レースは前を走る勇を追う拓海と、その拓海を抑え続ける勇の2人の争いが続いていた。
時折、拓海が仕掛ける素振りを見せるけど、それに勇が機敏に反応して抑え続けている。
レース中盤には最後尾を走る桃のステッカーが特徴的なマシンを周回遅れにしたけど、今の所は勇と拓海のポジションが入れ替わる雰囲気は感じられない。
それほどに勇のブロックが上手いんだよね。
涼兄ィは勇の意識の隙を突くのが攻略法って言っていたけど、あれだけ警戒していると難しいと思う。
「なんやこのまま終わりそうやな。」
奈臣の言葉に頷く。
確かにプレッシャーで拓海が崩れることはなくなったけど、今の様子を見るに勇を前に出したのは失敗だったんじゃないかな?
レースも終盤となり残り3周。
その周回で起こった。
ついに拓海が勇をオーバーテイクしたんだ。
きっかけは2度目の周回遅れとなる桃のステッカーが特徴的なマシンに、ヘアピンでちょうど追い付いたことだ。
拓海が一番外から被せる様に仕掛け、桃のステッカーが特徴的なマシンと挟む様にして勇のラインを削る。
そして勇の前に出た拓海は全力でアタックを開始した。
勇が拓海に必死に追いすがるけど、残り3周では拓海の背中に張り付いても、拓海のミスを誘えるか微妙なところだ。
「オーバーテイクをしようとすれば、当たり前だが前のマシンに注意を向けなければならない。この時ばかりは如何に勇でも後ろへの注意が疎かになり、どうしてもブロックが甘くなる。」
「せやけど、これは偶然やろ?たまたまヘアピンで周回遅れに追い付いたから拓海は前の2人をまとめて抜きにいけたんやから。」
「確かに運の要素が強いが、そのワンチャンスをものに出来たのは大きい。なにせもうレース終盤だからな。背中に張り付かれても藤原の集中力は持つだろう。」
逃げる拓海に追う勇。
他の周回遅れにも追い付くけど、拓海はミスをせずにしっかりとパスをしていく。
そして残り周回数が少なくて慌てたのか、逆に勇にミスが出た。
これでレースの勝敗は決まった。
拓海がチェッカーフラッグをトップで駆け抜けると、その後に勇と武が続く。
オートハウスとしてはナイトキッズに敗れた形になって残念だけど、勇と武にはいい経験になったと思う。
でもそれは拓海も同じかな?
これで自分の走りに自信を持てば拓海は一層手強い相手になる。
うん、そう思うと楽しくなってきた。
表彰式が始まると拓海は特に嬉しそうな顔をせずに頬を掻いていた。
もしかしたら今日のレースの勝ちに納得いっていないのかもしれない。
たしかにあの場面がこなければ勝つのは難しかったからなぁ。
それでも勝ちは勝ちだ。
勇に拍手をされると拓海は気恥ずかしそうに苦笑いをする。
そして控え目にだがガッツポーズすると、会場から割れんばかりの拍手が降り注いだのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。