予約投稿をミスして7:30に投稿してしまいすみません。
光介と奈臣にとって2度目となる、ジュニアカデットクラスの全国大会本戦が始まった。
各マシンはスムーズにローリングスタートを決めると、群がる様に連なって第1コーナーに雪崩れ込む。
予選で1位となった奈臣がトップのまま第1コーナーを抜けると、その後にカイ、拓海、光介と続いていく。
第1コーナーを抜けるとカイは前の奈臣に集中していたが、拓海は後ろを走る光介を気にしていた。
(体調を崩してるって話だったけど、それでもプレッシャーがやばいぜ…)
拓海は次のコーナーでそれとなくラインを開けると、光介はあっさりと前に出た。
(チラッと見えたけど、いつもの楽しそうな顔じゃなかったな…本当に体調が悪いんだ。)
光介の後ろについた拓海は、改めて光介の走りに驚きを感じる。
(凄いな…タイヤマネジメントをしながらここまで速く走れるのか。)
光介は涼介の指示でタイヤマネジメントを重視した走りをしている。
これは涼介が体調不良の光介を最初から全開で走らせると最後まで持たないと判断したからだ。
ステアリングを握り直した拓海は集中力を高める。
(光介、悪いけど盗めるだけ盗ませてもらうぜ。)
しばらくしてレースも半ばまで過ぎた頃、奈臣とカイは3位に位置する光介を3秒程離しながらトップ争いを演じていた。
(カイ、邪魔すんなや!今日は俺が勝つんや!)
内心で文句を言いながら、奈臣は奈々子の言葉を思い出す。
『奈臣、今日は好きに走ってええで。』
『光介くんは体調不良やからな。状況次第では途中で棄権させるかもしれへん。』
『せやから今日、オートハウスが勝てるかは奈臣…あんた次第や。』
ステアリングを掴む奈臣の手に力が入る。
(体調不良やろうと一番怖いんは光介や。あいつがこのまま終わるなんて考えられへん。)
誰よりも光介の後ろを走ってきたからこそ気付いているのだ。
いつも見てきたあのとんでもなく速い走りの中でも、光介はまだどこかに余力を残していた事を。
だからこそ奈臣は必死で逃げていた。
光介が目覚める前にコンマ1秒でも多くアドバンテージを稼ぐ為に。
そしてレースもいよいよ終盤を迎えようとしていた頃、涼介はホームストレートに戻ってきた光介に向けて掲示板を掲げる。
(見るほど余裕がないのか?それとも、見てもペースを上げられるほど余裕がないのか?)
残り4周というところだが光介は4位にポジションを落としている。
光介の後ろについてタイヤを温存していた拓海が、中盤に差し掛かったところでオーバーテイクを仕掛けたからだ。
「だるい…喉渇いた…関節痛い…気持ち悪い…。」
第1コーナーに向かいながら光介はぼやく様に呟く。
「えっと…あと何周だっけ?確認するの忘れちゃったよ…。」
第1コーナーを抜けると光介はまたぶつぶつと呟きだす。
「うえっ…気持ち悪い…あと何周かわからないけど、早く終わらせて横になりたい。」
早く終わらせる。
コンマ1秒でも早く。
そう考えた次の瞬間、体調不良により成りを潜めていた能力が目を覚ます。
そしてこれまでにない程に力強く走り方を光介に伝えてくる。
まるで全力を出せる事を悦ぶ様に。
「あぁ…はいはい、わかったよ。わかったから、早く終わらせられる走り方を教えてくれ。」
次の投稿は11:00の予定です。