転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第44話『カペタの選択』

光介達は中学生となり、カートのジュニアクラス2年目のシーズンが始まった。

 

昨年のシーズンでジュニアクラスのスピードレンジや駆け引きに慣れた奈臣や拓海は、昨年とは違い順調にポイントを加算していく。

 

もちろん光介もだ。

 

そして今シーズンからジュニアクラスに参戦したカペタは、昨年の奈臣や拓海同様に苦戦を強いられていた。

 

しかし流石は奈臣が天才と認める少年なのだろう。

 

シーズン中盤からはコンスタントにポイントを重ね、最終戦で3位以内に入れば全国大会出場というところまで漕ぎ着けていた。

 

そしてその最終戦。

 

カペタは全国大会出場の為に表彰台を狙うが、このレースには光介達が全国大会に向けて調整の為に出場するのだった。

 

 

 

 

予選で1回目のアタックを終えたカペタがピットに戻ってくる。

 

「ノブ!」

「カペタ、今のところ2位だ。でも、まだ源と藤原の結果が出てない。」

 

カペタとノブの2人は掲示板を見続ける。

 

やがて奈臣と拓海の結果が表示されると、ノブは小さくガッツポーズをした。

 

「うしっ!3位だ!」

「ちょっとノブ、なんで3位で喜んでるのよ。」

 

茂波の言葉にノブはやれやれとばかりに肩を竦める。

 

「いいか茂波、カペタはこのレースで3位以内に入れば全国大会に行けるんだ。ならここで無理に1位を狙いにいく必要はない。2位だと前を走る高橋 光介が視界に入って欲が出ちまうかもしれないけど、3位なら割り切ってポジションを守るのに専念出来るからな。」

「そんな消極的な考えじゃ、全国であいつに勝てるわけないじゃない。」

 

茂波の言うあいつとは光介のことだ。

 

なにかと出会う度にじゃれあっているので光介と茂波の仲はいい。

 

最もそれは男女としてではなく友人としてのものだが…。

 

そして秘かに茂波に想いを寄せているノブだが、こうしてなにかと茂波と意見を対立させることが多い。

 

意見を対立させる原因だが、ノブと茂波はレース観が決定的に合わないのだ。

 

プロレーサーとなる(と信じている)カペタのマネージャーとなるべく勉強をしているノブは、ポジション1つの浮き沈みがどれだけ大事かを理解している。

 

だからこそ冒険はせずに堅実にいくことを好むのだが、茂波は常に最高の結果を望む。

 

彼女の常に上を目指す向上心は素晴らしいと言えるだろう。

 

だが、一か八かではプロの世界で生きていけない。安定感こそが望ましい…とノブは考えているのだ。

 

安定と向上という対極にも見える思考を持つ2人に囲まれるカペタは、自分はどうするべきか真剣に考える。

 

理性は堅実にいくべきだと感じているが、レーサーとしての本能は光介に挑戦したいと叫んでいる。

 

少しの間を置き、カペタは口論をしている2人を止めた。

 

そして…。

 

「ノブ、俺、光介に挑戦する。」

「…いいんだな?」

「うん。」

「よっしゃあ!カッちゃん、あいつをぶち抜いちゃえ!」

 

ノブは頭を掻きながら大きくため息を吐く。

 

「わかった。なら予選2位をなにがなんでも取ってきてくれ。」

「カッちゃん、2位なんて言わずに1位よ!」

 

その後、カペタは奈臣と拓海の2人と熾烈なタイム争いの末、なんとか予選を2位で終える。

 

そして迎えた本戦で、カペタは果敢に光介へと挑んでいくのであった。




次の投稿は11:00の予定です。

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