サーキットに行ってカートに乗った翌日、啓兄ィと涼兄ィの二人もカートに乗る事が決まった。
ただ啓兄ィはミニバイクがメインだし、涼兄ィはレースには参加せずにあくまで趣味としてやるそうだ。
そんな話の後は先日のおさらい…とでも言うのかな?
涼兄ィに俺の走りについて説明をさせられた。
「え~っと、いいところでアクセルを抜いて、キュッとブレーキを踏んで、スってステアを切って、グってまたアクセルを踏むんだよ。」
「わかんねぇよ!」
啓兄ィにおもいっきりツッコミをされた。
仕方ないやん!
そうとしか説明出来ないんやもん!
涼兄ィはドライビングの本を片手に、なんとか俺の説明を解読しようとしてる。
そんな涼兄ィは…。
「はぁ…仕方ない、次からは父さんに頼んでビデオを持ち込もう。映像を見ながらなら、少しは理解出来るかもしれないからな。」
と言った。
映像解析の発想が出るとか…本当に小学生?
身体は子供、頭脳は大人を地でいってるよ…。
◆
カートを始めてから1ヵ月、今日は地元のカートチームとの走行会の日だ。
『オートハウス』っていうチームなんだけど、父さんが言うには全国レベルのレースにも出場する強豪チームらしい。
父さんはオートハウスの監督と伝手があるらしく、それを使って今日の走行会をセッティングしたそうだ。
そんなオートハウスの監督さんが、俺達のところに挨拶にやってきた。
「私はオートハウスの監督の『源 奈々子(みなもと ななこ)』や。今日はよろしくなぁ、涼介くん、啓介くん、光介くん。」
サーキットに来る前に父さんから聞いた話だと奈々子さんは、研修医時代にお祖父ちゃんの弟子として腕を磨いたらしい。
そして今では独立し、開業医として頑張っているそうだ。
奈々子さんはカートの全日本選手権で優勝した経験を持っているらしいんだけど、『胸が大きくてステアリングを操作できない』からカートを引退したそうだ。
うむ、たしかに見事なものをお持ちで。
奈々子さんはサーキットの男性諸兄の視線を一身に集めている。
子持ちではあるが夫とは離婚済。
独り身の野郎共が目を向けるのも仕方ないぐらいの美人さんである。
そんな奈々子さんがツンツン頭の少年に声を掛ける。
「奈臣(なおみ)!あんたもこっちに来て挨拶せぇ!」
声を掛けられた少年はしぶしぶといった感じでこっちにくる。
「なんや、おかん。こっちは忙しいんやけど。」
「アホか、どこが忙しいねん。プロを目指すんならちゃんと挨拶出来るよぉになれって言うたやろ。」
「せやったか?」
ツンツン頭の少年は、どうや奈々子さんの息子らしい。
ツンツン頭の少年が俺達に目を向ける。
そして…。
「おかん、いくらおとんと別れて独り身やからって子供はあかんやろ。」
そんなボケをかましてくれた。
奈々子さんが見事なツッコミを頭にいれる。
「なに言うとんねん、このマセガキが!おかあちゃんはそこまで飢えてへんわ!」
「せやけど、はよせな旬が過ぎてまうやんか。」
「アホか!おかあちゃんはまだまだピチピチや!」
「うわぁ…きっついわぁ~…。」
少年は奈々子さんの拳骨に挟まれて、コメカミをぐりぐりされてる。
めっちゃ痛そう。
「ほれ!いつまでもアホなこと言うとらんで、はよ挨拶せぇ。」
平手で後頭部をスパンッと叩かれた少年が、若干涙目で挨拶をしてくる。
「俺は源 奈臣(みなもと なおみ)や。そこのおばはんの息子で、6才の小1や。よろしくな。」
「おばはんは余計や!」
そんな親子漫才が終わると俺達も挨拶をし、いよいよ走行会が始まるのだった。
次の投稿は15:00の予定です。
源親子のなんちゃって関西弁をどうかご容赦ください。