俺が中学2年になると、中学生になった茂波ちゃんからメールアドレスだけでなく電話番号も教えてもらった。
なんでも遅くなったお詫びだとか。
それからはなにかと茂波ちゃんと連絡を取り合う様になった。
ちょっとした日常のこととかレースのこととかでも話が盛り上がる。
話が合うというか興味が合うというかそんな感じだ。
まぁ、サーキットで会うと軽く敵対するというか、じゃれ合う感じになるんだけどね。
そんな感じでシーズンも半ばまで過ぎようかという時、不意に茂波ちゃんから相談を受けたのだった。
◆
「アイドル?」
とあるファミレスで茂波ちゃんと会うと、彼女はアイドルにスカウトされたと言ってきた。
「そう、ちょっと前にサーキットで高木さんって人と会ってスカウトされたのよ。」
「へ~、どこの事務所?」
「765プロってとこ。」
聞き覚えがなくて首を傾げてしまう。
「聞いたことないなぁ。」
「まぁ、まだ開業すらしてない事務所だから。」
「大丈夫なの?」
「来月には開業申請するみたい。でも色々あって時間がかかるから活動開始は来年からって言ってたわ。まぁ、私以外にもスカウトされた子がいるし大丈夫でしょ。」
そう言うと茂波ちゃんは携帯を操作する。
「これ、私以外のアイドル候補の子の写メよ。」
「へぇ、流石にスカウトされるだけあって可愛いね。」
「なに?こういう子が好みなの?」
うぇ?なんか茂波ちゃんが不機嫌になったぞ。
「見た目が可愛いって言っただけで好みとは言ってないよ。」
「ふ~ん…まぁ、いいわ。こっちのリボンの子が2つ上の天海 春香さんで、こっちの金髪の子が同い年の星井 美希よ。」
「ふ~ん…それで、開業が来年ってことはそれまで待機なの?」
俺がそう言うと茂波ちゃんは首を横に振る。
「レッスンは受けられるらしいわ。」
「どこでやるの?」
「東京。」
ってことは遠征か。
「電車通いかな?それも大丈夫なの?」
「パパとママにはもう話してあるわ。それに春香さんも私と一緒で地方からの遠征だしね。私だけ泣き言を言ってられないでしょ。」
この感じだとアイドルになるかどうかの相談じゃなさそうだね。
「ところで茂波ちゃん。」
「なに?」
「相談って何についてだったの?アイドルについてはもう決めてるみたいだしさ。」
俺がそう問いかけると茂波ちゃんは『あっ』って顔をした。
「いっけな~い、忘れてたわ。」
「まぁ俺は茂波ちゃんとお喋りするだけでもいいけどね。」
「…そう。」
顔を赤くしながら髪をいじる茂波ちゃんが可愛い。
「光介、高木さんと会ってくれない?」
「高木さんって茂波ちゃんをスカウトした人?」
「そう。」
なんでスカウトの人と?
「俺はアイドルにならないよ?」
「わかってるわよ。あのね、高木さんは光介のファンなんだって。それで私がスカウトされた時に光介と知り合いだって知って、会わせてほしいって頼まれたのよ。」
う~ん、茂波ちゃんが所属する事務所の人なら、無下にするのもよくないか。
「いいよ。時間があるときならね。」
「それじゃ後で予定をメールで教えて。」
「りょうか~い。」
その後、少しお喋りを続けてから解散となった。
それにしても茂波ちゃんがアイドルかぁ…。
うん、可愛くてスタイルも良くて魅力的な茂波ちゃんには似合ってるな。
サーキットでも良く通る元気なあの声もアイドルとしての武器になりそうだ。
頑張れ、茂波ちゃん!
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