オートハウスでの最後のシーズンも半ばまで過ぎた頃、俺はあるレースの後に奈臣を始めとした友人達と今後の進路について話し合っていた。
「そっかぁ、拓海はFSRSに行くんだ。」
「うちは豆腐屋だからな。コネとかねぇし。ハッキリ言って金もキツイ。だからFSRSに行って奨学金を狙わねぇと。」
どこかボンヤリとした表情で拓海がそう言えば、樹が何度も頷く。
「コネなし金なしはきついよなぁ。まぁ、俺も高校行きながらバイトして、留学費用を貯めないといけないけどなぁ。」
「樹ィ、本当にアメリカに行くのか?」
「おう!俺はお前のマネージャーになるって決めてるからな!」
ここにはいないが拓海の婚約者となった沙雪もアメリカに行くことが決まっている。
ここまで期待されると拓海としても、なにがなんでもスカラシップ(奨学金)を取らないとと気合いが入る。
「ところで奈臣と光介はどうするんだ?」
「俺はFSRSに行くで。オカンのコネを使わんと、自分の力でプロになりたいからなぁ。」
「うぉっ!?拓海、スカラシップ争いのライバルが現れたぞ!」
ここまでの奈臣と拓海のレース戦績は奈臣が勝ち越している。
だが奈臣はそれを楽観視していない。
「それで、光介は?」
「俺は啓兄ィと同じところにいくよ。」
樹の問いかけに光介はそう答える。
「するとマ○ダの育成ドライバーになるのかぁ。」
「まぁ、うちは家族揃ってロータリー好きだからねぇ。」
光介のこの一言で話は熱を帯びていく。
「ロータリーもいいけど、やっぱり俺は86だなぁ。くー!早く免許をとって乗ってみたいぜぇ!」
樹がそう気勢を上げれば奈臣も負けじと気勢を上げる。
「俺はGTRが好きやな。」
「あぁ、GTRもいいよなぁ。現状ではサーキット最速と言っても過言じゃないし、あの加速性能はちょっと他のマシンじゃマネ出来ないよ。ところで拓海はどの車が好きなんだ?」
樹の問いかけに拓海は首を傾げながら答える。
「特にこれってもんはねぇけど…強いていうなら親父が乗ってるやつかな。」
「拓海の親父さんが乗ってるのは86だな。」
「そうなのか?あれってトレノじゃないのか?」
「そのトレノの通称が86なんだよ拓海。はぁ…沙雪さんと一緒に勉強してマシンのことにちょっと詳しくなったと思ったら、そういうところで抜けてるんだもんなぁ拓海は。」
大きくため息を吐きながら樹が肩を落とすと、拓海は困った様に頭を掻く。
「悪い。」
「いや、拓海らしくて逆に安心したよ俺は。」
「どういう意味だよそれ。」
それから少年達はしばらく推しのマシンについて語り合うのだった。
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