それからも、蜜璃がオムライスを五皿注文を追加し、全てを平らげ店を後にするのだった。
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~外~
「じゃあ、甘露寺さん伊黒さん。俺たちはこの辺で」
「何かあれば、私たちのことも頼って下さい」
「遠慮しなくていいからね~」
楓たちがそう言うと、蜜璃と小芭内が口を開く。
「うん!今日はありがとう、また会おうね!」
「ふん。貴様らに頼ることなんて一寸も無いと思うがな」
そう挨拶を交わしてから、楓たちは進行方向へ踵を返した。――蜜璃と小芭内が結ばれるようにと願いながら。
恋と蛇には幸せになって欲しい。……原作で、両者死亡とかありそうで怖すぎる∑(; ̄□ ̄)
ではでは、次回(@^^)/~~~
追記。
蜜璃は、伊黒さんの過去を受け留めている設定です。