転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第31話『お節介』

慣らし走行を終えてピットに戻ってくると、平くんと一緒に来てた女の子にめっちゃ睨まれた。

 

「ちょっと!なんでカッちゃんが追い付けないのよ!」

「茂波、やめろよ。」

 

俺に文句を言ってくる女の子を、一緒に来ていた少年が止める。

 

そんな2人にサーキットの管理人さんが苦笑いをしながら告げた。

 

「茂波ちゃん、ノブくん、カペタくんが追い付けないのも仕方ないんだよ。なんせその子は去年のジュニアカデットクラスのチャンピオンだからね。」

「「…えぇー!?」」

 

そんなに驚くことか?

 

「さて、それじゃ自己紹介しぃや。」

 

奈々子監督に促されたので俺と奈臣は自己紹介をする。

 

「俺は高橋 光介。今年小4だよ。よろしくね。」

「俺は源 奈臣。光介と同い年で、そこのオバハンの息子や」

「オバハンは余計や。」

 

ペシッと軽く奈臣の後頭部が叩かれる。

 

ツッコミの威力がいつもと違う。

 

奈臣と顔を見合わせると2人で意味深な笑みを浮かべる。

 

「ほら、こっちも。」

 

そう言って髭が似合うおじさんが子供達を促す。

 

「…鈴木 茂波(すずき もなみ)。」

「俺は安藤 信(あんどう のぶ)。カペタと茂波と一緒で今年小3。よろしくな。」

 

茂波ちゃんは腕を組みながらツンッて感じで顔を背けてるけど、信くんは愛想よく手を差し出してきた。

 

コミュニケーション能力高いなぁ。

 

「ほら、カペタも。」

「…うん。」

 

カートに乗ってた少年が涙を袖で拭ってから顔を上げる。

 

「俺、カペタ!ノブと一緒で小3!」

「はは…こいつは平 勝平太って言います。カートは始めたばかりだから色々と迷惑をかけると思うけど、今後ともよろしくな。」

 

ワシワシとカペタくんの頭を撫でながら髭のおじさんがニッと笑う。

 

チラリと横目で奈々子監督の顔を見ると、若干だが赤くなっているのがわかる。

 

ほほう?

 

俺と奈臣はアイコンタクトをする。

 

数年に渡り時に競い合い、時にコンビを組んできたから、ここら辺は阿吽の呼吸だぜ。

 

「それで、おじさんの名前は?」

「おっとごめんな。俺は平 茂雄(たいら しげお)って言うんだ。仲のいい人にはシゲとかシゲさんって言われてる。」

「そうか~。そんでシゲさん、1つ聞きたいんやけど、シゲさんってカートに詳しいんか?」

 

奈臣の問いかけにシゲさんは首を横に振る。

 

「いや、ぜんぜん。フレームのアライメントとか4ストのエンジンとかも知らなかったよ…色々と迷惑をかけてごめんな。」

「気にしないでいいよ、シゲさん。それよりも奈々子監督と連絡先を交換しといた方がいいよ。」

 

俺の言い分にシゲさんは目が点になる。

 

「せやな。シゲさん、免許取得の条件とかも知らんのやろ?」

「め、免許?カートに乗るのに免許が必要なのか?」

「公式レースに出場するには必要だよ。他にも色々と知っといた方がいいことあるから、相談する相手が必要でしょ?だから奈々子監督と連絡先を交換しといた方がいいって言ったんだよ。」

 

シゲさんは頭をガシガシと掻くと奈々子監督に目を向ける。

 

「えっと…そういうことらしいので、その…連絡先いいでしょうか?」

「へっ?あっ、いや…いいですよ?」

 

おうおう、2人とも気恥ずかしそうにして…青春してるねぇ~。

 

「む~…あのババア…!」

 

おや?茂波ちゃんが怒ってらっしゃる。

 

もしかしてそういうこと?

 

俺は茂波ちゃんの肩に手を置く。

 

「なによ?」

「素直に応援するのもいい女の条件だと思うよ?」

「…言われなくてもわかってるわよ!」

 

まだ幼いとはいえ、そういう機微がわかるのは女の子なんだなぁと思う。

 

でも、ここで女の子をへこませたままはよくないよなぁ。

 

よし!1つボケておこう!

 

「それに茂波ちゃんが奈々子監督の色気と張り合うには10年…ぐへっ!?」

 

鳩尾に思いっきり肘打ちをくらった。

 

「ふんっ!」

「…いやぁ、流石やな。俺でもそこまではようボケられへんわ。」

 

こうしてカペタくん達との初遭遇した日は終わりを迎えた。

 

後日の今シーズン初戦では、無事に俺と奈臣でワンツーフィニッシュを飾ることが出来た。

 

そして全国大会出場が決まったシーズン終盤、ついにカペタくんがジュニアカデットクラスでデビューを果たすのだった。




本日は3話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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