転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第39話『飛ぶが如く』

(奈臣達のペースは落ちてきてる…よし!)

 

拓海は前を走る2人を猛追しながら、自分が仕掛けたタイミングが間違っていなかった事を確信した。

 

(沙雪さんの読みはすげぇな。こんなにバッチリ当たっちまうなんて…。)

 

拓海に前半抑えて中盤から仕掛ける展開を提案したのは、ナイトキッズの美少女マネージャーである沙雪である。

 

沙雪は光介の体調不良と各選手の予選タイムから、その後のレースの展開を読んだのだ。

 

とある世界線では相方のナビシートに座り見事なナビゲートをする沙雪だが、この世界では幼少時からモータースポーツに関わってきたため、レース展開に対する読みは涼介に比肩する程に成長したのだ。

 

断じてバラストではない。いいね?

 

コーナーを抜ける毎に、拓海は奈臣達との差を詰めている手応えを得る。

 

(…いける!このままいけばファイナルラップ前には追いつ…っ!?)

 

その時、拓海の全身に鳥肌が立った。

 

(親父?)

 

拓海の感じ取ったもの…それは豆腐の配達帰りに86で秋名山の下りを攻めている時の文太と同等の気配だった。

 

首筋にチリチリと感じる圧力に負け、拓海はコーナリングをしている最中にチラリと後ろを確認してしまう。

 

するとそこには光介がいた。

 

「っ!?マジかよ?!」

 

目に映った光景を確認する様に拓海は、もう一度コーナリングの最中に後ろを確認する。

 

すると拓海は光介のマシンに羽が生えている光景を幻視した。

 

(やばい…やばいやばい!)

 

拓海から奈臣達を追うという意識が完全に無くなってしまった。

 

今の拓海にあるのは後ろから追い上げてくる光介から逃げる…この思いだけである。

 

(あれはダメだ…一度でも前に出られたら『今の』俺じゃなにも出来ない。)

 

モータースポーツでは戦略や駆け引きが重要視されているが、それはマシン毎に個性が存在するからだ。

 

だがカートはその個性の差が限りなく小さい。

 

だからこそドライバーの技術の差が非常に現れやすいのだ。

 

それ故に面白いというカートファンは多いのだが、当事者である選手にとっては時にたまったものではない出来事が起こる。

 

それは…どれほど完璧に戦略や駆け引きで相手を出し抜いても、力付くで結果をひっくり返されてしまう事だ。

 

それが今、拓海の身に起ころうとしている。

 

拓海は必死に逃げる。

 

今出来る全部を出しきって。

 

温存なんてしている余裕は欠片もない。

 

だが現実は非情なもので、光介はどんどん差を詰めてくる。

 

そして拓海の必死の走りも空しく、光介に追い付かれてしまう。

 

(ブ、ブロック!)

 

ナイトキッズで揉まれ成長した拓海は、ジュニアカデットクラスにおいて間違いなく全国レベルの選手である。

 

だが光介はそんな拓海のブロックを嘲笑うかの様に、あっさりとオーバーテイクを決めてしまった。

 

自分の全力が欠片も通用しない。

 

その現実に拓海の思考は真っ白になってしまう。

 

だが…。

 

「拓海ィ!」

「拓海くん!」

 

樹と沙雪の声が届くと、拓海はモチベーションをなんとか持ち直すことが出来た。

 

ポジションを1つ落とした拓海はホームストレートに戻ってくると、樹が掲げるボードに目を向ける。

 

(指示はペースキープ…付き合うなってことか。まぁ、追い縋れって言われても無理だけど。)

 

大きく深呼吸した拓海はステアリングを握り直す。

 

「まぁそれでも、どさくさ紛れに2位をかっさらうぐらいは出来そうだよな。よし、やってみるか!」

 

冷静さを取り戻し自分のペースで走り出した拓海は、虎視眈々と機会を待つのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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