研究開始.
1970年、まさしく激動の年である。
数年前にヴォルデモートと名乗る魔法使いが現れてから、イギリス魔法界は徐々に混乱していった。ヴォルデモートは当初、言葉による純血主義の啓蒙活動を行っていたが次第に暴力を用いた手段に傾倒していき、思想を受け入れないものに対していわゆるテロを起こすようになった。ここで厄介なのが、ヴォルデモート自身の実力の高さと彼のプロップスの多さである。元々純血主義である一族、ヴォルデモートのカリスマに当てられた若者たち、加えて力の発散を求めていた半グレの者たちが徒党を組んだのだ。そうした者たちは死喰い人と呼ばれ、数年のうちにイギリス魔法省としても対処が難しいレベルまでに勢力を伸ばした。この争いに終止符を打とうとしたダンブルドアはヴォルデモートと会合を組もうとするも、ヴォルデモート側は全てはねのけ徹底した姿勢を維持し続けた。
そして当年になると、ヴォルデモートはイギリス魔法界に対し戦争宣言をした。これにより魔法界の緊張は歴史上最も高まっていると報道された。すでにメディアはヴォルデモートを史上最強の闇の魔法使いとまで称しているのだ。
実際には今より四半世紀ほど前に恐れられたゲラート・グリンデルバルドの方が強大であったであろう。しかしイギリスにおいてグリンデルバルドは因縁の深いダンブルドアの影響もあり大きな事件を起こさなかった。さらに彼には自分の中の葛藤を超えた正義の元に行動する漆黒の意思が存在した。決して許されることではないが、彼の改革はヴォルデモートのような無意味とも言える無作為な暴力ではなかったのだ。そのためイギリス国内に限りグリンデルバルドよりもヴォルデモートの方が恐れられている。
兎にも角にもヴォルデモート側の影響力は日々拡大している。だがもちろん魔法界は何の対策を打っていないわけではない。過去にグリンデルバルドを後世に残る激戦の末に下しマーリン勲章、勲一等を受けたダンブルドアを中心に不死鳥の騎士団という対抗組織が先日設立されたのだ。
ミネルバ・マクゴナガルは校長室に呼び出されていた。マクゴナガルは窓から中庭でゴブストーンをしている生徒を見て思いを巡らす。
「校長から呼び出しですか。最近世の中物騒で気が休まりませんね。こんな時代だからこそ子供たちにはのびのびとしてもらいたいです」
ガーゴイルの石像まで着くとマクゴナガルは合言葉を唱える。
「アソートグミボール!」
ダンブルドア校長の部屋に入る合言葉はいつもお菓子の名前であった。これもダンブルドアの茶目っ気であろう。合言葉を聞くとガーゴイル像はどき、道が現れる。マクゴナガルは道を進み、ダンブルドアのもとまで歩み寄った。
「マクゴナガル先生よ、忙しい中よく来てくれた」
「いえ、構いません。ダンブルドア先生、私を呼んだのは例の件でしょうか」
マクゴナガルがダンブルドアに呼び出される時に、ヴォルデモート関係である回数が増えてきている。
「さよう。今週末に時間が取れないかのう。アーサーから死喰い人の拠点の一つが判明したという連絡が入ってな。不死鳥の騎士団で集まりたいと思うのじゃ」
「そうですか、幸い今週末には予定がありませんので参加させてもらいます」
ダンブルドアは少し申し訳なさそうに言う。
「すまないのう。本当はホグワーツの先生にはこのようなことを頼みたくなかったのじゃが、如何せん信頼できる人物がまだ少なくてのう」
「気にしないでください。私も納得した上で騎士団に入っているので。むしろ光栄に思っています」
マクゴナガルは胸を張って答えた。彼女の正義感は人一倍強いのだ。魔法界の現状を他の人よりも重く受け止めているのだろう。
「そうか、マクゴナガル先生がいてくれてとても心強いのう。ところで話は変わるのじゃが」
ダンブルドアは澄んだ青い目を少し細めて尋ねる。
「今年入ったジュール家の子のことじゃが、マクゴナガル先生は彼を一時期引き受けていましたな」
「アランですか?ええ、身寄りのない彼を島で発見してから数日間保護していました」
「彼のことをどう思う?なんでも良いから思うところを聞かせてくれないかのう」
マクゴナガルは困惑した。ダンブルドアほどの人が一生徒、それも新入生に関心を寄せたからだ。開心術をかけていないとはいえダンブルドアに全てを見通すような視線を向けられ、マクゴナガルは空気が重くなったのを感じる。
「どうと言われましても、すごく利発な子だと思います。最近フリットウィック先生の指導のもとで研究を始めたらしいですね。ホグワーツに入学して一ヶ月程度だというのにすごいことだと思います。私も彼の考えを聞いたときには驚きましたよ」
マクゴナガルはアランについて思うところを正直に伝えた。
「もう研究を始めたのか、大した者じゃのう。わしでさえ一年目は研究をやらなかったのに。他の先生に聞いても、優秀ないしは大人びていると答えるものが多かったのう。わしには少し気になることがあるんじゃ。彼はジュール家に引き取られる前はどこにいたんじゃ」
ダンブルドアは静かに言った。部屋にいた不死鳥のフォークスは先ほどからピクリとも動かない。
「無人島にいました。私自身にも信じられない光景でしたが、彼は一人で生きていました」
「人はのう、一人では生きていけないのだよ。子供は親の無償の愛を受けねば愛に気づけなくなってしまうのじゃ。年端も行かぬ少年が一人で生きていけるほど自然は優しくないぞ。さらに不可解なのは彼が文字を理解していたことじゃ。彼には何か背筋を凍らせるものを感じる。よく見ておいて欲しい」
マクゴナガルには理解できなかった。ダンブルドアがここまで警戒する理由を。アランは不可解な出自こそあれ、マクゴナガルから見ても模範的な優秀な生徒であったからだ。そのため自分の疑問を投げかける。
「彼のどこに不安を感じるのでしょうか。私から見れば彼は将来有望なただの生徒にしか思えませんが」
ダンブルドアはその一言に青い目を鋭く光らせた。
「それじゃよ」
「え?どう言うことでしょうか」
「あまりに似すぎているのじゃ。若き日のヴォルデモートに」
マクゴナガルはその名前にギクリと反応する。
「ヴォルデモートは、トムは孤児だったんじゃ。わしは彼がホグワーツにいた頃に教えていたのじゃがな、彼はたいそう優秀であった。ハンサムで友達に囲まれ、先生からの信頼も厚い。それに加えて他を寄せ付けない才能で堂々と主席で卒業したのじゃ。じゃが歯車はすでに狂っていたんじゃろうな。彼は卒業後姿をくらまして次に会った時にはヴォルデモート卿と自らを名乗っていた。彼の本質は学生時代は表に出なかっただけで、何一つ変わっておらんかったのだろう」
「アランが例のあの人みたい?彼は純血主義とは違う考えを持っていて、マグルに歩み寄ろうとしています。彼がそんなふうになるとは思えません!」
マクゴナガルはアランとヴォルデモートの類似点を聞いた時に思うところがあったため気が動転した。
「その思い込みじゃよ。もちろんわしだって彼がそんな事になるとは思いたくはない。じゃが今の世に第二のヴォルデモートを生み出す可能性が少しでもあるのなら未然に防ぐべきじゃと思う。純血主義でないからと言って、今度は純血主義を敵にする思想家になってでもしたらたまったもんじゃないだろう。大人びているとはいえ多感な時期じゃ。わしら大人が歪まずに導くことが大事であると思う」
ダンブルドアの言葉受けて、マクゴナガルは少し頭を冷やす。
「そうですね。取り乱して申し訳ありません。ただ私は彼のことを信頼しています」
「もちろん生徒のことを信頼するのはいい教師の証じゃ。ただこのようなこともあるということを知ってもらい、少しだけ気にかけて欲しいだけじゃよ」
「分かりました。フリットウィック先生には伝えますか」
「いや、彼には伝えなくてよかろう。彼はそう言った事を隠すのに向いていないからのう」
ダンブルドアは重い空気を発散させてマクゴナガルにウインクをした。
————
闇の魔術に対する防衛術に向かう途中、アランは取り巻きに囲まれたソフィア・セルウィンと会ったので挨拶をする。
「よう、ソフィア。さっきぶりだな」
「アランか、午前午後とスリザリン、レイブンクローの合同授業だからな」
ソフィアの言うように、午前中はマクゴナガルの変身術が合同授業で行われていた。ホグワーツの生活もすでに一ヶ月はすぎ、生徒たちも授業に慣れ始める頃だ。時間が立つにつれて、これこれの教科だと誰々が優秀であると言った噂が流れ始める。子供は噂好きなのである。中でもソフィアは全教科において素晴らしいと噂されている。
「確かにな。それにしてもソフィアは変身術が本当にうまいよな」
「先生が言っていることをやってるだけだ。逆に皆ができなさすぎるとさえ感じる」
「随分と要領がいいこって」
その発言を聞きソフィアの隣にいた少女が声をあげる。
「何よその言い方は。セルウィンさんは天才よ!」
何が少女の気に障ったのかアランには分からなかったが、とりあえず誤っておく。
「それはすまなかった。ソフィアは確かに天才的だ」
「分かればいいのよ。それとあなた馴れ馴れしすぎるわよ」
少女はふんすと言った。
「よさないか。アランも謝る必要はない。要領がいいのは自分でも理解している」
「自分で言うなよ……」
言葉を漏らすと少女がまた睨んできたのでアランはこれ以上口に出すのをやめた。アランたちが教室に入る頃にはすでにアイザックは席についていた。
「アランこっちこっちー」
「今行くー。どうだ、ソフィアも一緒に受けないか」
「いいだろう。どこで受けたって変わらないからな」
ソフィアがアランの隣の席を取るとその隣や後ろにもれなくスリザリン生が付いてきた。どうにもスリザリン生は群れるのが好きらしい。一人が好きなレイブンクロー生と正反対だ。
「準備はいいだろうか。先日は代表的な闇の魔術とその防衛法をいくつか紹介した。今日は諸君らに購入してもらった教科書をメインに授業を進めて行きたいと思う。ではまず『宵闇の生物へのへの対処法ー入門編』の目次を見てくれ」
アランは教科書の背表紙を見てあることに気づく。
「本の著者の一人にローザ・ラーネッドってあるけど、先生が編集に関わってたんだな」
「うわっ、本当だ!」
「ああ、ラーネッド先生は闇の生物のハンターとして有名だからな」
ソフィアはローザのことを元から知っていたらしい。
「知ってるのか?確かイタリアの人って言ってたけど」
「ラーネッドはベルモンドと並びヴァンパイア・ハンターとして名高い一族だ。主にトランシルヴァニアで活動しているらしいからイギリスでは分からないが、ヨーロッパ本土での知名度は高いものだろう」
「ヴァンパイアって吸血鬼のことか」
「そうだ。イギリスではあまり噂を聞かないがな。ヴァンパイア・ハンターの活躍は魔法使いの間では英雄譚として語り継がれているが、聞いたことはないか?」
「特にないな……」
吸血鬼までいるのか、この世界は。しもべ妖精という妖精やドラゴンまでいるんだ。何がいてもおかしくないか。
「世界には諸君らの知らないような怪物が多数存在する。スケルトンの項目を見てくれ。放置された白骨化した死体で悪霊が乗り移るなどの要因で人を襲うようになったものだ。こいつを実際に持ってきているからぜひ体験して欲しい」
ローザはカバンの中から赤い骨を紐で束ねたものを取り出した。
「これはスケルトンの中でも大量の血を浴びたものだ。スケルトンは血を浴びることで何度でも復活するようになる」
ローザが紐を解くと、赤い骨がカタカタと動きだし宙に浮かんでから人型を形成する。スケルトンは手に骨を棍棒のように持ち顔をあげた。生徒たちはその様子を怯えながら見守っていた。ローザは角材を手に取り赤いスケルトンに対峙する。
「いいか、よく見ておくといい。スケルトンは筋肉が無いから力が弱いというのは間違った解釈だ」
スケルトンはローザを見るや否や手に持った骨で殴りかかってくる。ローザはそれを真っ向から角材で殴り返すとスケルトンを押し返すことはできたものの角材は大きくそれてしまった。
「スケルトンは呪術的な力で動いているから見た目よりも力を持っている。そのため近づいて近接戦闘を行おうと思わないほうがいい。
衝撃呪文を唱えるとスケルトンはバラバラの状態になりピクリとも動かなくなった。そのままローザは赤い骨を集めて紐で縛り上げる。
「スケルトンは呪文に対する耐性は高く無いから距離を取ってから打てば容易に倒せるだろう。こいつらは手入れの行き届いていない墓地などに出没するから気をつけるように」
生徒たちは一連の攻防を固唾を呑んで見守っていた。
「だがこちらが常に万全の状態であるとは限らない。杖を持たない時、呪文が使えない時の対処も教えておこう」
ローザは骨を縛っていた紐を再度解き、形成された赤いスケルトンの前に立つ。腰からナイフを取り出しスケルトンに投擲する。放たれたナイフは一直線に進みスケルトンの頭部にあたり、スケルトンは再びバラバラになる。
「ものを的確に投げれば、スケルトンを破壊することは造作もないことだ。今はナイフでやったがこれは石でも構わない。額を狙うといい」
淀みない動きに拍手が湧き上がる。
「ほえー、ラーネッド先生って強いんだねぇ」
「先生は何気ないように投げてたが、実際やるとなるとかなり難しいぞ。それに自分に向かってくる敵意に場慣れしているよな」
アランは自分だったら先ほどのように動けないと思いながら感心する。
「ラーネッド先生は自ら闇の生物の調査に危険な場所を行き来しているらしい」
「ソフィアは随分と、先生について詳しいんだな」
「ああ、家のものが何かと情報をくれるんだ」
ここまでの才能だと家族も熱心なのかな。名家と言われていたし、色々とこの世界の教養を身につけているんだろうな。
「次に紹介するのはウネと呼ばれる妖草だ。こいつは単体だとそこまで危険ではないが繁殖力が強いのが厄介なところだ」
ローザは種を生徒に見せた後、レンガに投げつけた。すると種が衝撃に反応したのかいきなりレンガから草が生え始める。葉は20cmほどの線形で肉厚なものであり中心部から放射状に広がっていた。ウネはサボテンのアガベのようなシルエットをしていて、普通の植物と異なり意思を持っているかのように葉っぱを揺らしている。
「ウネはどんなところからでも生える。土があろうとなかろうとだ。ウネには棘があり動物の血を吸う事で成長するが足が生えて動くことはないから安心してほしい」
ローザが冗談めいて言うが、生徒たちはウネの気味の悪さに顔が引きつるばかりだ。ローザは生徒たちをウネの周りに集め説明を続ける。
「この妖草は明るいところだと分かりやすいが、暗い場所や森林の中だと普通の草と見分けがつきにくいから注意しなくてはならない。ウネを踏むと怪我をする恐れがあるからな」
ローザがウネに生肉を放ると、ウネは葉の揺らしを大きくして生肉を葉の上で数回転がした後放り投げた。生肉を見ると確かに傷ついているのが分かる。
「こいつは棘があるものの危険で無いと言った理由は、明確に獲物を襲っているのか分からないからだ。植物というだけあって血だけを養分としているわけでは無いのだろう。さらに繁殖力があっても強度はそこまで高く無い。ウネを退治するのは簡単だ。
杖先から火が放たれると、ウネは葉を大きく揺らしながら全て燃えつき灰になった。
「強力な回復役になると知られているマンドラゴラ、諸君がマンドレイクと呼ぶ生物はウネの進化の一種に当たると言われている。マンドレイクはかなり重要な役割を担うから、きっと薬草学か魔法薬学の授業で扱うだろう。さてここまで何か質問はあるかな」
緊張感はあるものの生徒たちは未知との出会いに毎回の授業を楽しんでいた。
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大広間はコウモリに加えてジャック・オー・ランタンや蜘蛛の巣の飾りによって普段とは違う雰囲気を醸し出している。食事用の皿は銀製ではなく金色に輝いているし、数千のキャンドルはとても華やかだ。
「さすがイギリス魔法界でも名高いホグワーツだな。まさに豪華絢爛だ」
「僕もびっくりだよ!ハロウィンパーティってやっぱり心踊るね!」
レイブンクローの二人は大広間の変容っぷりに驚く。ハロウィンパーティは新入生が迎えるホグワーツでの初めての行事だ。生徒には名家出身の者が多いため、パーティの質も高いものとなる。ホグワーツには出自は関係ないというが、上流階級の雰囲気もしっかりと漂っているのだ。
食事は寮ごとに取るのが基本である。レイブンクローには他寮と比べると内向的な生徒が多い。そのため普段の食事はさっさと済ませてしまう生徒が多いが、今宵はパーティということもあってどの生徒も浮かれ気味であった。アランとアイザックは普段そこまで会話しない他のレイブンクロー生と関係を築こうと試みて、そのうちの半分くらいは話に乗ってくれたため大いに盛り上がった。アイザックは一人で食事を進めるフレネルにも声をかける。
「フレネルさんだよね?僕はアイザック・オリバンダー、よろしくね」
「え?ええ。よろしく……」
「どうしたの?驚いた顔して?」
「いえ、失礼……私はケイト・フレネルよろしくね、オリバンダー君」
ケイトはウェーブのかかった茶髪の少女で特に真面目に授業を受けている生徒である。授業では積極的に発言をして寮における得点も稼いでいるのだが、少し寄りつきにくいオーラを出しているため彼女は孤立気味であった。
「ケイトも話に加わらない?」
「ありがたいけど遠慮するわ。この後用事があってもう行くから」
「そっかー。前に君が図書館で勉強しているの見かけたよ。君を見て僕も頑張らなきゃって思ったんだ!」
「ありがとう。お互い頑張りましょう」
そう言ってケイトは大広間から出て言ってしまった。
「あいつに話したって無駄さ。いつも勉強のことしか考えてないようなやつだからさ。その点アランはいいよな。そんなに気張らなくてもなんでもできるって感じがしてさ」
アイザックたちと仲良くなったレイブンクロー生は立ち去るケイトを見ながら言う。
「なんでもは出来ないよ。箒とかはいつまでたっても乗れる気がしないし」
「確かに。でもそう言うところがいいんだよ。お前は変に驕ってないしな」
アランの発言にレイブンクロー生が笑いながら返事をする。
パーティが3分ほど経った時には、皆席を立ち自由に移動しながら会話や食事を楽しんでいた。
「二人とも楽しんでる?」
「うん。アンバーも満喫してるようだね」
アンバーはアップルサイダーを片手にアランたちのもとにやって来た。レイブンクローとハッフルパフは魔法薬学と魔法史の授業で一緒になるため三人はよく顔を合わしている。寮ごとに授業の時間割は異なっているが、一週間のうちにどの寮とも合同授業があるようにうまくカリキュラムが組まれているのだ。これも互いの寮で競争心を高めるためである。
「当然よ!なんたってパーティよ!毎日パーティでもいいと思うわ」
「こんな豪勢な料理を毎日作ってたら屋敷しもべが過労で倒れるぞ」
「そんなことないわ。屋敷しもべは人間のために働くのが幸せだって聞いたことあるし彼らも喜ぶわよ」
アンバーが真面目な調子で言っているのを見てアランはため息をついた。アンバーと話しているうちにまた一人の生徒がアランのもとにやって来た。
「やあ、ハロウィンは楽しんでいるかい」
ソフィアがアップルサイダーを片手に挨拶を投げかける。アランは予想だにしなかった人物の来訪に少し驚いた。
「ソフィアか。意外だなお前がスリザリン生の中からこっちまで来るなんて」
「ふふ、つまらなかったからな。パーティだと言うのに堅苦しくてうんざりだ」
アンバーはアランの服をちょいちょいと引っ張り小声で尋ねる。
「ねぇ、あんたあのセルウィンと仲良かったの?どうやって知り合ったのよ」
「どうもこうも一緒に授業を受けていたら自然と話す仲になったぞ」
「高飛車なセルウィンが?自然とそうはならないでしょ」
「ふーん、私はそう思われているのか。気にしていないからいいが」
アンバーの小声はどうやらソフィアに聞かれていたようだ。
「ごめんね。聞こえちゃった?あたしはアンバー。アンバー・マクミランよ」
「別にいいさ。私はソフィア・セルウィン。見たところ君はハッフルパフというのにアランとは仲が良いようだが」
ソフィアは本当にアンバーの言葉を気にしていないらしく、アンバーはばつが悪い思いをした。
「ええ、家族ぐるみの付き合いなのよ。入学前からの知り合いだわ。そしてその発言はブーメランよ。他寮と交わらないスリザリン代表のあなたがよく言うわね」
「家族ぐるみか……なるほど。スリザリン代表と言われたが、私は友人がほとんどいないんだ。そんな中でもアランは私を見てくれるんだ」
アンバーはアランに視線を送るが、アランはアイザックと話していてこっちの会話を聞いていないように見える。
「ふぅん、まあ良いわ。あんたとも話してみたいと思っていたわ。これからよろしくね」
「もちろん。お互い頑張ろうではないか」
二人の会話が穏やかに進む中、突如遠くから大きな破裂音が聞こえて来る。
「きゃっ!何事っ?あっ、あれは、ジョーダン先輩っ!セルウィンまたね」
アンバーはまるで有名人でも見つけたかのような表情でマクゴナガルに怒鳴られているグリフィンドールの上級生のもとへ向かって行った。
「ふふ、アンバーといったか。彼女も面白いではないか」
「ああ、アンバーは面白いぞ」
ソフィアの独り言をアランが拾う。その後もどんどん破裂音が増え、しまいにはカラフルな煙幕まで立ち込めるようになった。
狂いつつある世界のことを忘れ、ダンブルドアは心から笑って平和なハロウィンパーティの光景を見ていた。しかし新たな憂いのために、気が休まることは決してなかった。
【用語解説】
ラーネッド :悪魔城ドラキュラで少しだけ登場するヴァンパイア・ハンターの一族.
悪魔城ドラキュラをタグに追加しました.が別に本筋には関わりません.ドラキュラの世界観に深入りはしません.
引き続きよろしくお願いします.