転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第37話『体調管理も選手の仕事』

光介は2度目の全国大会の日を迎えていた。

 

今年は惜敗から一皮剥けた拓海も出場しており、去年と比べてハイレベルになると予測されている。

 

だがそんな大会当日になって光介は体調を崩してしまっていた。

 

「光介、解熱剤と胃薬だ。今のうちに飲んでおけ。本戦を迎える頃には多少は楽になってる筈だ。」

「…うん、ありがとう涼兄ィ。」

「薬を飲んだら横になって楽にしていろ。適当な時間になったら起こす。」

 

素直に横になった光介を見て、涼介は気取られないように小さくため息を吐く。

 

医者になるために勉強をしている涼介から見ても、光介はレースに出すべきではない状態だ。

 

そんな光介を診に奈々子が姿を現す。

 

「風邪やね。暖かこうして寝とれば治るわ。」

「監督、光介ですが…。」

 

奈々子は涼介の言葉を遮る様に首を横に振る。

 

「体調管理も選手の仕事や。酷やと思うけど、予選の時間が来ても起こさんでええ。」

 

奈々子がそう言った時、奈臣がやってくる。

 

「オカン。」

「聞いとったやろ?起こしたらアカンで。」

「…光介はレーサーや。エンジン音が聞こえたら起きるで。」

 

奈々子は睨む様にして奈臣を見る。

 

「走らせぇ言うんか?」

「その決断をするんもレーサーの仕事やろ?」

 

頭を掻きながら奈々子はため息を吐く。

 

「あくまで光介くんが起きたらや。」

「わかっとる。」

「せやったら準備せぇ。他人様の心配出来る程、あんたに余裕はないんやからな。」

 

しっしっ、と手振りで奈臣をおいはらうと、奈々子は涼介に目を向ける。

 

「涼介くん、奈臣に構わんでええからな。無理と判断したら私に言うてや。そしたら光介くんを棄権させるからなぁ。」

「…いいんですか?」

「こういう時に憎まれ役を引き受けるんも大人の役目や。」

 

そんなやり取りがあってからしばらくすると、予選の時間が来て各選手が走り始めた。

 

すると、光介が目を覚ました。

 

「光介、大丈夫か?」

「涼兄ィ…俺のマシンは?」

「…準備は出来てる。」

「そっか。」

 

スポーツドリンクを飲んで水分を補給すると、光介はヘルメットを被って準備を済ませる。

 

「じゃあ、行ってくるね。」

「無理はするなよ。」

「うん。」

 

サーキットに出てアタックを開始した光介だが、体調不良のせいかやはり走りにキレがない。

 

(棄権させるべきか?だが…。)

 

如何に大人びていても涼介とてまだ未成年の子供である。

 

決断出来ずとも致し方ないだろう。

 

結局、涼介は決断出来ないまま時が過ぎ、予選は終わりを迎えてしまう。

 

そして体調不良の中でアタックをした光介は、公式戦の予選で初めての4位となったのだった。




本日は3話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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