転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です。


第40話『後に語り継がれるレース』

レースも残り2周となろうとしていた頃、トップを走っていた奈臣は突如感じた圧倒的なプレッシャーに身体を震わせるが、それと同時に歓喜の気持ちを抱いた。

 

(っ!?来たな!)

 

後ろに張り付いているカイを抑えながらコーナリングをしつつ、奈臣は一瞬だけチラリとプレッシャーの主に目を向ける。

 

するとそこには、やはり光介の姿があった。

 

(冗談やろ?羽があったで…ほんま、どこまで常識外れなんやお前は。)

 

そう考えながらも奈臣は笑みを浮かべる。

 

それでこそライバルと認めた男だと思うからだ。

 

コーナーを抜ける毎に目に見えて距離を詰められる。

 

あまりの力量差に笑うしかなかった。

 

「それでええ…そうやないと追い掛け甲斐がないわ!」

 

残り2周となってコースの半ばに差し掛かると、トップを走る奈臣とカイは完全に光介に追い付かれた。

 

(どうする?カイは…光介はどう動く?)

 

頭の中で2人の動きをシミュレーションしながら、奈臣はコーナーに侵入する。

 

カイの動きは予想通りだった。

 

だが光介は予想を超えてきた。

 

あっさりとオーバーテイクをされてしまったが、奈臣は込み上げてくる笑いを堪えきれなかった。

 

「デタラメ過ぎやろ!なんやねんそれは!そんなんついていけるか!」

 

まだ速くなれる。

 

光介の走りを目にしてそう感じた奈臣の心は悔しさを通り越して歓喜に満たされる。

 

最終コーナーを抜けホームストレートに入ると、奈臣は横に並びかけてくるマシンに気付く。

 

「カイ…いや、拓海か!?」

 

光介に目を奪われていた故に奈臣は気付くのが遅れた。

 

拓海はファイナルラップの第1コーナーで外から仕掛けると、奈臣を出し抜いてポジションを2位に上げた。

 

(ちっ!俺のタイヤはどうや?…後1回いけるかどうかやな。)

 

カイと争いながらもフルブレーキング1回分のグリップを余しているその技量は、奈臣がこれまで培ってきた走りが間違っていなかった証だろう。

 

それでも周囲が見えていなかったと奈臣は反省する。

 

(浮かれとったわ。終わったらオカンの説教やな。)

 

小さくため息を吐いた奈臣は気を引き締める。

 

(拓海、覚悟せぇよ。絶対に抜き返したるわ。)

 

一方で拓海は会心の出来のオーバーテイクに内心でガッツポーズをしていた。

 

(よっしゃ!グリップもまだ残ってるし、このままいける!)

 

そう思ったのも束の間、拓海は背中に大きなプレッシャーを感じる。

 

(…やっぱそう簡単にはいかねぇよなぁ。)

 

気を引き締め直して拓海はコースを攻めていく。

 

(勝負所は…。)

(やっぱり仕掛けるんやったら…。)

((ヘアピンでブレーキング勝負!))

 

奇しくも両者は同じポイントを勝負所と定めて走り続ける。

 

そして決戦の一瞬が訪れる。

 

(行くで!)

 

奈臣が外から並びかけ限界ギリギリのブレーキング勝負を仕掛ける。

 

奈臣と拓海は2人の勝負だと思い込んでいたが、そこにカイが待ったを掛けた。

 

(俺を忘れんじゃねぇよ!)

 

奈臣の更に外からカイが仕掛ける。

 

三者並んでヘアピンを立ち上がると続くコーナーで三者が僅かに接触する。

 

誰も譲らず意地を張り続ける。

 

三者の勝負は縺れ最終コーナーへと差し掛かった。

 

最終コーナーを立ち上がりアクセルをベタ踏みしてホームストレートを駆け抜ける。

 

「「「うぉぉぉおおおおお!」」」

 

そして三者は横一列に並んだままチェッカーフラッグを駆け抜けた。

 

誰が2位かわからないが熱いレースが出来た高揚感に三者は満足する。

 

しかし三者はピットにも戻らずコースアウトして止まっている光介を見ると驚きに目を見開く。

 

しばらくすると光介は担架で運ばれていった。

 

そして光介がいない状態で表彰式が行われると、三者にはなんとも言えない悔しさが込み上げてきたのだった。




本日は3話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

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