今日は茂波ちゃんに頼まれた765プロの人と会う日だ。
ファミレスに入ると既に待っていたようで頭を下げる。
「遅くなりました。」
「いやいや、私達が早く来すぎただけだよ。楽しみにしていたからねぇ。ささ、座って楽にしてくれたまえ。」
そう言ってやけに黒い人が着席を促してくる。
俺の前には2人の黒い人が座り、隣には綺麗なお姉さんが座った。
「さて、先ずは自己紹介といこうか。私は765プロの社長で髙木 順二郎(たかぎ じゅんじろう)という者だ。高橋 光介くん、今日は来てくれて感謝するよ。」
手を差し出してきたので握手をすると、続いて名刺を渡してきたです
「茂波ちゃんからスカウトされたって聞いていたので、髙木さんはてっきりスカウトの人なんだと思ってました。」
「ははは、一念発起して起業しようとしたはいいが人材不足でね。社長の私自らスカウトして回ってるのだよ。」
髙木さんが笑いながらそう言うと、隣の黒い人がため息を吐く。
「だからあれほどうちの事務所から、何人か連れていけと言っただろうが。」
「そうは言うがなタカティン。」
「タカティンって言うな!」
タカティンと呼ばれたやけにいい声の人が咳払いをする。
「私は黒井 崇男(くろい たかお)という者だ。961プロで社長をしている。今日は髙木共々よろしく頼むよ。」
そう言うと黒井さんとも握手をして名刺を貰った。
961プロは芸能関係に疎い俺でも知ってる大手プロダクションだ。
そんな961プロの社長さんが何で髙木さんと?
首を傾げていると俺の疑問を察したのか、黒井さんが指を一本立てながら話し始める。
「髙木とは幼馴染みでね。その縁とでもいうべきか、大人になっても一緒に働いていたのだよ。まぁ、高木が独立するので今後はライバルとなるがね。」
なるほどねぇ。
そう思っていると俺の隣に座っているお姉さんがクスクスと笑い始める。
「どうしました?」
「あっ、ゴメンね。実は髙木さんと黒井さん、数年前まではプロデュース方針の違いから喧嘩してたのよ。」
「そうなんですか?」
とてもそうは見えないぐらい2人の仲は良く見える。
「ふふ、そんな2人の仲が元に戻ったのは光介くんのおかげなの。」
「俺の?」
「えぇ、そうよ。あっ、私は音無 小鳥よ。765プロで事務員をする予定なの。」
小鳥さんの話が続く。
なんでもジュニアカデット時代の俺の走りを見た髙木さんと黒井さんは、その後に意気投合して仲直りしたそうだ。
「だから一度直接会ってお礼を言いたいって言っていたの。」
「へ~、そうなんですか。」
「あ~…音無くん、その辺にしてくれないかな?過去の過ちとはいえ、少々恥ずかしいのでね。」
髙木さんはそう言いながら頭を掻き、黒井さんは片手でカオを覆っている。
「ゴホン…光介くん、改めてお礼を言わせてくれ。私とタカティ…黒井が喧嘩別れをせずに済んだことをね。」
「いえいえ、俺はただ走っただけですから。」
苦笑いをしながらそう言うと、髙木さんが何度も頷く。
「ふむ…黒井、私は『ティン』と来ているのだが?」
「あぁ、私の勘も『ウィ』っと来ている。」
2人が何をいっているのかわからない。
「光介くん、改めて話があるのだが…いいかね?」
「何ですか?」
「うむ、765プロと961プロ…この2つのプロダクションは君のスポンサーになりたいのだ。」
スポンサー?
首を傾げると髙木さんは話を続ける。
「961プロはともかく、我が765プロはまだ開業すらしていない弱小プロダクションではある。だがそれ故に、名を売るためにもスポンサードは有用なのだよ。」
「そういう事なら、オートハウスの源 奈々子監督に話をした方がいいのでは?」
俺の言葉に髙木さんと黒井さんが首を横に振る。
「勘違いをさせてしまったかな?光介くん、私達がスポンサーとなりたいのは君個人に対してなのだ。もちろん君がプロレーサーとなってからもね。」
「うむ、黒井の言う通りだ。もっとも会社の利益の為だけでなく、個人的に君を応援したいからでもあるのだが。」
う~ん…そうなると。
「お話はわかりました。とても嬉しい申し出です。」
「おぉ、受けてくれるかね?」
「俺個人としては受けたいのですが、一度俺の父と話をしていただけませんか?」
髙木さんと黒井さんが顔を見合わせる。
「君がそう言うのなら是非もないが…何故かと聞いても?」
「父は医者をしている関係で色々と伝手があるので…。」
「なるほど、そういうことか。」
うん、大人は話が早くて助かる。
実は俺と啓兄ィには、既にプロになった後のスポンサーの話があるんだよね。
髙木さんと黒井さんの申し出は凄くありがたいんだけど、先方の顔を潰すわけにもいかないので、そこら辺を父さんや先方と話し合ってもらわなければならない。
「いただいた名刺を父に渡しても?」
「もちろん構わないよ。」
「なら後日に連絡がいくと思います。詳しい話はその時にお願いしますね。」
2人が頷くと音無さんが声を上げた。
「驚きましたぁ。最近の若い子はしっかりしてるんですねぇ。」
「音無くん、君だって十分に若いだろうに。」
「もちろん私は若いですよ?」
音無さんから謎のプレッシャーが発生したけど、その後は和やかな雰囲気で食事となったのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。