私の名前は鱗滝夏帆。真菰ママのお腹から生まれた子供です。
私には、胡蝶カナエママと二人目のママがいるんです。――真菰ママに聞いた話だと、パパがママたちを囲んでお嫁にもらったとか。
私はそんなパパが大好きです。
「夏帆、そろそろ着くぞ」
そう言ったのは、私のお兄ちゃん。
お兄ちゃんは私と違って、カナエママのお腹から生まれた男の子。
パパの子供版みたいです。
「ん。おじいちゃん元気かな?」
私が呟いたおじいちゃんとは、パパたちの義父になる鱗滝左近次さんのこと。
「文を見た限りでは元気そうだったけどね」
「久しぶりね、お義父に会うのは」
そう言ったのは、真菰ママとカナエママ。
パパも一緒がよかったんだけど、今日は鬼狩りの依頼が
目の前に見える小屋の扉を開くと、中央の炭鉢付近に鱗滝おじいちゃんが座っていた。
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「お久しぶりです、お義父さん」
「ただいま~。鱗滝さん」
「うむ。真菰もカナエ殿も久しぶりだな。今日楓は?」
おじいちゃんと対面に座るカナエママと真菰ママが呟く。
私は真菰ママの両膝の上に乗り、お兄ちゃんはカナエママの隣に座り、おじいちゃんから手渡された日輪刀を鞘から抜き蒼い刀身を眺めている。
もし、私たちが色の付いてない日輪刀の柄を握ると“花色”と“蒼色”になるのかな?
「楓はお館様からの依頼で、鬼を狩りに行ってます。仕事が終わり次第、合流するって言ってましたね」
カナエママがそう呟く。
そう言えば、パパは鬼殺隊の元柱なんだっけ?強いのかな?
「鬼を狩ったらすぐに合流するって意気込んでたからねぇ」
真菰ママは苦笑した。
それから約二時間が経過すると入り口の扉が開き、着物姿で刀を右手に携えたパパが到着した。
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「お久しぶりです、義父」
刀を家の端に立て掛けたパパが呟いた。
「久しぶりじゃな、楓。左腕の経過はどうだ?」
おじいちゃんがそう言って、パパが左腕を一瞥する。
パパは苦笑し、
「日常生活では問題ないです。でも、左手では刀を握れませんね」
確かパパ聞いた話だと、パパの左腕の筋は断裂しちゃて、治療しても元には戻らなかったって言ってたっけ。
その元になった“――桜の呼吸 終ノ型 千本桜・景厳”は一生使うことができないとも。……きっと、凄い剣技だったんだろうなぁ。
もし私に桜の呼吸の適性があったとしても、パパは終ノ型を教えてくれなさそうだけど。
「でも、あの決戦でこの程度で済んだのは幸運ですよ」
「……そうだな」
おじいちゃんは考え深く呟く。
それと、パパが今さっき呟いた『決戦』は、鬼と人が全てを賭けた総力戦って聞いている。
それは激戦であり、死者も出たこともパパから聞いたんだ。
「ねぇパパ。その戦いの話、もう一回聞きたいな。――何とか無惨のことも」
「確か、鬼舞辻無惨だったけ。お父さん、そいつって鬼の始祖なんだよね」
パパの両膝に乗る私がそう言い、パパの隣に座るお兄ちゃんがそう言った。
それとその鬼は、パパの刀と炭治郎お兄ちゃんの刀が滅したんだよね?
「構わないけど。夏帆たちはもう三回目になるだろ、飽きないか?」
パパの言う通り、あの決戦の話を全てを伝え終えるとなれば約一時間程度かかったりする。
「全く飽きないよ。パパたちのお話が聞けるんだもん」
「うんオレも。鬼と人が全てを賭けた戦いだもんね」
私とお兄ちゃんがそう言うと、パパは「わかったよ」と言って苦笑する。
「儂も聞いていいか?無限城の決戦は、儂は当事者として居なかったもんでな」
「じゃあ、私も聞こうかなぁ~」
「そうね。歴史の転機となった話だものね」
おじいちゃん、夕食の準備を終えた真菰ママ、カナエママがそう呟いた。
パパは「義父にお前たちもか」と苦笑し、真菰ママとカナエママがパパとお兄ちゃんの隣に座る。
「じゃあ話すぞ。あの戦いは――」
パパがそう言って語り始め、私たちは耳を傾けた。
そしてその話が終わると私たちは夕食を食べ、パパとおじいちゃんから剣の指導をして貰ったんだ。
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~夜から朝にかけて~
あの後鱗滝の家から帰ろうとしたが、夏帆と海斗は鱗滝の所に泊まることになり、楓たちは明日用事があるので一足先に家に帰還した。まあ、用事が済み次第再び顔を出す予定だ。
ともあれ、楓たちは家に帰還すると、三人で風呂に入り就寝の支度を整えていたが――、
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朝になり、楓が右手で右目を擦すり目を開けると、左右から人肌の温もりを感じ取った。
楓が上体だけ上げると、ぼやけた視界のまま周囲を見回す。そこには乱雑に散らばる衣服、後片付けに使ったと思われる紙屑に、楓に寄り添うように眠るのは真菰とカナエだ。
楓は「そうか」と納得する。
「(昨日、真菰とカナエを抱いたんだっけな)」
自分が生まれたままの姿で、寒っ、と感じた楓は、すぐ様布団をかけ横になる。
抱いたのは夏帆と海斗が寝静まった時にもあるが、昨日は三人だけだったので盛り上がり過ぎた。……まあ楓の暴走もあるが。
その時、右手で右目を擦る真菰とカナエが目を開ける。
「楓、おはよう。起きたんだね」
「おはよう、楓」
楓は真菰とカナエを見てから口を開く。
「おはよう、二人とも……それと、昨日はすいませんでした」
「ふふ。体力ありすぎです、元桜柱さん」
「途中から腰砕けになっちゃったしね~」
カナエと真菰の言葉を聞いて「申し訳ないです」と小さくなる楓。
そしてカナエたちは「大丈夫だよ」と笑った。
「二人は今日は蝶屋敷だっけ?」
「そうね。蝶屋敷でしのぶと薬の調合に関することかしら」
「私は蝶屋敷で、機能回復訓練と剣術の指南についてかなぁ」
カナエは調合について、真菰は隊士に指南。といった所だろうか。ちなみに楓の今日の仕事は、お偉いさんの護衛だ。
楓たちは、もう少しゆっくりしてから起きよう。ということになり、これからのことにを話し合うのだった。
そしてこの一夜が、真菰とカナエのお腹に新たな命を宿すことになることを、楓たちはまだ知らないでいた。
完結まで、後一、二話ですね。
てか、小説書くのって難しいですね( ̄▽ ̄;)