転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第59話『雨模様』

光介達のカート最後のシーズンも、いよいよ残すは全国大会のみとなった。

 

その最後の全国大会で最も意気込んでいるのは…カペタだった。

 

(このレースが終われば光介達はプロの世界に行っちゃう。1年でどれほど差がつけられるんだろう?)

 

カペタはそう心配するが、むしろ少年期に年下であるのに渡り合えているというのが、彼に才能があるというなによりの証明だろう。

 

だが一度として光介と一緒になったレースで勝てていないカペタは、どこか自分に自信が持ちきれないでいた。

 

(このレースが…最後のチャンス!)

 

勝ちたい。

 

心の底からそう思うカペタであるが、勝ちたいという思いは選手全員が持っているものだ。

 

だからこそどうすれば勝てるかを考えなければならない。

 

カペタのストロングポイントはタイヤマネジメント能力だ。

 

それを活かすにはどうすればいいか?カペタは悩み続ける。

 

(最初から行く?それじゃ最後までタイヤが持たない。中盤から?多分だけど奈臣と拓海も動く。その時に前に出られるか?)

 

カペタが色々と悩んでいると、彼の鼻頭に水滴が落ちてくる。

 

反射的に上を見上げると空模様が怪しくなっていた。

 

「カペター!」

 

ノブが走って近付いてくる。

 

「ノブ?」

「来たぜ来たぜ千載一遇のチャンスが!」

「チャンスって…これ?」

 

そう言いながらカペタは空から降ってくる水滴を示す。

 

「そうだよ!路面が濡れればレースは荒れる!お前、雨のレースは得意じゃねぇか!」

 

ノブが言う通りにレインレースでカペタは、拓海にすら負けたことがない。

 

ただし、レインレースでオートハウスのメンバーと走ったことは一度もないのだ。

 

「そうだけど…。」

「大丈夫だって!お前なら勝てる!雨よ!じゃんじゃん降ってくれぇ!」

 

雨乞いを始めるノブの姿にカペタは苦笑いをする。

 

(雨か…なら、やりようはあるかも!)

 

 

 

 

「わっ、大変!皆!合羽を急いで着て!プロデューサーさんが持ってきてくれるから!」

 

カートのジュニアクラス全国大会を見学に来ていた765プロ一同は、怪しい空模様に慌ただしく動き出す。

 

「雨か…黒井、レースは荒れると思うかね?」

「間違いなく荒れるだろうな。だが、私は光介くんの勝利を微塵も疑ってない。」

 

既に合羽を着た髙木と黒井は落ち着いた様子で会話をしている。

 

「菊池くん、経験者として君はどう思うかね?」

「そうですね…雨が降っても高橋 光介が崩れるっていうのは想像出来ません。あの世代は凄い人が多いけど、その中でも彼は特別ですから。」

 

ボーイッシュな少女…菊池 真(きくち まこと)が光介をそう評価すると、髙木と黒井も同意する様に頷く。

 

だが…。

 

「雨ならカッちゃんが勝つわ。」

 

そこに茂波が待ったをかけた。

 

「カッチャンって、平 勝平太のこと?」

「そうよ。カッチャンは雨のレースで負けたことがないんだから。」

 

茂波の言葉に真は顎に手を当てて首を傾げる。

 

「たしか雨のレースでは光介くんと一緒になったことないよね?」

「たしかにないけど…って、よく知ってるわね?」

「光介くんの走りを一目見た時からずっとファンだからね。」

 

顔を赤くして照れた真は頭を軽く掻く。

 

「…ふ~ん?」

 

そんな真の様子に茂波はどこか不満気だ。

 

「ふむ、ティンときた!黒井、光介くんをイベントに呼ぼうと思うのだがどうだ?」

「イベント?なるほど、身内…765プロのアイドル達だけでレースをするのか。そうなると人数分のマシンとキッズ用のエンジンも用意せねばならんな。髙木、お前に伝手はあるのか?」

 

長年連れ添った友人だからこそ、黒井は髙木の意図を正確に把握する。

 

「いやぁ…うちは漸く軌道に乗ったばかりで伝手はあっても先立つものがな…。」

「まったく…ならばうちも一枚噛ませてもらうぞ。」

 

黒井の出資申し出に髙木は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「すまんな、タカティン。」

「タカティンって言うな!まぁ、気にするな。本物の才能を体感するのは、うちのアイドル達にもいい経験になるからな。」

 

それから2人はあれこれと打ち合わせを始める。

 

それを耳にしていた765プロのプロデューサーは、また忙しくなるのかと乾いた笑いを溢すのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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