中学3年生となった今年はオートハウスでの最後のシーズンでもある。
そう、16歳になる来年にはプロレーサーへの道に進むんだ。
FSRSに進むか啓兄ィみたいに企業の育成ドライバーになるかはまだ悩み中だ。
今年の半ばまでには決めないといけない。
どっちにもメリットはあるんだよね。
FSRSに進んで優秀な成績を修めればスカラシップっていう奨学金が貰えるから、自分の力でプロの道を歩むつもりならこっちがいい。
レースに関しては身内でのワンメイクマッチをメインに経験を積んでいけるらしい。
対して企業の育成ドライバーは、ほぼ確定でその企業のレースチームに入る事が出来るのがメリットかな?
就職に関してもその所属した企業に伝手が出来るし有利かもしれないな。
レースに関しては国際免許をとるまでは、ジムカーナ等の1台ずつ走ってのタイムアタックがメインだそうだ。
う~ん…レース経験に関してはFSRSの方がいいかな?
先々を考えると企業の育成ドライバーの方が安定してるて感じだ。
どうしよう?
そんな感じ悩んでいると茂波ちゃんからメールがきた。
メールを見てみるとようやくプロデューサーが決まったそうだ。
765プロにはアイドル候補の娘は一杯いたんだけど、高木さんが『ティン』とくる人が中々いなくて、今までプロデューサーが決まってなかったみたいだ。
そのせいで開店休業状態だったんだけど、これでようやく765プロは始動出来るそうだ。
おめでとうって返信しておこう。
頑張れ、茂波ちゃん。
◆
レッスンを終えて765プロの事務所で待機していた茂波は、メールの着信を報せる音で携帯を手に取る。
「あれれぇ?モナミンにメール?」
「彼氏ぃ?」
双子の女の子がからかう様に声を上げると、眼鏡の女の子がため息を吐く。
「小鳥さん、社長が言ってましたけど、本当に恋愛はOKなんですか?」
「事務所によっては禁止のところもあるけど、うちはOKよ。」
「…彼氏がいるアイドルとか、大丈夫なんですか?」
心配する眼鏡の女の子を他所に、小鳥は妄想の翼を羽ばたかせる。
「ファンのバッシングに耐えることで一層燃え上がる恋の炎…いい!いいわ!」
「小鳥さ~ん、帰ってきてください。」
そんな二人のやり取りを気にせず、ボーイッシュな女の子が茂波に話し掛ける。
「そのメールって高橋 光介から?」
「うん。」
「わぁ!いいなぁ!」
「そういえば真はお父さんの影響でカートをやってたんだっけ?」
春香が首を傾げながらそう言うと、真と呼ばれたボーイッシュな女の子が頷く。
「そうだよ。去年で止めちゃったけどね。」
「一緒に走ったことあるの?」
「何回かね。でも向こうは僕のことを知らないんじゃないかな?茂波も僕のことを知らなかったしね。」
メールの返信を終えた茂波が話に加わる。
「名前は知らなかったけど顔は憶えてたじゃない。」
「まぁ、僕は全国に1回しかいけなかったし、カート界での知名度なんてそんなものかぁ。」
「真ちゃんは凄いよ!男の人に交じって結果を出したんだもん!それに比べて私なんて…穴を掘って埋まってますぅ!」
「雪歩ぉ!?床が傷ついちゃうからスコップはダメェ!っていうかどこからスコップ取り出したの?!」
春香は雪歩という女の子を止めながらもツッコミを入れる。
そんな様子を事務所の入口から見ながら、社長である髙木は微笑む。
「うんうん、いい雰囲気だねぇ。」
「えっと社長、あの子達が765プロのアイドル候補ですか?」
眼鏡を掛けた優しげな顔立ちをした男性が、苦笑いをしながら問いかける。
「うむ、君にあの子達のプロデュースを任せたい。」
「あの子達って…もしかして全員ですか?」
「その通りだよ。」
優に10人は越えている数を見て男性はため息を吐く。
「あちらにいる律子君はアイドル候補だが、将来はプロデューサーになることを志望している。だから彼女と協力して皆をプロデュースしてくれたまえ。」
スカウトされたので来てみれば、初めてのプロデュース業であるにもかかわらずいきなりの無茶振り。
前途多難を察した眼鏡の男性は困った様に苦笑いをしたのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。