どういう話し合いをしたのかはわからないけど、765プロと961プロが俺のスポンサーになることが決まった。
まだアマチュアなんだけどこういうのは普通なのかな?
そういうわけで今シーズンの後半からは2つの事務所のステッカーを、ヘルメットとレーシングスーツに貼ってレースに挑んでいく。
奈臣を始めとした顔見知りのメンバーに個人的なスポンサーの事をかなり羨ましがられたりした。
そんな感じでシーズンを戦っていくと後は全国大会を残すだけとなった。
オートハウスからは俺と奈臣と勇の3人、ナイトキッズからは拓海とカペタの2人、そして東堂塾からはカイが全国大会に出場している。
武は残念ながらあと一歩届かなかった。
さて、顔見知りが多いレースだけど馴れ合いはせずに、本気で勝ちにいくぜ!
◆
予選を終えて奈臣が安堵の息を吐く。
「なんとか2位は確保出来たなぁ。」
奈臣はバッグからメモを取り出すと思考を巡らせる。
(先ずは中盤でスパートを掛けて光介を抜くとこからやな。そんでもってそこからどこまで稼げるかや。間違いなく追いつかれるやろうけど、ブロック次第では出し抜くのも不可能やあらへん。)
メモを捲ると奈臣は更に思考を続ける。
(勇とカペタ…それとカイは光介をマークするやろうから問題あらへん。問題は拓海や。あいつも俺と同じで中盤からスパートをかける筈や。ここでトップを取られてもうたら話にならへん。光介を抜くと同時に拓海も抑えなあかん…しんどい話やで…。)
奈臣がそう思考を巡らせていた一方で、拓海は沙雪と樹を交えて話し合っている。
「3位かぁ…いてぇよなぁ。」
「十分よ拓海くん、前にいるのが奈臣くんなら同じ作戦でくる可能性が高いから。」
「そうだぞ拓海。カイやカペタが前にいると面倒だったけど、この状況ならなんとか光介の前に出るのも不可能じゃない。」
3人は光介が終盤に仕掛けてくるのを前提として話し合っている。
もちろん光介がこちらの動きに対応して中盤から動く可能性もあるが、光介の参謀役である涼介は先を見据えて課題を与える傾向が強い。
ならばこちらの作戦を察していても敢えて受けることで、光介の経験とする公算が高い。
だが他者からすればそこに勝機があるのだ。
「沙雪さん、カイはどう動いてくると思いますか?」
「カイくんは光介くんをマークするでしょうね。彼の性格なら真っ向からのスプリント勝負を挑むと思うわ。」
「レースに勝つよりも勝負を優先すると思うんですか?」
首を傾げて不思議そうに問いかける拓海に沙雪は頷く。
「拓海くんは不思議に思うかもしれないけど、世の中には勝ち方に拘る人もいるの。例えば相手の力を抑えて勝つんじゃなく、自分の力を出し切って勝ちたいって考えたりね。」
確かにそれが出来ればカッコいいだろうと拓海は思う。
だが…。
(光介が相手なら先ずは全力で勝ちにいかないと、話にもならないと思うけどなぁ…。)
そう考えながら拓海は頭を掻く。
「序盤のペース次第では仕掛けるタイミングを早めるから、合図を見逃さない様にしてね。」
「はい。」
作戦が決まると拓海は集中を高めて、来る本戦に向けて備えるのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。