Tales of Willentia テイルズオブヴィレンティア   作:さかなのねごと

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第5話 夜が明けて

 

 ぶん、と空を切る音とともに、鋭利な大鎌が振るわれる。それがグールの死肉を両断したかと思えば、すぐさま弧を描いて別のグールへと襲い掛かっていく。三日月のような軌道は美しいが、それに見合わぬほどの破壊力に満ちていた。どしゃ、ぐちゃ、と薙ぎ倒されていくグールの群れ。その前に立つミライを、アスハは横目にこっそりと覗き見た。

 

(本当に、涼しい顔で振るうんだな)

 

 身の丈ほどありそうな大鎌は、持つだけでも相当な力が要ると見える。それを振るい続けるミライからは、しかし疲労の色は見当たらない。疲れはおろか、焦りや恐怖などもない。凛としたその眼差しは強く、ただ前を見据えている。

 どこにそんな力があるのか不思議なくらいに細身の体は、シェドの民族衣装を纏っていた。濃紺を基調としたその色合いは、まるで月明かりの眩しい夜空のよう。頭にはさまざまな色と模様が織り交ぜられたバンダナを巻いており、真白の髪によく映えていた。

 ふと、そんな彼の向こうに新手のグールが近寄っているのが見えて、アスハは刀を手に駆け出す。

 

昇舞(しょうぶ)ッ!」

 

 高く跳ね上げた刀が、夕焼けの光を弾いて輝く。グールの沈黙と同時に落ちてきた刀を受け取って、アスハはミライの隣に並んだ。

 

「だいぶ、数は減ってきたけれど……」

「きりがないな」

 

 戦場となった通りを見渡す。非戦闘員である民衆の避難は済んでおり、今は駆け付けた自警団や戦闘技能を持つ旅人らがそれぞれグールを相手取っていた。しかしそれでも尚グールが全滅に至っていないのは、ぼこり、ぼこりと、次から次へと地面から這い出てきているからだ。

 ……地下、とアスハは視線を足元にやる。そこからグールが這い出てくるということは、もしや。

 

「……確かこの街には、地下に墓地があったはず」

「そうか。なら、行こう」

 

 アスハの呟きに、ミライが頷くのは早かった。そのまま駆け出してしまいそうなミライの袖を、アスハは慌てて掴む。待ってくれ、と声を上げた少女に、少年は不思議そうに首を傾げる。

 

「どうした?」

「どうしたって……地下は恐らくこの騒ぎの元凶がいるはず。ここ以上に危険に違いない」

「ああ」

「……本当にわかっているのか?危険なんだ、だから、」

 

「それでもアスハは行くだろう」

 

 そう言われてアスハが言葉を無くしたのには、理由がある。一つはそれが図星だったから。そしてもう一つは、何故自分に着いてこようとするのかわからなかったからだ。

 何故、どうして。自分などに着いてきてくれるのか。

 アスハの疑問を気にした風もなく、一切の揺らぎなく、ミライの白銀の目は彼女を見据えている。

 

「きみが行くなら、ぼくも行く。ーー行こう、アスハ」

 

 真っ直ぐな声に、瞳に、アスハは口許を結んで頷く。そうして一瞬の後、二人は同時に駆け出した。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 街外れの地下階段を下った先は、ひんやりとした空気に満ちていた。日の当たらない地下は暗く、ただカンテラに備え付けられた心臓石(ヘルツ)が仄かな灯りを灯している。

 

「ここが、地下墓地……」

 

 暗闇に目を凝らせば、土塊の壁は円周上に広がり、幾つもの通路を成している。それらは一つ一つ、棺桶が安置されているのだろう小部屋に続くのだろう。一目見ただけで、膨大な広さがあることが二人にはわかった。無闇に歩き回っては、無駄に体力と時間を消耗してしまうだろうということも。

 ならば、と。アスハは目を閉じて、耳をそばだてた。ムジカの歪みを、その大元を辿ろうと意識を集中させる。冷えきった静寂、グールのべちゃりとした足音、呻き声、ざり、と砂が擦れる音、そしてーー

 

「ーー見つけた」

 

 琥珀色の目が見据えた、そのずっと先に、元凶たる大きな歪みがある。遠いこの場所からも感じ取れる異常な響きに、アスハは浅く息を吸い込む。ひゅ、と喉が鳴った。

 

(……行かなければ、)

 

 行かなければ、この騒動は収まらない。今はなんとかなっているとはいえ、騒動が続けば負傷者もーー最悪の場合死者も出るだろう。自分が行かなければ、ならない。

 それでもアスハの足を止めるのは、つい先日の秋茜の林道での一件だった。あの時の強大な魔物になす術なく倒れ伏した自分を、痛みを、無力感を、恐れを思い出してしまった。使命感か、恐怖か、諦念か。葛藤に身動きできずにいるアスハの前を、すい、と影がゆく。

 

「、……」

 

 ミライだった。彼は平然と地下の暗闇へ足を進めている。漆黒の世界に浮かび上がるようなその白に、アスハははっとした。気づいた。

 ーー今は、ひとりではないのだと。

 

「……?どうした、アスハ」

「いや、……なんでもないよ」

 

 にこりと微笑み、アスハは嘘を吐いた。

 

「行こう、ミライ」

 

 足音は二人分。足はもう、震えてはいない。

 

 

 

ーーー

 

 

 

スキット【心臓石(ヘルツ)の使い道】

 

 

ミライ「戦闘終了。……アスハ、何をしているんだ?」

 

アスハ「先ほどの魔物が心臓石(ヘルツ)を落としたから拾っているんだ。心臓石(ヘルツ)には色々な使い道があるからね」

 

ミライ「使い道とは、どのような?」

 

アスハ「そうだね、まず何においても魔導機関の動力源になることかな。後は……私はまだ試していないけれど、武器の補修や強化にも使えるらしい。……待てよ?ということは武器そのものを鍛える時にも使えるのでは……」

 

ミライ「詳しいんだな」

 

アスハ「!……いや、その、……すまない。話し過ぎたね」

 

ミライ「なぜ謝る」

 

アスハ「……確かに、君に謝るのはおかしかったかな。けれど、あまりこういうことに傾倒してはいけないと言われていたんだ。それなのに、私は……」

 

ミライ「……アスハ、」

 

アスハ「すまない。さあ、先を急ごう」

 

ミライ「…………」

 

 

 

---

 

 

 

 地下墓所を歩き進めてどれほど経っただろうか。ここは常に暗闇に覆われているから、時間の感覚が掴みづらい。道中に沸き出るグールたちを斬り払い、迷路のような細道を歩き続け、幾度目かの扉を開け放ったアスハたちは、これまでの小部屋とは違う広間に出た。

 四方を囲む壁面には繊細な幾何学模様が掘られており、柱に埋め込まれた心臓石(ヘルツ)の灯りによってその凹凸が照らし出されている。そうした厳かなこの間の最奥部には、タイルで装飾の施された棺が等間隔で並べられている。この街の代々の領主の墓だろうかとアスハは思い至るも、それを口にすることはできない。何故ならば。

 

「--グオオオオオオォォ……」

 

 地を揺らす唸り声は、グールのそれより大きく低い。それも当然だろう、とアスハは対峙した巨体を見上げた。土塊にまみれた腐敗した体。四肢の他に、本来あるべきところとは違う場所からも手足がばらばらと生えている様は、まるで何匹ものグールが乱雑に混ぜられたかのようだった。--よう、ではなく、事実なのかもしれない。たった一匹のグールでさえ、魔物特有の歪みを発している。それが何十、何百にも折り重なったと思えば、このムジカの強烈な歪みも納得できる。

 

「グールキング、……話に聞いたことはあったが、実在していたとは」

 

 アスハは努めて声を落ち着けた。無意識のうちに、刀の柄を握り締める手に力が籠る。そんなアスハの様子を知ってか知らずか、ミライが大鎌を手に進み出て、

 

「あれを倒すんだな」

 

 そんな、迷いのない声で言うものだから。アスハは目を瞬かせた後、ふっと微笑んだ。

 

「ああ、ミライ。……行こう!」

 

 先んじて斬り掛かったのはアスハ。巨体ゆえ攻撃することは容易なものの、分厚い腐肉に遮られて刃が奥まで届かない。続けて鎌を振るったミライもまた、思ったような手応えが得られずに眉を寄せた。

 そんな二人に向かって、グールキングの両腕が振り下ろされる。

 

「ッぐ……!」

 

 鞭のようにしなった腕に薙ぎ払われ、アスハとミライは床に叩きつけられた。受け身をとって直ぐ様立ち上がったが、受けたダメージは大きく、その足を少しふらつかせる。

 

「……斬り合いでは、こちらが不利だ」

「……そのようだね」

 

 ぽつりと小さく会話を交わす。その間にもグールキングの鉤爪が飛んでくるため、二人はそれぞれ横に跳んで攻撃を避けた。斬って、避けて、避けきれず防御して。戦えば戦うほど攻撃力の差が歴然と表れ、押されていくようだった。アスハは歯噛みし、思考する。

 

(物理的な攻撃では通らない、ならば……!)

 

 術での攻撃ならば、効くかもしれない。腐臭を撒き散らす体はぬらぬらと滑っていて、火でも与えてやればよく燃えそうだとアスハは気づく。そしてアスハはイブリス。火の大精霊イフリートの眷属。剣技だけでなく詠唱術も修行していた彼女は、火属性の攻撃術を会得している。

 そうした条件を揃えながらもアスハが行動に移せないのは、グールキングの攻撃が止まず、隙を見出だせないからだ。精神の集中を必要とする詠唱術は、大抵の場合、敵からの攻撃を受けると詠唱が中断されてしまう。中にはムジカを体内に取り込んで鋼体を創る上級者もいるが、今のアスハには不可能である。

 詠唱の時間を稼がなければいけない。そのためには、詠唱の間グールキングの攻撃を一手に引き付けなければならない--引き付ける誰かが、要る。

 

「アスハ、」

 

 その声はさほど大きくないにも関わらず、この戦場において凛と響いた。顔を上げたアスハの目に、戦いながらも、こちらを真っ直ぐ見据えるミライの姿が映る。

 

「なにか思いついたのならば、言ってほしい」

「、……っいや、駄目だ。いけない」

 

 脳裏に浮かんだ作戦を振り払う。駄目だ。いけない。そんなことをさせては危険だと、アスハの中で警鐘が鳴り響く。

 自分が皆を守らなければいけないのに、自分の代わりに矢面に立たせるわけにはいかない。--それはアスハの信念ではあったが、意固地とも言えるプライドでもあった。“そうしなければならない”と、思考と行動を縛るものだった。しかし。

 

 

「--アスハ!」

 

 

 そんな戒めを、彼の声はほどいていく。

 

 

「任せろ。絶対、きみに攻撃を届かせやしない」

 

 

 細い背中も、背丈も、アスハとあまり変わらない。しかしその後ろ姿に、どうしようもない安堵を抱く。--信頼を、抱く。

 

「……わかった。……ミライ!詠唱時間を稼いでくれ!」

 

 彼は微かに、けれど確かに頷いて、大鎌を高く振り上げた。ぶおん、と空を切る音とともに大きく弧を描いて、その月は地上すれすれから再び空に昇る。その最中、鎌の切っ先がグールキングの腕を引っ掻けた。ぐっと、ミライは腕に力を込める。

 

弄月(ろうげつ)、」

 

 斬り下ろし、斬り上げ、また斬り下ろす。鎌に引っ掛けられたまま方々に体を打ち付けられて、グールキングが苦悶の声を上げる。そんな前衛の様子を見やりながら、アスハは詠唱を続けた。空中に漂うムジカを集め、力ある事象を創りあげていく。そして、

 

「--“ファイアーボール”!」

 

 練り上げた力に名を与える。存在を、かたちどる。アスハの頭上で生まれた火の玉は、真っ直ぐに宙を疾りグールキングに命中した。弾ぜた火球は暗闇を散らし、苦悶の声が地を揺らす。すえた臭いがアスハたちに届くが、まだ巨躯が傾ぐ様子は見えない。

 

「……グオオオオォォォッ!!!」

 

 しかし、激昂に至るだけのダメージは与えていたらしい。グールキングは怒りに震えるまま、巨大な腕を振り下ろす。前線を張っていたミライに向けて。

 

「……ッ!」

「、ミライ!!」

 

「--来るな!!」

 

 轟音とアスハの悲鳴じみた声に負けぬようにと、ミライは声を張り上げた。振り下ろされた豪腕を大鎌で受け止めたミライの姿は、舞い上がる砂埃に隔てられてアスハからは見えない。しかし、

 

「もう一度だ、アスハ!」

 

 迷いなく、揺るぎなく、その声は凛と響く。それにアスハは頷き、瞳を決した。決意を込めて唇が開かれる。

 

「……焔より生まれ出でよ火の精 その意志を射放て」

 

 先ほどより威力が出るようにと、より緻密な言霊を紡ぐ。その詠唱にかたちどられたムジカが、ごう、と熱風を起こした。地下墓地の暗闇を照らしたその様は、まるで小さな太陽のよう。

 その熱気を危険と判じたのか、グールキングがぎょろりとした眼孔をアスハに向けた。が、それを咎めるように大鎌の斬撃が襲い掛かる。

 

「行かせない」

 

 アスハへ続く道に、ミライが立ち塞がる。その背中を見つめて、アスハの瞳に光が灯った。

 

「--汝に、名を 与えよう--」

 

 存在をかたちどる名付けで、詠唱を締め括る。

 

「……“ファイアーボール”!」

 

 名付けられた力は、その名を証明するかのように熱を持つ。火矢は続けざまにグールキングの身体に突き刺さり、腐った巨躯を燃やしていき、ついに傾いだ身体は地に倒れ伏す前にムジカとなって消えていった。

 ……ついにあのグールキングを倒したのだ、と。そうした感慨を抱くのも束の間、アスハは慌ててミライに駆け寄った。

 

「ミライ、怪我が……」

「問題ない」

「……問題ないわけないだろう、」

 

 事も無げに言うが、ミライの身体は傷だらけで、相当のダメージを負っているとわかる。それなのに少年は涼しい顔をするものだから、アスハは眉を寄せながら回復術を唱えた。

 

「癒しよ来たれ。“ファーストエイド”」

 

 ミライの身体が、柔らかな白緑の光に包まれる。それを何回か繰り返し、ようやく彼の身体から傷が消え去ったのを見てとって、アスハはようやく微笑んだ。

 

「君がいてくれなかったら、グールキングは倒せなかった。本当に感謝する。……ありがとう、ミライ」

 

 ふわりと浮かんだ晴れやかな笑みに、ミライは銀の目をぱちくりと瞬かせた。ぽかんと空いた口が、言葉を探すように開閉を繰り返す。

 

「……、…………」

「ミライ?」

「……ああ、うん、……」

 

 ……こういう時、どう言えばいいかと、迷って。

 しばしの沈黙の後、心底真面目くさった顔でそんなことを言うものだから、アスハはまたくすりと笑った。

 

「ありがとう、と言われたら、どういたしまして、でいいのではないかな」

「そうなのか」

「うん」

 

「……どういたしまして」

「うん、ミライ」

 

 アスハが嬉しそうに笑う。それを見たミライもまた、笑うまではいかないものの、瞳が丸く柔らかくなる。そんな会話をした2人は、共に地上へと戻っていった。

 

 

 

---

 

 

 

 アスハとミライが地上に戻ると、既に討伐が完了していた。夕暮れの中、戦後の処理のためか役人や町人が走り回っている。日常に戻りつつある街並みを見て、改めて元凶を倒したのだという安堵と疲労感がやって来て、アスハたちは真っ直ぐ宿を目指した。ロビーで別れ、それぞれの部屋に入り、旅の汚れを落とし、簡単な食事を摂って、ぼふん、とベッドに雪崩れ込む。闇の公国特有の刺繍が施されたクッションを抱え、ふう、とアスハは吐息を漏らした。

 

「色々なことがあった、な……」

 

 思い返せば、非常に目まぐるしい1日だった。あまり晴々しい旅立ちではなかったはずだが、これだけ忙しないと感傷的になる暇もない。それに、

 

「……ありがとう、か。……ふふ、」

 

 悲しい記憶だけが、刻まれたわけではなかったから。

 

「……くすぐったいもの、なんだね」

 

 微笑んで目を閉じる。異国の地のひとりの旅立ちは、思ったよりも穏やかな気持ちで始められそうだと、そう思いながらアスハは眠りに就いた。前途は明るいように思われた。

 

 そのはずだったのだが。

 

 

「……一人では、通行許可が出せない?」

 

 一夜明けて、さあ出発しようと門に訪れたアスハを待ち受けていたのは、思いもよらない言葉だった。呆然とするアスハに、門を預かる衛兵は続ける。

 

「そうなのです。昨日の騒ぎが原因かは不明ですが、ここに限らず闇の公国全体で魔物の数が増えています。キャラバンなど、複数人での旅ならまだ大丈夫でしょうが、一人での行動は危険であるとお達しがあったのです」

 

 なので、お通しすることはできません。

 眉を下げてそう言われると、アスハも食い下がることはできず、しかし戸惑いに俯いてしまった。

 

(そんな、……どうする。キャラバンに頼むしかないか?)

 

 羽根馬車で世界中を旅する旅団・キャラバンに乗り合いすれば、この問題を突破できるだろう。他の巡礼者の一行と合流しても可能だったかもしれない。しかし今はシャドウリデーカン。旅立ちの月であるシルフデーカンから2ヶ月も遅れているため、街にはキャラバンも巡礼者もいなかった。

 どうする。このまま留まってしまうと、兄の命令に背いてしまう。……どうすれば。

 そんな風に、アスハが思い悩んでいたとき。

 

「アスハ、」

 

「……ミライ!」

 

 名を呼ばれて振り返ると、そこにミライが立っていた。彼は少し首を傾げ、じっとアスハを見つめる。

 

「この街を出たいのか」

「ああ、月の都マハスティに行きたいのだけれど、1人では通行許可が通らないそうで……」

「なら、一人でなければいい」

「うん、そうだね。そうなのだけれど、」

 

「ぼくが一緒に行けば、2人になる。」

 

 事も無げに言ってのけたミライに、アスハは言葉を失くす。ぱち、ぱち、少女の琥珀色の目が瞬くのを見て、ミライは不思議そうに口を開く。

 

「アスハ?」

「……あ、す、すまない、少し、驚いて、……」

 

 アスハは改めて目の前の少年を見やった。銀の目に迷いはなく、揺らぎもなく、さっきのは心からの言葉なのだと気づかされる。冗談でもなく、慰めでもなく、本音そのものなのだと。

 

「……魔物が増えたそうだから、道中には危険が伴うだろう。私と一緒に戦ってもらうことになる。それでも、ミライ、

 …………私に、着いてきてくれるの?」

 

「ああ」

 

 アスハとしては、申し訳ない気持ちと覚悟とで、緊張の面持ちで尋ねたのたが、あんまりにもミライが呆気なく肯定するので、なんだか気が抜けてしまう。ぽかんとして、ふっと微笑みを溢して、……躊躇いとは無縁の人物だったな、とミライを見つめ直す。

 

「では……すまない、頼めるかな、ミライ」

「すまないはいらない、と前も言った」

「……ふふ、そうだったね」

 

 アスハは右手を差し出した。朝焼けを背に、晴れやかに微笑む。

 

「ありがとう、ミライ。これからよろしく」

「……どういたしまして、アスハ」

 

 

 

 

第5話 夜が明けて 了

 

 

 

 

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