カペタにぶつけられたあのレースは、能力があっても絶対に勝てるわけじゃないとわかったレースだった。
そういうところでは負けても意味があったと思う。
悔しいけどね。
まぁ、そのおかげとでも言うべきか…レースがもっと楽しく感じられる様になった。
なんかこう、勝負してるなって感じるというか?
そう言ったら啓兄ィには呆れられたけどね。
あっ、そう言えば涼兄ィが志望大学に合格した。
流石は涼兄ィって感じだけど、来年からはオートハウスで活動出来る頻度が減るらしい。
まぁ、医者になる方が優先なのはわかるけど、それでもちょっと寂しくなるなぁ。
手向けってわけじゃないけど、今年の全国大会は絶対に勝ちたい。
啓兄ィも同じ気持ちだ。
そんな感じで迎えた全国大会の日、啓兄ィからガッツリと発破を掛けられる。
「光介、気合い入れていけよ。勝って兄貴が心配しねぇで勉強出来る様にな。」
「うん、わかってる。」
そんな俺達のやり取りに涼兄ィは苦笑いだ。
さぁ…行くぜ!
◆
「アカン、今日は手も足も出んかった。」
全国大会が終わると奈臣は大きくため息を吐く。
「俺もだ。調子は良かったんだけど、ついていくのが精一杯だった。」
奈臣と同じ様に拓海もため息を吐く。
「気にすんなよ2人とも、今日は光介の出来が良すぎたんだって。」
樹がそう言うが2人は真剣に何かを考え続ける。
「もっと早く仕掛けた方がええんやろか?」
「確かに後半でスプリント勝負を仕掛けても難しいし…そうなると中盤で仕掛けるタイミングが…。」
そんな会話をしていると樹が驚く。
「すげぇ…あの拓海が難しい話をしてる。」
「樹、俺だって成長してるんだぞ。まぁ、お前と沙雪さんに世話になりっぱなしなのは変わんねぇけど。」
頭を掻きながらそう言う拓海に樹は肘で軽く脇腹を小突く。
「ところで拓海ィ?沙雪さんとはどうなんだよぉ?」
「どうって、真剣にお付き合いさせてもらってるけど…。」
「そういうことじゃなくってぇ、キスぐらいしたのか?」
「えっ?いや、まぁ…。」
そんな拓海の反応を見た樹は、自分で問い質しておいて嫉妬の炎を燃やす。
「くぅー!羨ましいぜ!俺も彼女欲しいー!」
「まぁ、頑張るしかないわな。」
そう言う奈臣にはどこか余裕がある。
彼にはガールフレンドがいるからだろう。
「そういや樹、真子さんはどうなったんだ?沙雪さんはなにも言ってなかったんだけど。」
実は沙雪の友人である真子が涼介に告白したのだが、その結果をまだ知らないのだ。
「一言で言うと振られた。」
「そうか…何でだ?」
「なんか憧れと恋は違うんだってさ。くぅー!俺もそんなこと言えるぐらいもててみてぇー!」
樹の魂の叫びが聞こえると歳が近い青少年達が何人も頷く。
その後、樹達は思春期の青少年らしく楽しく話をしていく。
だが話に夢中になって帰り支度をサボってしまい叱られてしまったのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。