光介達は中学生となり、カートのジュニアクラス2年目のシーズンが始まった。
昨年のシーズンでジュニアクラスのスピードレンジや駆け引きに慣れた奈臣や拓海は、昨年とは違い順調にポイントを加算していく。
もちろん光介もだ。
そして今シーズンからジュニアクラスに参戦したカペタは、昨年の奈臣や拓海同様に苦戦を強いられていた。
しかし流石は奈臣が天才と認める少年なのだろう。
シーズン中盤からはコンスタントにポイントを重ね、最終戦で3位以内に入れば全国大会出場というところまで漕ぎ着けていた。
そしてその最終戦。
カペタは全国大会出場の為に表彰台を狙うが、このレースには光介達が全国大会に向けて調整の為に出場するのだった。
◆
予選で1回目のアタックを終えたカペタがピットに戻ってくる。
「ノブ!」
「カペタ、今のところ2位だ。でも、まだ源と藤原の結果が出てない。」
カペタとノブの2人は掲示板を見続ける。
やがて奈臣と拓海の結果が表示されると、ノブは小さくガッツポーズをした。
「うしっ!3位だ!」
「ちょっとノブ、なんで3位で喜んでるのよ。」
茂波の言葉にノブはやれやれとばかりに肩を竦める。
「いいか茂波、カペタはこのレースで3位以内に入れば全国大会に行けるんだ。ならここで無理に1位を狙いにいく必要はない。2位だと前を走る高橋 光介が視界に入って欲が出ちまうかもしれないけど、3位なら割り切ってポジションを守るのに専念出来るからな。」
「そんな消極的な考えじゃ、全国であいつに勝てるわけないじゃない。」
茂波の言うあいつとは光介のことだ。
なにかと出会う度にじゃれあっているので光介と茂波の仲はいい。
最もそれは男女としてではなく友人としてのものだが…。
そして秘かに茂波に想いを寄せているノブだが、こうしてなにかと茂波と意見を対立させることが多い。
意見を対立させる原因だが、ノブと茂波はレース観が決定的に合わないのだ。
プロレーサーとなる(と信じている)カペタのマネージャーとなるべく勉強をしているノブは、ポジション1つの浮き沈みがどれだけ大事かを理解している。
だからこそ冒険はせずに堅実にいくことを好むのだが、茂波は常に最高の結果を望む。
彼女の常に上を目指す向上心は素晴らしいと言えるだろう。
だが、一か八かではプロの世界で生きていけない。安定感こそが望ましい…とノブは考えているのだ。
安定と向上という対極にも見える思考を持つ2人に囲まれるカペタは、自分はどうするべきか真剣に考える。
理性は堅実にいくべきだと感じているが、レーサーとしての本能は光介に挑戦したいと叫んでいる。
少しの間を置き、カペタは口論をしている2人を止めた。
そして…。
「ノブ、俺、光介に挑戦する。」
「…いいんだな?」
「うん。」
「よっしゃあ!カッちゃん、あいつをぶち抜いちゃえ!」
ノブは頭を掻きながら大きくため息を吐く。
「わかった。なら予選2位をなにがなんでも取ってきてくれ。」
「カッちゃん、2位なんて言わずに1位よ!」
その後、カペタは奈臣と拓海の2人と熾烈なタイム争いの末、なんとか予選を2位で終える。
そして迎えた本戦で、カペタは果敢に光介へと挑んでいくのであった。
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