勝平太のデビュー戦の本戦が始まった。
予想通りにローリングスタートにもたついた勝平太を、勇と武が勢いよく第1コーナーに突っ込んでオーバーテイクする。
そしてオーバーテイクをした2人はそれぞれの役割りにわかれた。
勇はトップを走る拓海の背中を追い、武は後方の勝平太を抑える…はずだったのだが、勝平太は後続にも抜かれてポジションを7位まで落としているので、武は彼がポジションを上げてくるまで警戒しながら前の2人を追っていく。
スタートを成功させてトップを走る拓海は背中に大きなプレッシャーを感じると、後ろにいるのが勝平太ではなく勇なのだと気付いた。
(マジかよ…どうする?)
追われることが苦手な拓海はこの先どうするか考える。
(…抜かせるか?)
コーナーを攻める際に拓海はそれとなくラインを譲るが、勇は見向きもしない。
これに拓海は内心で舌打ちをする。
(そうだよなぁ…流石に何度も前に出てくれねぇよなぁ…)
これまで拓海は勇と3度に渡りレースで戦っている。
その内訳は拓海が3勝という結果で完勝しているものの、拓海は実力の結果だとは思っていない。
拓海は何度もそれとなくラインを譲る動きをするが、勇はピッタリと拓海の背中に張り付き動く様子はない。
もしこの状況が続くのならば、拓海は勇のプレッシャーに耐え続け、精神的に疲労した状態で終盤にミスをせずにゴールまで走り抜けなければならない。
だが人は大なり小なりミスをするものである。
その道のプロともなればミスの可能性は限りなく低くなるが、それでも決して0にはならない。
現在アマチュアである拓海にミスをするなというのは酷な話だ。
拓海は背中に勇のプレッシャーを感じながら父の文太の言葉を思い出していた。
『拓海、人間ってのはどんなに気を張っててもミスをしちまうもんだ。それこそプロと呼ばれる連中でもな。』
『だがな、プロは同じミスでもそれを自分がコントロール出来る範囲に納めちまうんだ。』
『今は意味がわかんねぇかもしれねぇが、覚えておけ。』
文太の言葉を思い出した拓海は、頭を掻きたい衝動を抑えながらカートを操っていく。
(親父…本当に意味がわかんねぇよ!)
そんな感じで拓海が勇のプレッシャーを感じていた頃、スタートに失敗して動揺した勝平太は、予選と本戦の勝手の違いに戸惑っていた。
(うわっ!?前の人が邪魔で気持ちよく走れない!)
スタートに失敗した勝平太は7位までポジションを落としている。
前を走るマシンは自分より遅い。
だが、気持ちよく走ろうとすると前のマシンが邪魔になる。
2周目に入った辺りで勝平太は1つの決心をした。
(やっぱり、ブレーキをギュッてしないとダメだ。)
コーナーに突っ込みつつ勝平太はマシンに語り掛ける。
(ブレーキをギュッてするぞ。嫌かもしれないけど、我慢してくれよな。)
見事なブレーキングでオーバーテイクをした勝平太は、直ぐに次の前を走るマシンに目を向ける。
(気持ちよく走るには前に誰かいたらダメなんだ。だから、一番前に行かないと!)
勝平太は順調にポジションを上げていき、4周目に入る頃には4位までポジションを上げていた。
(よしっ!次!)
前を走るマシンに勝平太は徐々に追い付いていく。
そして前のマシンの背中に張り付いた勝平太はコーナーで仕掛けようとする。
しかし…。
「えっ?うわっ!?」
前を走るマシンに…武にそれとなく走行ラインをブロックされて行き先を失った勝平太は、追突しない為に予定以上に減速をしてしまい、武との距離が大きく開いてしまう。
(くそっ!もう1回だ!)
見事な走りで勝平太は武の背中にあっという間に追い付く。
だがオーバーテイクをしようとすると走行ラインをブロックされてしまい、前に出ることが出来ない。
(ダメだ…抜けない…気持ちよく走りたいのに…)
3回、4回とコーナーの度にオーバーテイクを仕掛けるが、その尽くが武にブロックされてしまう。
その後も勝平太は諦めずに仕掛けるが、その全てを武に阻まれ続けてしまう。
そんな状態が2周、3周と続いていき、レースはいよいよ終盤戦に突入するのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。